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第8話

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 亜里砂は、ベッドから起き上がると、置きざりにされたワンピースを見ました。

 その時、玄関のインターホンのブザーが鳴りました。
 お母さんが、階段下から声をかけました。

「亜里砂。早苗ちゃんが来たわよ!」

 玄関に、早苗が立っていました。

 亜里砂がさつえい会で着た黄色いひまわりのサマードレスに、肩かけのブラウスをはおっています。
 現像した写真を閉じたフォトアルバムを、片手ににぎっていました。

「写真、どうぞ」
 早苗は、亜里砂にアルバムを手わたしました。

「ありがとう。あの、早苗ちゃん。家によっていかない?」
 亜里砂が笑顔で言うと、早苗はうなずきました。

 早苗は、亜里砂の部屋に入ってすぐに、ベッドのワンピースに目をとめました。

「お母さんが、いつもセールで買ってきてくれるのよ」
 亜里砂は、ちょっと、気まずそうに言ってから、早苗のサマードレスを見ました。

「早苗はいいよね。あんなパパがいて。いつも、ブランド品ばかりの洋服にかこまれて、キラキラしていてうらやましい」

「ふうん。そうかな」

 早苗は、割引のワンピースを手に取りました。

「これ、わたしとサイズが合いそう。わたしが着てみてもいい?」

「えっ、いいけど」
 亜里砂はとまどいながらうなずくと、早苗はうれしそうに着がえをしました。

「どう、亜里砂。にあってる?」 
 早苗は、うす桃色のワンピースのすそをりょう手で広げてみせました。

「うん。なんか、自然で、さわやかな感じ」

 早苗は、亜里砂をじっと見ました。
「わたしは、亜里砂がうらやましい。こんなナチュラルな服を買ってきてくれる、亜里砂のお母さんって、服を見る眼あるね」

「えっ、どういうこと?」
 亜里砂は、首をかしげてききました。

「ねえ、そうぞうしてみて。毎日、あんなキバツな服ばかり着て、町を歩く。たまにならいいけど、みんなからジロジロ見られる。流行を追いかけて、デザイン重視で、着づらい、動きづらい。それでも着ないとパパが悲しむから、ガマン。あの、さつえい会でも、だんだん、わたし、うんざりしてきちゃって、ふきげんになっただけよ。だから、わたし、毎日着る服なら、だんぜん、亜里砂の服が好き!」
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