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第3章 美帆と見た夢の果て

第11話

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「どうして美帆はそんなに売るのが上手なの」

 仕事終わり、ロッカールームで未知子は訊いた。

「私は宝石を売ろうとなんと一度も思ってないのよ。私は夢を売ってるから」

「夢?」

「そうよ、夢。私のおばあちゃんはね。小さい私にとびきりの宝石箱を見せてくれたの。そして宝石にまつわるたくさんの 素敵な物語を聞かせてくれた。
宝石は持ち主を変えながら、長い歴史の中で輝き続けてるのよ。
祖母は私を膝に乗せて言ったわ。あなたもかけがえのない、たったひとつの宝物だって。私も宝石を通じて愛を届けたい。あなたもかけがえのない宝物だって 伝えたい。
未知子はどうして? なぜこの 業界に入ったの?」

「私は――」

 未知子は 口ごもった。

 美帆はおもむろに ポケットから手帳を取り出した。

 それには美しい白鳥のネックレスが描かれていた。

「わあー。素敵のネックレスね」

 未知子は思わず目を見張った。

「いつかこのネックレスを 作ってみたい」

「一緒に作ろう。必ず夢を 実現しようよ」

 未知子は美帆の夢を守ることに決めた。
 それが自分の夢だと思ったから。


 それから三年後 、未知子は 新宿の本社ビルに異動になった。
 時を同じくして美帆もそこの店長になった。
 営業部は会社の司令塔。
 そこで実績を上げれば、将来は会社の幹部として活躍できることを意味する。
 未知子は 六店舗を統括する立場になった。
 そこは夢売る場所ではなく、売上という数字を達成する場所であった。
 そして販売促進のために、各店舗にはっぱをかける。

 各店舗に売上目標を提示し、 結果を報告させる。
 合わせて 購買部との調整。
 労務管理人事担当との 調整。

 業務を挙げたらきりがない。
 それでも未知子は完璧にやり遂げようと思った。
 それは美帆の夢を実現させるためだった。

 二年を過ぎた頃、美帆のデザインが 通過した。
 大抵はボツになる。
 もし損失が出れば、担当する営業の責任にもなるからだ。

 それでも未知子は、これまでの自分の実績を強調し、渋る高田部長を説得し販売にこぎつけた。
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