20 / 34
(20)
しおりを挟む
「ちょっと、来てくれ」
「え……?」
突然のことに戸惑っていると、彼は強引に歩き出した。
会場を出ると、そのまま馬車に乗せられてしまう。
「ど、どこへ向かわれるのですか?」
「黙っていろ」
彼は苛立ったように言った。
その表情からは怒りのようなものが感じられたため、セーリーヌは何も言えなくなってしまう。
(どうして怒っているのでしょうか……?)
不安な気持ちを抱きながら窓の外を眺めていると、ふいに彼が口を開いた。
「あの男のことが好きなのか?」
「え……?」
突然の質問にセーリーヌは戸惑った。
なぜそんなことを訊かれるのだろうかと思ったが、すぐにアドニス侯爵のことだと気づく。
「何のお話ですの……ご婚礼前なのに……困りますわ……」
「誤魔化すな!」
彼は声を張り上げた。
その声は馬車中に響き渡り、馬が驚いて嘶く。
セーリーヌはびくりとして肩を震わせた。
そんな彼女を見下ろしながら彼は続ける。
「お前はあの男とどういう関係なんだ?」
「ど、どういうって……ただのお友達ですわ……」
「それだけか?」
「え……?」
思いがけない質問にセーリーヌは困惑した。
アドニス侯爵とは何度か逢瀬を重ねた仲ではあるし──愛している。
だが、それを正直に打ち明けても良いものか悩む。
「答えろ」
殿下は厳しい口調で迫った。
セーリーヌは思わず息を呑む。
(この方はわたくしに何を言わせたいの……?)
そう思ったが、黙っているわけにもいかないだろうと思い直し、口を開いた。
「彼を愛しています……」
「え……?」
突然のことに戸惑っていると、彼は強引に歩き出した。
会場を出ると、そのまま馬車に乗せられてしまう。
「ど、どこへ向かわれるのですか?」
「黙っていろ」
彼は苛立ったように言った。
その表情からは怒りのようなものが感じられたため、セーリーヌは何も言えなくなってしまう。
(どうして怒っているのでしょうか……?)
不安な気持ちを抱きながら窓の外を眺めていると、ふいに彼が口を開いた。
「あの男のことが好きなのか?」
「え……?」
突然の質問にセーリーヌは戸惑った。
なぜそんなことを訊かれるのだろうかと思ったが、すぐにアドニス侯爵のことだと気づく。
「何のお話ですの……ご婚礼前なのに……困りますわ……」
「誤魔化すな!」
彼は声を張り上げた。
その声は馬車中に響き渡り、馬が驚いて嘶く。
セーリーヌはびくりとして肩を震わせた。
そんな彼女を見下ろしながら彼は続ける。
「お前はあの男とどういう関係なんだ?」
「ど、どういうって……ただのお友達ですわ……」
「それだけか?」
「え……?」
思いがけない質問にセーリーヌは困惑した。
アドニス侯爵とは何度か逢瀬を重ねた仲ではあるし──愛している。
だが、それを正直に打ち明けても良いものか悩む。
「答えろ」
殿下は厳しい口調で迫った。
セーリーヌは思わず息を呑む。
(この方はわたくしに何を言わせたいの……?)
そう思ったが、黙っているわけにもいかないだろうと思い直し、口を開いた。
「彼を愛しています……」
8
お気に入りに追加
129
あなたにおすすめの小説
美人すぎる姉ばかりの姉妹のモブ末っ子ですが、イケメン公爵令息は、私がお気に入りのようで。
天災
恋愛
美人な姉ばかりの姉妹の末っ子である私、イラノは、モブな性格である。
とある日、公爵令息の誕生日パーティーにて、私はとある事件に遭う!?
サラシがちぎれた男装騎士の私、初恋の陛下に【女体化の呪い】だと勘違いされました。
ゆちば
恋愛
ビリビリッ!
「む……、胸がぁぁぁッ!!」
「陛下、声がでかいです!」
◆
フェルナン陛下に密かに想いを寄せる私こと、護衛騎士アルヴァロ。
私は女嫌いの陛下のお傍にいるため、男のフリをしていた。
だがある日、黒魔術師の呪いを防いだ際にサラシがちぎれてしまう。
たわわなたわわの存在が顕になり、絶対絶命の私に陛下がかけた言葉は……。
「【女体化の呪い】だ!」
勘違いした陛下と、今度は男→女になったと偽る私の恋の行き着く先は――?!
勢い強めの3万字ラブコメです。
全18話、5/5の昼には完結します。
他のサイトでも公開しています。
俺の妖精すぎるおっとり妻から離縁を求められ、戦場でも止まらなかった心臓が止まるかと思った。何を言われても別れたくはないんだが?
イセヤ レキ
恋愛
「離縁致しましょう」
私の幸せな世界は、妻の言い放ったたった一言で、凍りついたのを感じた──。
最愛の妻から離縁を突きつけられ、最終的に無事に回避することが出来た、英雄の独白。
全6話、完結済。
リクエストにお応えした作品です。
単体でも読めると思いますが、
①【私の愛しい娘が、自分は悪役令嬢だと言っております。私の呪詛を恋敵に使って断罪されるらしいのですが、同じ失敗を犯すつもりはございませんよ?】
母主人公
※ノベルアンソロジー掲載の為、アルファポリス様からは引き下げております。
②【私は、お母様の能力を使って人の恋路を邪魔する悪役令嬢のようです。けれども断罪回避を目指すので、ヒーローに近付くつもりは微塵もございませんよ?】
娘主人公
を先にお読み頂くと世界観に理解が深まるかと思います。
ついうっかり王子様を誉めたら、溺愛されまして
夕立悠理
恋愛
キャロルは八歳を迎えたばかりのおしゃべりな侯爵令嬢。父親からは何もしゃべるなと言われていたのに、はじめてのガーデンパーティで、ついうっかり男の子相手にしゃべってしまう。すると、その男の子は王子様で、なぜか、キャロルを婚約者にしたいと言い出して──。
おしゃべりな侯爵令嬢×心が読める第4王子
設定ゆるゆるのラブコメディです。
みんなが嫌がる公爵と婚約させられましたが、結果イケメンに溺愛されています
中津田あこら
恋愛
家族にいじめられているサリーンは、勝手に婚約者を決められる。相手は動物実験をおこなっているだとか、冷徹で殺されそうになった人もいるとウワサのファウスト公爵だった。しかしファウストは人間よりも動物が好きな人で、同じく動物好きのサリーンを慕うようになる。動物から好かれるサリーンはファウスト公爵から信用も得て溺愛されるようになるのだった。
聖獣の卵を保護するため、騎士団長と契約結婚いたします。仮の妻なのに、なぜか大切にされすぎていて、溺愛されていると勘違いしてしまいそうです
石河 翠
恋愛
騎士団の食堂で働くエリカは、自宅の庭で聖獣の卵を発見する。
聖獣が大好きなエリカは保護を希望するが、領主に卵を預けるようにと言われてしまった。卵の保護主は、魔力や財力、社会的な地位が重要視されるというのだ。
やけになったエリカは場末の酒場で酔っ払ったあげく、通りすがりの騎士団長に契約結婚してほしいと唐突に泣きつく。すると意外にもその場で承諾されてしまった。
女っ気のない堅物な騎士団長だったはずが、妻となったエリカへの態度は甘く優しいもので、彼女は思わずときめいてしまい……。
素直でまっすぐ一生懸命なヒロインと、実はヒロインにずっと片思いしていた真面目な騎士団長の恋物語。
ハッピーエンドです。
この作品は、他サイトにも投稿しております。
表紙絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID749781)をお借りしております。
拾った宰相閣下に溺愛されまして。~残念イケメンの執着が重すぎます!
枢 呂紅
恋愛
「わたしにだって、限界があるんですよ……」
そんな風に泣きながら、べろべろに酔いつぶれて行き倒れていたイケメンを拾ってしまったフィアナ。そのまま道端に放っておくのも忍びなくて、仏心をみせて拾ってやったのがすべての間違いの始まりだった――。
「天使で、女神で、マイスウィートハニーなフィアナさん。どうか私の愛を受け入れてください!」
「気持ち悪いし重いんで絶対嫌です」
外見だけは最強だが中身は残念なイケメン宰相と、そんな宰相に好かれてしまった庶民ムスメの、温度差しかない身分差×年の差溺愛ストーリー、ここに開幕!
※小説家になろう様にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる