[完結]ゆり子と不思議なコピー機

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｢にんげんになったの｣
｢にんげん｣

　女の子はくり返した。

｢名前は何て言うの？｣　　
｢Ｘｰ５００｣

　ゆり子はコピー機に書かれている数字を見た。

｢それは、工場でつけられた番号じゃん。わたしはゆり子だから、ユリってどうかな？｣
｢ユリ。うん、にんげんみたい｣
｢にんげんだもん。当たり前よ｣
｢何だろう。口が乾いてる｣
｢のどかわいたんだね。ちょっと待ってて。お茶入れてあげるから｣

　ゆり子は店の奥にある湯沸かし室で、コンロに火を入れようとした。でも、いくら力を入れてもスイッチが動かない。

｢おかしいな。こわれちゃったのかな｣
｢わたしがやるよ｣

　後ろでユリが立っていた。ユリがやると、簡単にできた。ゆり子が教えると、手ぎわよくヤカンにお湯を沸かして、お茶をいれてくれる。

｢ユリちゃん、すごい｣
｢なんで？｣
｢だって、はじめてやったんでしょ？｣
｢言われたことをそのままやるのは、とくいなの｣

　けれど、ユリは湯のみを持ったまま動かない。

｢口にお湯いれるの、こわい｣

　ゆり子はお茶をすすった。

｢どうして？｣
｢だって。水で機械はこわれるものよ。金づちでたたかれても、こまる｣
「金づちは、私もこまるな」

　ゆり子は笑い出した。

｢平気。にんげんは、水ではこわれないよ｣
｢そうか。じゃあ、やってみる｣

　ユリはふうふういいながら、飲んだ。