6 / 29
6
しおりを挟む
ゆり子は耳元でささやいた。サエコは黒板から目をそらした。それを、先生は見のがさない。ホワイトボードに書いていた数式をとちゅうでやめた。
「にしぞのさん。ちょっと前に来なさい」
「は、はい」
ゆり子は不安でいっぱいになりながら、立ち上がった。テキストを手にすると、
「なにもいらないよ」
と、先生は言った。前に立たせると、ゆり子にペンを持たせる。
「よし。じゃ、ここから自分でといて見なさい」
「えっ。あっ。でも、その」
しどろもどろになって、目を泳がせた。それでも、先生は腕を組んだままだ。
「心配することない。これは先週のことの応用だから」
だけど、全然わからない。こくこくと時間ばかりが過ぎていく。男子たちがうんざりした顔で、こちらを見ている。
「いつも言っているが。ちゃんと復習はしてきたのか?」
先生はまゆを寄せて言った。ゆり子は、下を向いた。
「にしぞのさん。このまま算数の点が上がらないと困る。授業も止まるから、みんなもめいわくするんだ」
先生は、ゆり子からペンを抜き取った。肩を落として、ゆり子は席に戻った。
「みんなもいいかな。宿題をやるのは当たり前。だが復習はもっと大事だぞ。キソができてないと、どんどんわからなくなる。積み木がくずれるのとおなじだぞ」
先生はゆり子を見た。
「学校で試験なんだろ。そこで満点でも取ってみなさい」
ゆり子は、だまってうなづいた。
「にしぞのさん。ちょっと前に来なさい」
「は、はい」
ゆり子は不安でいっぱいになりながら、立ち上がった。テキストを手にすると、
「なにもいらないよ」
と、先生は言った。前に立たせると、ゆり子にペンを持たせる。
「よし。じゃ、ここから自分でといて見なさい」
「えっ。あっ。でも、その」
しどろもどろになって、目を泳がせた。それでも、先生は腕を組んだままだ。
「心配することない。これは先週のことの応用だから」
だけど、全然わからない。こくこくと時間ばかりが過ぎていく。男子たちがうんざりした顔で、こちらを見ている。
「いつも言っているが。ちゃんと復習はしてきたのか?」
先生はまゆを寄せて言った。ゆり子は、下を向いた。
「にしぞのさん。このまま算数の点が上がらないと困る。授業も止まるから、みんなもめいわくするんだ」
先生は、ゆり子からペンを抜き取った。肩を落として、ゆり子は席に戻った。
「みんなもいいかな。宿題をやるのは当たり前。だが復習はもっと大事だぞ。キソができてないと、どんどんわからなくなる。積み木がくずれるのとおなじだぞ」
先生はゆり子を見た。
「学校で試験なんだろ。そこで満点でも取ってみなさい」
ゆり子は、だまってうなづいた。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます
結城芙由奈
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】
ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。
セレナの居場所 ~下賜された側妃~
緑谷めい
恋愛
後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。
父が死んだのでようやく邪魔な女とその息子を処分できる
兎屋亀吉
恋愛
伯爵家の当主だった父が亡くなりました。これでようやく、父の愛妾として我が物顔で屋敷内をうろつくばい菌のような女とその息子を処分することができます。父が死ねば息子が当主になれるとでも思ったのかもしれませんが、父がいなくなった今となっては思う通りになることなど何一つありませんよ。今まで父の威を借りてさんざんいびってくれた仕返しといきましょうか。根に持つタイプの陰険女主人公。
選ばれたのは美人の親友
杉本凪咲
恋愛
侯爵令息ルドガーの妻となったエルは、良き妻になろうと奮闘していた。しかし突然にルドガーはエルに離婚を宣言し、あろうことかエルの親友であるレベッカと関係を持った。悔しさと怒りで泣き叫ぶエルだが、最後には離婚を決意して縁を切る。程なくして、そんな彼女に新しい縁談が舞い込んできたが、縁を切ったはずのレベッカが現れる。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる