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「おめでとう、アシェリー」

 アリーは笑顔で祝福の言葉を述べた。

 内心ではどす黒い感情が渦巻いていたが、それを悟られないように演技をする。

「ありがとうございます」

 アシェリーも笑顔で応えた。

 その幸せそうな笑顔を見ていると、胸が痛くなる。

 本当は自分が王太子の隣にいたはずなのに……と思わずにはいられなかった。

 だが、もうどうしようもないことなのだ。

 自分にできることはただ耐えることだけだろう。

 いずれ時が経ち、この苦しみが風化するのを待つしかない。

「幸せにね……」

 アリーはありきたりな言葉でアシェリーを祝福するしかなかった。

 しかし、それも仕方がないことだと自分に言い聞かせる。今の自分にはそれしかできないのだから……。

「はい」

 アシェリーは素直に頷いた。その表情を見ると、本当に幸せそうだ。

(私にはそんな顔見せてくれなかったのに……)

 アリーは思わず泣き出しそうになったが、ぐっと堪えた。

 ここで泣いたら台無しだと思ったのだ。

 結婚式なのだから、最後まで笑顔でいなければならない。

 それが自分の役目なのだ。

 アリーはそう自分に言い聞かせて、笑顔を浮かべた。

「おめでとう、アシェリー」

「ありがとう、アリー様」

 アシェリーは嬉しそうに微笑んでくれた。その笑顔を見ていると胸が熱くなるのを感じたが、同時に虚しくもなる。

(この笑顔が憎い……)

 アリーは心の中で呟いた。

 だが、そんなことを言っても仕方がないことはわかっている。

 自分にできるのは二人の幸せを願うことだけなのだということも理解していた。しかし、感情はそう簡単に整理できるものではないようだ。

(悔しい……)

 アリーは拳を握りしめた。

 爪が食い込み、痛みが走る。それでも、アリーは力を緩めることができなかった。
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