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 わたしは心臓がドキドキして、頭が真っ白になってしまった。すぐに姉ちゃんの顔がうかんだ。気づいたときには、すでにスマホに耳を押しつけていた。

「うーん、どうした?」

 眠そうな姉ちゃんの声。なのに、すごく心強い。

 わたしはヒリヒリする胸に片手を押し当てたまま、パパがいなくなったことを話した。
 うん、うんとうなずく電話口の姉ちゃんの声のトーンがどんどん低くなっていく。

「パパに何かあったらどうしよう。わたしの旅行で……」

「里穂。知ってるように、パパはとても強い人よ。ぜったいにだいじょうぶだから、あんたこそ落ち着きなさいよ」

 姉ちゃんはひどくスローに話していた。きっと、わたしの気持ちを高ぶらせないよう、意識してゆっくり話しているのだ。

「パパは足が悪いから遠くには行っていないはず。ペンションとか、周りを確認してみて。パパはライトとか持ってる?」
「杖と部屋の壁かけの非常用のライトがない」
「わかった。あと、ペンションの方にも声をかけなさい。何かあったら連絡して。分かったわね?」
「ありがとう」

 わたしは電話を切って、階段を降りる。 

 一階の管理人室の扉をノックすると、パジャマ姿で、

「どうなさいました」

と、水谷さんが目を丸くして飛び出してきた。
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