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(恥ずかしい……)

「素晴らしい料理です。私の好みに合わせようと考えてくれたんだね」

 ウィリアムが尋ねた。

「ええ……」

 エドナは頬を赤らめながら答えた。

 彼の視線に見つめられると、胸がドキドキしてしまう。

「実に見事だ……」

 彼はそう言うと、柔らかく微笑んでくれた。それはまるで天使のような笑顔だった。

(ああ……! なんて素敵な方なのかしら!)

「…昨年は隣国のシリウス子爵の急襲があったそうだな。深傷を負ったリンドン騎士団長が亡くなったのは気の毒だ。だが、副隊長だった君が隊長に昇格し、こうして立派に騎士団をまとめている。エドナから訓練している姿を聞く限り、私がいちいち心配するのは杞憂だな」

「ありがとうございます、ホーランド卿」

 ウィリアムは微笑んだ。

「ですが、まだまだ団員の強化が足りないと感じております。リンドン隊長を初め、半数の優れた騎士を失いましたから」

「その通りだ。もう少し人員を増やした方がよいかもしれん」

「はい。上司のアガーネン宰相殿に頼んでみます」

(ああ……素敵だわ。お父様は元騎士団長だし、ふたりは相性が良さそうね)

 エドナは二人の会話を聞きながら、幸せな気分に浸っていた。

(もっとこうしていたいわね)

 しかし、そんな願いも虚しく夕食の時間は過ぎてしまった。

「ねえ、エドナ。自慢のお庭をウィリアム様にご案内したら?」

 母の提案にエドナは大きく頷いた。

「ええ。ウィリアム様、いっしょにまいりませんか?」

 彼と二人きりでいたい。

「喜んで」

 二人で中庭に出ると、心地よい風が吹き抜けていった。

 そして目の前には美しい光景が広がっている。

 月明りに照らされて色とりどりの花が咲き乱れ、小鳥のさえずりも聞こえてくる。

 あちこちに篝火がたかれていて、幻想的な雰囲気が漂っている。

「きれいでしょう? 私が演出したのよ」

 エドナは自慢げに言った。

(ああ……ずっとこうしていたい……)

「ああ、綺麗だ」

 彼はそう言うと、じっとこちらを見つめてきた。

 その瞳に吸い込まれそうになるほどだ。心臓が高鳴るのを感じる。

 彼の視線が絡み合うように、こちらの目をとらえて離さない。

(どうしよう……?)

 ドキドキしながら彼の瞳を見つめ返すことしかできない自分がもどかしい。

 しかし、エドナは自分の気持ちを抑えることができなかった。

「ウィリアム様……」

 エドナは彼の手に触れた。

 すると彼は少し驚いたように目を見開いたが、すぐに優しく微笑んでくれた。

 そして彼の大きな手がゆっくりと重ねられる。

(ああ……夢みたい……)
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