46 / 116
第三章
第四十一話 お出かけ③ —勘繰り—
しおりを挟む
「話って?」
「先日に発生した異界についての話なんだ」
「ああ、瀬川君が巻き込まれたやつ?」
「えっ」
何気ないミサの言葉に、空也は間抜けな声を出した。
「……何で知っているの?」
「Sランクだと色々入ってくるのよ。大丈夫だったんだよね?」
「身の安全っていう意味なら大丈夫だけど、あの異界は結構きな臭かったよ。霊のこちらの世界への干渉が強まって作られたものじゃなくて、霊に憑依された人が作ったものだったし」
「……それ、こっちの世界で憑依されて異界作ったってこと?」
「おそらく」
「そんなことある?」
ミサが眉を顰めた。
「霊は見えないだけで元々こっちの世界にも存在しているけど……精神状態が不安定になりやすい異界の中ならともかく、こっちの世界で憑依されるなんて、よほど強い感情を抱えていないと起こり得ないよ」
「うん。でも、そう考えるしかないんだよね。憑依していたのは異界を作った霊だし、異界の性質には憑依された人の意思が反映されていた。僕と愛理を飲み込んだ瞬間閉じたから」
「そうなんだ。確かに異界って普通はそんなにすぐには閉じないよね……って、愛理も巻き込まれたの⁉︎」
「うん。で、ついでに言うと、霊に憑依されて異界を作ったの、僕と愛理の元パーティメンバーの茂っていうやつなんだ」
「嘘……」
ミサは絶句した。
「……そんなこと、喋っちゃって良いの?」
「そこは片桐さんを信頼しているよ。それに、ちょっと心に留めておいてほしいこともあるんだ。友人としても、Sランク冒険者としても」
「……何?」
ミサが身構えた。
「その憑依されていた茂は、憑依される前に精神干渉を受けていた可能性が高いんだ」
「っ——!」
ミサが息を呑んだ。
「つまり、それによって憑依されるほど精神状態が悪くなった……ということ?」
「【解析】はしていないから断定はできないけど。でも、もしそんなことをしている奴、または奴らがいるとしたら——」
「似たようなことがこれから起こる可能性もある……」
「そう」
空也は短く肯定した。
「……わかった」
ミサは力強く頷いた。
「ありがとう」
その真っ直ぐな態度と眼差しに、空也は頼もしさを覚えた。
「それじゃあ、飲み物買って戻ろうか」
「そうだね」
それまでとは打って変わった穏やかな雰囲気で、二人は止めていた足を動かした。
◇ ◇ ◇
【索敵】で大体の居場所はわかっていたため、四人の座るテーブルはすぐに見つかった。
それぞれに飲み物を配り、ミサがついでに買ったお菓子を机の中央に並べた。
「わあ、ありがとうございまーす!」
ヒナが勢いよく手を伸ばした。
沙希がその手を容赦なく叩く。パチンという良い音がした。
「いった⁉︎ 沙希っ? 何を——あっ」
沙希が皐月にチラリと視線を向けた。護衛が主人より先に食べるな、ということだろう。
ヒナが皐月に向き直り、頭を下げる。
「申し訳ありません……」
「……まあ、このメンバーでテンションが上がってしまうのはわかるし、公式の場ではないからお咎めはしないけれど」
皐月がヒナの両頬を摘んだ。
「ふぐっ」
「貴族というものは序列や体裁というものを重視するのだから、くれぐれも注意するように。良いわね? ヒナ」
「ひゃ、ひゃい」
ヒナがウンウンと頷いた。
皐月が両頬から手を離した。見た目よりも力を入れていたのか、そこはほんのりと赤くなっている。
「でも、皐月様、お咎めなしの割には結構痛かった——」
「何?」
口を尖らせたヒナに、皐月が笑みを向けた。ただし、その目は笑っていない。
「な、何でもありませんっ」
ヒナがブンブンと首を振った。沙希がため息を吐く。見慣れた光景なのだろう。
ふっと穏やかな笑みを浮かべて、皐月が「いただきます」とお菓子に手を伸ばした。空也たちもそれに続く。
「甘いです……!」
「ねっ、甘いねー」
「サイコーです!」
皐月、愛理、ヒナが次々と声を上げる。
沙希だけが感想を言わない状況に既視感を覚えた空也は、そちらに目を向けた。
——案の定、沙希は赤い顔で水を流し込んでいた。その皿には食べかけのお菓子がある。
「やりぃ!」
ミサがガッツポーズをした。もはや、自らが犯人であることを隠す気もないようだ。
皐月がため息を吐いた。ヒナも苦笑している。
「えっ、ど、どういう状況? 沙希、大丈夫っ?」
唯一状況をわかっていないであろう愛理が、混乱の声を上げた。
「沙希の苦手な辛いものを、ミサがあれに仕込んでいたのでしょう」
皐月が沙希の皿を、正確にはそこに載っているお菓子を指差した。
「ミサはイタズラ好きですから」
「ああ、なるほど」
愛理がポンッと手を打った。
「でもミサ、今回は少し貴女らしくなかったですね。博打要素ありなんて」
「まあ確かに、沙希以外に渡る可能性はあったよね」
ミサが、皐月の言葉を部分的に肯定した。けど、と彼女は続けた。
「私は十中八九、成功を確信していたよ」
「えっ、どうしてですか?」
ヒナが聞いた。
エヘン、とミサが胸を張る。
「今回のラインナップは、より皆の好物を意識したからね。愛理のは空也が把握していたし、沙希なら必ずそれを選ぶと思っていたんだ」
ミサがドヤ顔で沙希のお菓子を指差した。
沙希がミサを睨む。
「……許せません」
「ごめんって。ほら、私のと交換するから」
ミサが自分の皿を沙希に差し出した。
よく見れば、彼女のお菓子は手で千切られていた。最初から、イタズラが成功したら交換するつもりだったのだろう。
しかし、そんな漢気(?)で満足するほど、沙希歯甘くなかったようだ。
「……ちょっと待ってください」
沙希がカバンから小瓶を取り出した。その中身は赤い粉だった。
「さ、沙希っ?」
引きつった表情のミサに見せつけるように、沙希はそれをお菓子に振りかけた。
「はい、どうぞ」
そして、呆然としているミサの手にそれを乗せる。
「負けず嫌いなんだから……」
皐月が苦笑した。
「皐月……多分これは、負けず嫌いなんて生やさしい言葉ですませて良いことじゃない」
ミサが絶望の表情で、沙希からお皿を受け取った。
「これはそう——復讐よ」
なぜかドヤ顔でそう言い放ち、ミサは赤いその物体にかじりついた。
◇ ◇ ◇
「……そういえばさ」
水を片手に涙を流しつつも完食したミサが、空也を見てくる。
「最近瀬川君って何しているの?」
「愛理と冒険者やっているよ」
空也は愛理をチラリと見た。愛理が頷く。
「えっ、そうなの? その割には瀬川君の名前、全く聞かないんだけど」
「まあ、そんなに派手にやっているわけでもないし、何より空也としては活動していないからね」
「えっ、どういうことですか?」
皐月が首を傾げた。沙希とヒナも困惑している。
ミサがあっ、と声を上げた。
「【認識阻害】?」
「そういうこと」
「……魔法?」
「そ」
沙希の短い問いかけに頷き、ミサが説明を始めた。
「幻術みたいなもので、言葉通り他人の認識を阻害して誤認識させるのよ——こんな感じでね」
ミサの持っていたコップが木箱に変化する。
否、変化したのではない。
彼女の魔法によって木箱に見せかけられているのだ。
「どこからどう見ても木箱ですね……」
「でしょ? けど、魔法を解除すればこの通り」
ミサの手にしていたコップが、再びその姿を現した。
「すごいですね……ということは、瀬川様はこれを使って姿を変えているということですか?」
「そういうこと。今は柳宗平っていう名前で、愛理と【夕焼け】っていうパーティやってるんだ。僕単体でもそうだし、僕と愛理が一緒にいると面倒な輩に絡まれそうだからさ」
「確かにそうですね。ですが、もう今はそこまでお気になさらなくとも良いのではありませんか?」
「えっ、どうして?」
皐月の言葉に愛理が首を傾げた。
「屋敷を出てからここまで、確かに好奇の視線はチラホラ向けられていますが、それでも今のメンバーを考えればむしろ少ないほうと言えます。皆さんが空也君と愛理さんについてまだ関心を持っておられるなら、注目度はこの比ではないと思うのですが……」
「ああ、それは僕が軽く【認識阻害】を使っているからだと思うよ」
空也はミサを見た。
「ついでに言えば片桐さんも、だけど」
「えっ、そうなんですか?」
「勝手に見抜かないでもらって良い?」
ヒナとミサの言葉はどちらも疑問系だったが、そこに込められた感情は大きく違っていた。前者は純粋に興味をそそられたようであり、後者はげんなりしていた。
皆の視線がミサに集中する。
「……相手に誤認識させるほどの強度は疲れるし色々面倒だから、認識されにくくなるようにしているのよ。瀬川君もそんな感じでしょ?」
「そう」
「別に隠していたわけじゃないけど、まさか気づかれるとは思わなかったわ……」
「半分は勘だけどね」
親指を立てる空也に対するミサの返事は、苦笑だった。
「空也は常時二つの魔法を使っているの?」
「今はね」
沙希の問いを、空也は控えめに沙希を肯定した。二つの魔法とは無論、【索敵】と【認識阻害】だ。
「常時二つ、ですか……」
「すごいね、空也っ」
「軽い調子でとんでもないことしているわね……」
「さすがは瀬川様ですっ!」
順番に皐月、愛理、ミサ、ヒナの台詞だ。
ヒナにしてはシンプルな褒め言葉だな、と空也は思った。愛理がいる手前、少しはブレーキをかけているのかもしれない。
「それじゃあ、そろそろ行きませんか?」
「良いね」
「うん、行こっ」
皐月のかけ声で、皆が立ち上がった。
それからも六人は、空也とミサ以外が好奇の視線を向けられつつも、買い物や街巡りを楽しんだ。
しかし、空也の発言通り、彼の【認識阻害】の強度は高くない。
それでも、大抵の人間は無意識のうちに空也を認識から外してしまうが、優秀な魔法師、それも空也に注目している者たちにとってはその限りではなかった。
◇ ◇ ◇
「呑気なものだな」
空也たちから遠く離れた場所——もしも彼らが目を向けたとしても、その顔は認識できないほどだ——で、フードを被った男がニヤリと笑った。
「これから彼らのアテにしている情報源は消えると言うのになあ。吉田、あれだけ悠長にしているなら、もう少し近づいても良いのではないか? いくら私でも、ここからでは姿は見えても会話までは聞き取れん」
「私は奴らが悠長にしているのかは視認できませんが……油断はなさらないほうが良いですぞ。空也は一度【索敵】に引っかかった相手の魔力を覚えられる。もし万が一にでも不審に思われれば、今後の行動が取りづらくなります」
「そう言えばそうだったな。それに関しては本当に厄介だ」
「暗殺の際にも彼が近くにいたら、尻尾を掴まれるかもしれませぬぞ」
「その点に関しては大丈夫さ」
吉田の懸念に、男は自信たっぷりの表情を見せた。
「大丈夫、というと?」
「アレらを使うのさ。手駒は少し減ってしまうだろうが、多少のリスクは仕方ないだろう」
「……確かに、それは必要なリスクでしょうな。しかし、どうやって使うのですか? まさか、街中にアレらを放つわけにもいきますまい」
「その点に関しても心配するな。お前が仕入れてきた情報——柳宗平が瀬川空也だという情報は確かなのだろう?」
「ええ。それは間違いなく」
「ならば問題ない」
男はニヤリと笑って続けた。
「瀬川空也は明日、必ずキース森へやってくる」
◇ ◇ ◇
「おっ、愛理。宗平」
冒険者ギルドにて依頼を選んでいた宗平と愛理は、背後からかけられた明るい声に振り向いた。
そこに立っていたのは、【流星】にいたときからパーティぐるみの付き合いのある【陰影】というパーティだった。
声をかけてきたのは、リーダーの宇田春奈だ。
「春奈! 皆もー」
愛理が笑顔で【陰影】のメンバーとハイタッチをしている。
空也が柳宗平という架空の人物に成り代わっているとはいえ、そもそも愛理は、突如として姿を消した新鋭パーティ【流星】の中で、唯一表舞台に出てきている人物だ。
そんな彼女は、最近では一種の腫れ物のように扱われていて、春奈たちのように気さくに話しかけてくる者はほとんどいないので、愛理も嬉しいのだろう。
「今は依頼を選んでいるとこか?」
「そう。パーティランクもCまで上がったから、そろそろ本格的な魔物の討伐とかも受けようかなーって」
「もうCランクってことは……飛び級制度か?」
「うん。宗平君のおかげでトントン拍子だよ」
冒険者のランクには、個人ランクとパーティランクの二種類が存在する。
どちらも登録をした段階では一番下であるFランクからのスタートとなり、原則としてギルドの定める条件を満たすと順番にE、D、C、B、A、Sランクへと昇級できる。
その条件は決して甘くはなく、二年でCランクまで到達できればスピード出世と言われる。
しかし、今回の宗平や宗平と愛理のパーティ【夕焼け】のように、明らかに初心者ではない者たちに対しては、すぐに昇級できる制度が用意されている。
それが飛び級制度だ。
飛び級制度は「ギルド側の出した、普通の昇級条件とは異なる特別な条件を満たせば即時昇級することができる」というものだ。
宗平、そして【夕焼け】のランクがともにすぐにCランクまで上がれたのは、この制度のおかげだった。
「まあ、お前らが上の依頼受けれないのはギルドにとっても痛手だしな……あっ、そうだ」
何かを思いついた様子の春奈が、壁に貼られていた二枚の依頼書を持って戻ってくる。
「これ、どっちもキース森の依頼なんだけどさ。魔物の討伐ってんなら、こいつらをお前らと俺らで一緒に受けねえ?」
「えっ……」
愛理が困惑の表情で宗平を見てくる。判断は任せる、ということだろう。
「構わないが、なぜだ?」
「そんなに深い理由はないよ。ただあんたらの、というか主に宗平の実力を見たいと思ってさ」
「……わかった」
宗平は頷いた。特に拒む理由もなかったからだ。
「よっしゃ」
春奈がニヤリと笑って握り拳を作った。
「先日に発生した異界についての話なんだ」
「ああ、瀬川君が巻き込まれたやつ?」
「えっ」
何気ないミサの言葉に、空也は間抜けな声を出した。
「……何で知っているの?」
「Sランクだと色々入ってくるのよ。大丈夫だったんだよね?」
「身の安全っていう意味なら大丈夫だけど、あの異界は結構きな臭かったよ。霊のこちらの世界への干渉が強まって作られたものじゃなくて、霊に憑依された人が作ったものだったし」
「……それ、こっちの世界で憑依されて異界作ったってこと?」
「おそらく」
「そんなことある?」
ミサが眉を顰めた。
「霊は見えないだけで元々こっちの世界にも存在しているけど……精神状態が不安定になりやすい異界の中ならともかく、こっちの世界で憑依されるなんて、よほど強い感情を抱えていないと起こり得ないよ」
「うん。でも、そう考えるしかないんだよね。憑依していたのは異界を作った霊だし、異界の性質には憑依された人の意思が反映されていた。僕と愛理を飲み込んだ瞬間閉じたから」
「そうなんだ。確かに異界って普通はそんなにすぐには閉じないよね……って、愛理も巻き込まれたの⁉︎」
「うん。で、ついでに言うと、霊に憑依されて異界を作ったの、僕と愛理の元パーティメンバーの茂っていうやつなんだ」
「嘘……」
ミサは絶句した。
「……そんなこと、喋っちゃって良いの?」
「そこは片桐さんを信頼しているよ。それに、ちょっと心に留めておいてほしいこともあるんだ。友人としても、Sランク冒険者としても」
「……何?」
ミサが身構えた。
「その憑依されていた茂は、憑依される前に精神干渉を受けていた可能性が高いんだ」
「っ——!」
ミサが息を呑んだ。
「つまり、それによって憑依されるほど精神状態が悪くなった……ということ?」
「【解析】はしていないから断定はできないけど。でも、もしそんなことをしている奴、または奴らがいるとしたら——」
「似たようなことがこれから起こる可能性もある……」
「そう」
空也は短く肯定した。
「……わかった」
ミサは力強く頷いた。
「ありがとう」
その真っ直ぐな態度と眼差しに、空也は頼もしさを覚えた。
「それじゃあ、飲み物買って戻ろうか」
「そうだね」
それまでとは打って変わった穏やかな雰囲気で、二人は止めていた足を動かした。
◇ ◇ ◇
【索敵】で大体の居場所はわかっていたため、四人の座るテーブルはすぐに見つかった。
それぞれに飲み物を配り、ミサがついでに買ったお菓子を机の中央に並べた。
「わあ、ありがとうございまーす!」
ヒナが勢いよく手を伸ばした。
沙希がその手を容赦なく叩く。パチンという良い音がした。
「いった⁉︎ 沙希っ? 何を——あっ」
沙希が皐月にチラリと視線を向けた。護衛が主人より先に食べるな、ということだろう。
ヒナが皐月に向き直り、頭を下げる。
「申し訳ありません……」
「……まあ、このメンバーでテンションが上がってしまうのはわかるし、公式の場ではないからお咎めはしないけれど」
皐月がヒナの両頬を摘んだ。
「ふぐっ」
「貴族というものは序列や体裁というものを重視するのだから、くれぐれも注意するように。良いわね? ヒナ」
「ひゃ、ひゃい」
ヒナがウンウンと頷いた。
皐月が両頬から手を離した。見た目よりも力を入れていたのか、そこはほんのりと赤くなっている。
「でも、皐月様、お咎めなしの割には結構痛かった——」
「何?」
口を尖らせたヒナに、皐月が笑みを向けた。ただし、その目は笑っていない。
「な、何でもありませんっ」
ヒナがブンブンと首を振った。沙希がため息を吐く。見慣れた光景なのだろう。
ふっと穏やかな笑みを浮かべて、皐月が「いただきます」とお菓子に手を伸ばした。空也たちもそれに続く。
「甘いです……!」
「ねっ、甘いねー」
「サイコーです!」
皐月、愛理、ヒナが次々と声を上げる。
沙希だけが感想を言わない状況に既視感を覚えた空也は、そちらに目を向けた。
——案の定、沙希は赤い顔で水を流し込んでいた。その皿には食べかけのお菓子がある。
「やりぃ!」
ミサがガッツポーズをした。もはや、自らが犯人であることを隠す気もないようだ。
皐月がため息を吐いた。ヒナも苦笑している。
「えっ、ど、どういう状況? 沙希、大丈夫っ?」
唯一状況をわかっていないであろう愛理が、混乱の声を上げた。
「沙希の苦手な辛いものを、ミサがあれに仕込んでいたのでしょう」
皐月が沙希の皿を、正確にはそこに載っているお菓子を指差した。
「ミサはイタズラ好きですから」
「ああ、なるほど」
愛理がポンッと手を打った。
「でもミサ、今回は少し貴女らしくなかったですね。博打要素ありなんて」
「まあ確かに、沙希以外に渡る可能性はあったよね」
ミサが、皐月の言葉を部分的に肯定した。けど、と彼女は続けた。
「私は十中八九、成功を確信していたよ」
「えっ、どうしてですか?」
ヒナが聞いた。
エヘン、とミサが胸を張る。
「今回のラインナップは、より皆の好物を意識したからね。愛理のは空也が把握していたし、沙希なら必ずそれを選ぶと思っていたんだ」
ミサがドヤ顔で沙希のお菓子を指差した。
沙希がミサを睨む。
「……許せません」
「ごめんって。ほら、私のと交換するから」
ミサが自分の皿を沙希に差し出した。
よく見れば、彼女のお菓子は手で千切られていた。最初から、イタズラが成功したら交換するつもりだったのだろう。
しかし、そんな漢気(?)で満足するほど、沙希歯甘くなかったようだ。
「……ちょっと待ってください」
沙希がカバンから小瓶を取り出した。その中身は赤い粉だった。
「さ、沙希っ?」
引きつった表情のミサに見せつけるように、沙希はそれをお菓子に振りかけた。
「はい、どうぞ」
そして、呆然としているミサの手にそれを乗せる。
「負けず嫌いなんだから……」
皐月が苦笑した。
「皐月……多分これは、負けず嫌いなんて生やさしい言葉ですませて良いことじゃない」
ミサが絶望の表情で、沙希からお皿を受け取った。
「これはそう——復讐よ」
なぜかドヤ顔でそう言い放ち、ミサは赤いその物体にかじりついた。
◇ ◇ ◇
「……そういえばさ」
水を片手に涙を流しつつも完食したミサが、空也を見てくる。
「最近瀬川君って何しているの?」
「愛理と冒険者やっているよ」
空也は愛理をチラリと見た。愛理が頷く。
「えっ、そうなの? その割には瀬川君の名前、全く聞かないんだけど」
「まあ、そんなに派手にやっているわけでもないし、何より空也としては活動していないからね」
「えっ、どういうことですか?」
皐月が首を傾げた。沙希とヒナも困惑している。
ミサがあっ、と声を上げた。
「【認識阻害】?」
「そういうこと」
「……魔法?」
「そ」
沙希の短い問いかけに頷き、ミサが説明を始めた。
「幻術みたいなもので、言葉通り他人の認識を阻害して誤認識させるのよ——こんな感じでね」
ミサの持っていたコップが木箱に変化する。
否、変化したのではない。
彼女の魔法によって木箱に見せかけられているのだ。
「どこからどう見ても木箱ですね……」
「でしょ? けど、魔法を解除すればこの通り」
ミサの手にしていたコップが、再びその姿を現した。
「すごいですね……ということは、瀬川様はこれを使って姿を変えているということですか?」
「そういうこと。今は柳宗平っていう名前で、愛理と【夕焼け】っていうパーティやってるんだ。僕単体でもそうだし、僕と愛理が一緒にいると面倒な輩に絡まれそうだからさ」
「確かにそうですね。ですが、もう今はそこまでお気になさらなくとも良いのではありませんか?」
「えっ、どうして?」
皐月の言葉に愛理が首を傾げた。
「屋敷を出てからここまで、確かに好奇の視線はチラホラ向けられていますが、それでも今のメンバーを考えればむしろ少ないほうと言えます。皆さんが空也君と愛理さんについてまだ関心を持っておられるなら、注目度はこの比ではないと思うのですが……」
「ああ、それは僕が軽く【認識阻害】を使っているからだと思うよ」
空也はミサを見た。
「ついでに言えば片桐さんも、だけど」
「えっ、そうなんですか?」
「勝手に見抜かないでもらって良い?」
ヒナとミサの言葉はどちらも疑問系だったが、そこに込められた感情は大きく違っていた。前者は純粋に興味をそそられたようであり、後者はげんなりしていた。
皆の視線がミサに集中する。
「……相手に誤認識させるほどの強度は疲れるし色々面倒だから、認識されにくくなるようにしているのよ。瀬川君もそんな感じでしょ?」
「そう」
「別に隠していたわけじゃないけど、まさか気づかれるとは思わなかったわ……」
「半分は勘だけどね」
親指を立てる空也に対するミサの返事は、苦笑だった。
「空也は常時二つの魔法を使っているの?」
「今はね」
沙希の問いを、空也は控えめに沙希を肯定した。二つの魔法とは無論、【索敵】と【認識阻害】だ。
「常時二つ、ですか……」
「すごいね、空也っ」
「軽い調子でとんでもないことしているわね……」
「さすがは瀬川様ですっ!」
順番に皐月、愛理、ミサ、ヒナの台詞だ。
ヒナにしてはシンプルな褒め言葉だな、と空也は思った。愛理がいる手前、少しはブレーキをかけているのかもしれない。
「それじゃあ、そろそろ行きませんか?」
「良いね」
「うん、行こっ」
皐月のかけ声で、皆が立ち上がった。
それからも六人は、空也とミサ以外が好奇の視線を向けられつつも、買い物や街巡りを楽しんだ。
しかし、空也の発言通り、彼の【認識阻害】の強度は高くない。
それでも、大抵の人間は無意識のうちに空也を認識から外してしまうが、優秀な魔法師、それも空也に注目している者たちにとってはその限りではなかった。
◇ ◇ ◇
「呑気なものだな」
空也たちから遠く離れた場所——もしも彼らが目を向けたとしても、その顔は認識できないほどだ——で、フードを被った男がニヤリと笑った。
「これから彼らのアテにしている情報源は消えると言うのになあ。吉田、あれだけ悠長にしているなら、もう少し近づいても良いのではないか? いくら私でも、ここからでは姿は見えても会話までは聞き取れん」
「私は奴らが悠長にしているのかは視認できませんが……油断はなさらないほうが良いですぞ。空也は一度【索敵】に引っかかった相手の魔力を覚えられる。もし万が一にでも不審に思われれば、今後の行動が取りづらくなります」
「そう言えばそうだったな。それに関しては本当に厄介だ」
「暗殺の際にも彼が近くにいたら、尻尾を掴まれるかもしれませぬぞ」
「その点に関しては大丈夫さ」
吉田の懸念に、男は自信たっぷりの表情を見せた。
「大丈夫、というと?」
「アレらを使うのさ。手駒は少し減ってしまうだろうが、多少のリスクは仕方ないだろう」
「……確かに、それは必要なリスクでしょうな。しかし、どうやって使うのですか? まさか、街中にアレらを放つわけにもいきますまい」
「その点に関しても心配するな。お前が仕入れてきた情報——柳宗平が瀬川空也だという情報は確かなのだろう?」
「ええ。それは間違いなく」
「ならば問題ない」
男はニヤリと笑って続けた。
「瀬川空也は明日、必ずキース森へやってくる」
◇ ◇ ◇
「おっ、愛理。宗平」
冒険者ギルドにて依頼を選んでいた宗平と愛理は、背後からかけられた明るい声に振り向いた。
そこに立っていたのは、【流星】にいたときからパーティぐるみの付き合いのある【陰影】というパーティだった。
声をかけてきたのは、リーダーの宇田春奈だ。
「春奈! 皆もー」
愛理が笑顔で【陰影】のメンバーとハイタッチをしている。
空也が柳宗平という架空の人物に成り代わっているとはいえ、そもそも愛理は、突如として姿を消した新鋭パーティ【流星】の中で、唯一表舞台に出てきている人物だ。
そんな彼女は、最近では一種の腫れ物のように扱われていて、春奈たちのように気さくに話しかけてくる者はほとんどいないので、愛理も嬉しいのだろう。
「今は依頼を選んでいるとこか?」
「そう。パーティランクもCまで上がったから、そろそろ本格的な魔物の討伐とかも受けようかなーって」
「もうCランクってことは……飛び級制度か?」
「うん。宗平君のおかげでトントン拍子だよ」
冒険者のランクには、個人ランクとパーティランクの二種類が存在する。
どちらも登録をした段階では一番下であるFランクからのスタートとなり、原則としてギルドの定める条件を満たすと順番にE、D、C、B、A、Sランクへと昇級できる。
その条件は決して甘くはなく、二年でCランクまで到達できればスピード出世と言われる。
しかし、今回の宗平や宗平と愛理のパーティ【夕焼け】のように、明らかに初心者ではない者たちに対しては、すぐに昇級できる制度が用意されている。
それが飛び級制度だ。
飛び級制度は「ギルド側の出した、普通の昇級条件とは異なる特別な条件を満たせば即時昇級することができる」というものだ。
宗平、そして【夕焼け】のランクがともにすぐにCランクまで上がれたのは、この制度のおかげだった。
「まあ、お前らが上の依頼受けれないのはギルドにとっても痛手だしな……あっ、そうだ」
何かを思いついた様子の春奈が、壁に貼られていた二枚の依頼書を持って戻ってくる。
「これ、どっちもキース森の依頼なんだけどさ。魔物の討伐ってんなら、こいつらをお前らと俺らで一緒に受けねえ?」
「えっ……」
愛理が困惑の表情で宗平を見てくる。判断は任せる、ということだろう。
「構わないが、なぜだ?」
「そんなに深い理由はないよ。ただあんたらの、というか主に宗平の実力を見たいと思ってさ」
「……わかった」
宗平は頷いた。特に拒む理由もなかったからだ。
「よっしゃ」
春奈がニヤリと笑って握り拳を作った。
10
お気に入りに追加
1,422
あなたにおすすめの小説
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
先輩に退部を命じられた僕を励ましてくれたアイドル級美少女の後輩マネージャーを成り行きで家に上げたら、なぜかその後も入り浸るようになった件
桜 偉村
恋愛
別にいいんじゃないんですか? 上手くならなくても——。
後輩マネージャーのその一言が、彼の人生を変えた。
全国常連の高校サッカー部の三軍に所属していた如月 巧(きさらぎ たくみ)は、自分の能力に限界を感じていた。
練習試合でも敗因となってしまった巧は、三軍キャプテンの武岡(たけおか)に退部を命じられて絶望する。
武岡にとって、巧はチームのお荷物であると同時に、アイドル級美少女マネージャーの白雪 香奈(しらゆき かな)と親しくしている目障りな存在だった。
だから、自信をなくしている巧を追い込んで退部させ、香奈と距離を置かせようとしたのだ。
そうすれば、香奈は自分のモノになると思っていたから。
武岡の思惑通り、巧はサッカー部を辞めようとしていた。
しかし、そこに香奈が現れる。
成り行きで香奈を家に上げた巧だが、なぜか彼女はその後も彼の家を訪れるようになって——。
「これは警告だよ」
「勘違いしないんでしょ?」
「僕がサッカーを続けられたのは、君のおかげだから」
「仲が良いだけの先輩に、あんなことまですると思ってたんですか?」
甘酸っぱくて、爽やかで、焦れったくて、クスッと笑えて……
オレンジジュース(のような青春)が好きな人必見の現代ラブコメ、ここに開幕!
※これより下では今後のストーリーの大まかな流れについて記載しています。
「話のなんとなくの流れや雰囲気を抑えておきたい」「ざまぁ展開がいつになるのか知りたい!」という方のみご一読ください。
【今後の大まかな流れ】
第1話、第2話でざまぁの伏線が作られます。
第1話はざまぁへの伏線というよりはラブコメ要素が強いので、「早くざまぁ展開見たい!」という方はサラッと読んでいただいて構いません!
本格的なざまぁが行われるのは第15話前後を予定しています。どうかお楽しみに!
また、特に第4話からは基本的にラブコメ展開が続きます。シリアス展開はないので、ほっこりしつつ甘さも補充できます!
※最初のざまぁが行われた後も基本はラブコメしつつ、ちょくちょくざまぁ要素も入れていこうかなと思っています。
少しでも「面白いな」「続きが気になる」と思った方は、ざっと内容を把握しつつ第20話、いえ第2話くらいまでお読みいただけると嬉しいです!
※基本は一途ですが、メインヒロイン以外との絡みも多少あります。
※本作品は小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。
大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる
遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」
「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」
S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。
村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。
しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。
とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。
アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!!
『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。
無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。
破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。
「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」
【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第三章フェレスト王国エルフ編
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる