上 下
55 / 314
第二章『竜呪』~漆黒の嵐来たれり、ウォルヴァンシア~

光差す世界へ~カイン視点~

しおりを挟む
※イリューヴェル皇国、第三皇子、カインの視点で進みます。

――Side カイン

 魂さえも浸食するほどに淀みきった……、深淵の闇の中に響いた清らかな『音』。
 強く……、強く、俺を呼ぶ……、アイツの声が、聞こえた。
 全てを気色の悪い闇一色に染め上げられていた俺の意識が、……確かな感覚を抱いて、目を覚ます。優しい……、淡い光が、俺の魂をその柔らかな両手で救い上げるかのように、語りかけてくる。
 聞き覚えのある声。俺が……、今一番、聞きたいと願っていた、アイツの声だ。
 求めていた存在を心に感じた瞬間、俺は五感の感触を取り戻し、自分が面倒な闇の中に浮いている事に気付いた。
 どこだ……、ここは? 俺の身体を縁取る淡い光のお蔭で、自分の身体だけは確認出来るが、周囲の闇が晴れるわけじゃない。だが、意識を塗り潰されていた時の不快感はもうない。
 俺は頭に直接響いてくるユキの声に応える。

(ユキ……)

 どこにでもいそうな、ただのお人好しの間抜けな女……。
 イリューヴェルから体(てい)よく追い払われ、遠く離れた他国に否応なく放り込まれた俺は、ユキという女と出会った当初、……そんな印象を抱いていた。
 ウォルヴァンシア王国の王兄の娘……。誰からも愛され、優しい蕾の中で守られている女。
 俺に組み敷かれ、恐怖に震えていた無力な存在……。
 二度目に顔を合わせた時は、確か……、頬を思い切り叩かれたんだっけか。
 まるで、遠い昔の事のように……、懐かしく感じられるあの日の事。
 俺の事が怖くて仕方がないくせに、必死に涙を堪えて俺に対する怒りを爆発させた女。
 面白い……。それが、二度目に抱いたユキへの興味だった。
 それからも顔を合わせ、というよりも、ウォルヴァンシアの三つ子が俺をユキの部屋に連れて行った事がきっかけで、よく顔を合わせるようになったんだが。
 ……日増しに、『興味』は『面白い』から、『惹き付けられる』ものへと変わり始めた。
 誰もが相手にしきれないと目を逸らす事が常の俺に、アイツは真っ向からその瞳を向けてくるようになった……。俺がからかってばかりだったせいもあるだろうが、最初に出会った時の俺の行動が、本気の一切ない『冗談』だった事を知ったのが大きかったのか、俺に対する怯えは徐々に消えていった。喧嘩ばかりをしていたが……、その瞬間が、アイツが俺を見てくれる事が、いつしか喜びに変わって……。

(大人しそうな顔して……、意外に頑固だし。それに)

 放たれた刺客に手酷い傷を負わされたあの日。
 番犬野郎の所に戻れと怒鳴っても聞かず、あんなにも嫌っていた俺を、その手で助けようとさえした女……。
 出会った時のように押し倒し、怖がらせてやればすぐに泣いて逃げ帰ると思った……。
 だが、……俺を見上げながら微笑んだその穏やかな表情が、俺の心を一瞬にして鷲掴んだ。
 どんな悪態を吐こうと、もう……、こいつには通用しないのだと。
 『俺』を見透かしてくる女の存在に、敗北を悟った……。
 それは、刺客に襲われる事や、イリューヴェル皇国で向けられ続けた嫌悪の視線や言葉よりも、別の意味で……、恐ろしいとも感じられた。
 だが、同時に……、魂の奥底まで甘い痺れを伝えてくるような、『喜び』という感覚の方が大きすぎて、俺は正直、戸惑った。
 逸る鼓動の高鳴りと、俺を真っ直ぐに見てくれる女の存在に……、俺は『何』を求め始めた?
 それは、難しく考えた所で意味はない問いで。簡単な事だった……。

(俺は……)

 女という存在なら、腐るほど見てきたはずだ。
 なのに……、何故こんなにも、ユキという存在に強く惹きつけられたのか……。
 
(落とされちまったんだろうな)

 それは、ユキと関わる内に、徐々に芽生えたものだったのかもしれない。
 だが、確実な手応えを感じたのは、出会った最初の時と同じように組み敷いたあの時、俺を真っ直ぐに見て微笑んだ、ユキの姿。
 こんな短い期間で、自分でも意味がわかんねぇけど……、確かに感じた。
 
(ガキみてぇに願った……)

 欲しい。心の底から、ユキの事が欲しくて仕方がなくなった。
 それこそ、……遊学の期間が終わったら、攫っていきたくなるほどに。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 ユキの声に覚醒を促された俺は、慌てるアイツの声に疑問符を浮かべた直後。
 突然、凄まじい落雷のような音が響き渡るのを感じた。
 淀んだ闇しか存在しないこの世界に、圧倒的な力の奔流が流れ込んでくる。
 ぞわりと俺の感覚が逆立った瞬間、眩い光によって闇が駆逐され始めた。
 それと同時に、俺の存在に物凄い重圧がのしかかり、途方のない疲労感と気怠さが苛んできた。
 確か……、俺を救う為に、ウォルヴァンシアの王宮医師の二人が術を発動させるとか言ってたな。
 つまり……、この外部からの干渉と思われる事態は。

(あの双子のせいかあああああああああああああ!!)

 四肢に走り始めた激痛を堪えながら、俺は力の奔流に何とか抗い続ける。
 この場合、無事に自分の身体を取り戻した時、俺がこの怒りを叩きつければいいのは『どっち』なんだろうな?
 物腰穏やかだが、どうにも底の見えにくい印象がある姉のセレスフィーナか、それとも、俺に対して本性を見せた腹黒眼鏡野郎こと、ルイヴェルか……。
 悩む必要もなく、ぶつけても罪悪感を抱かなくて良さそうなのは、弟の方だな。
 身体を取り戻し次第、速攻でぶん殴ってやる!! 覚悟してやがれ!!
 
(だが、その前に……、禁呪の方を『こっち側』に引き込まねぇとな)

 身体の主導権を握っている禁呪を、俺が封じられていた『この場所』に叩き込む。
 そう決意した俺は、不意に、自分の身体が引き上げられる感覚を覚えた……。
 遥か頭上から差し込んでくる眩い光……。
 それを目指して、俺は途中から海中を泳ぎまわる魚のように、その光を追って上を目指した。


 光を抜けた先。今度は真っ白な空間へと俺は辿り着いた。
 ぐしゃぐしゃの映像が、俺の目の前に広がっている……。
 激しい乱れを見せるそれは、正確な像を結ぼうとはせずに荒れ続けていた。
 
(なんだ……ここは)

 重たい疲労感を纏いながら周囲を見回していると、不意に視界へと飛び込んできた……、胸糞の悪い光景。『俺と同じ姿をした存在(モノ)』が、その頭を両手に抱え、苦悶の表情と共に、おぞましい絶叫を響かせながらのた打ち回っている。
 
「テメェか……、俺の身体を好き勝手にしてくれやがったのは」

 憎しみの気配を纏った低い声を漏らしながら近づくと、禁呪の身体から『黒い靄』が焼け焦げる煙のように噴き出した。
 黒い靄は空中で丸い円の形を描くと、その中に……、『人の姿』を映し出す。
 全身から血を垂れ流し、呪い以上の怨嗟の叫びを発している丸々と太りまくった野郎……。

『グアァアアアアアアアアアアアアア!! ヤメ……ヤメロォォォオオオ!! グアァァァアァァッ!! クルシィィィッ!!』

「……誰かと思ったら、テメェかよクソ豚野郎」

 イリューヴェル皇国、第一皇子……、アースシャルク・イリューヴェルの母親の、兄貴。
 そうだったな……。このおっさんにも、数え切れねぇくらい、刺客を差し向けられた記憶がある。
 むしろ、頻度的に言えば、このおっさんの手先と思われる襲撃を喰らう事が一番多かったっけか。
 昔、一度だけ、俺に送り込まれた刺客を徹底的に締め上げて吐かせた事がある。
 その時に、このおっさんの名前が出た。
 俺の予想通りと言うべきか、皇宮内で俺を一番疎ましく思ってやがったのはそいつだったからな。
 いつ皇帝である親父の気が変わって、次期皇帝の座を甥である第一皇子から、第三皇子である俺に鞍替えするかもしれない事にばかり怯えていたのはよく知っていた。
 何で第二皇子であるグランヴェルト兄貴じゃないかと言えば、俺が『正妃』の子だからだ。
 古き時代に強き英雄と称えられた竜の血を引いている俺のお袋は、気が弱くとも、皇宮内での辛い境遇に押し潰されようとも、その血の中には確かに強き竜の血が流れている。
 その血と、イリューヴェル皇家の正統な血を引く親父の存在が交われば、第一皇子、第二皇子の血筋では太刀打ちの出来ない竜の子が生まれる。
 
(それだけが次期皇帝の選定要素じゃねぇが、俺の存在は他の皇子達側からすれば)

 相当の厄介者……。
 その時代の皇帝によって、力を重視するか、その人格や功績を評価して選定するかは、その時の国の事情次第って感じなんだがな……。
 だが、第三皇子である俺は、自分の向き合う現実に背を向けて、最低最悪の皇子になり果てた。
 どう考えても、あの親父が問題ありまくりの俺を次期皇帝に選ぶ事なんざありえねぇってのに……。
 
(皇帝が交代するのだって、遥か先の話だ。それこそ……、気の遠くなるぐらいに、何百年も、いや、千年以上は先の)

 これは俺達イリューヴェルの竜族、いや……竜皇族(りゅうおうぞく)に限った事じゃないが、人間以外の種族は、寿命が恐ろしい程にある。
 むしろ、こんな早い時期から未来のイリューヴェル皇帝の座を不安に思うあたり……、このクソ豚野郎は相当の臆病者だ。
 永い時を懸けて、俺が万が一更生して、真っ当な存在になる事を恐れたんだろう。
 どちらに転んでも、結局命を狙われる事には変わりないが……。
 余裕のなさ過ぎるその行動には、正直辟易としていた。
 だから一度だけ、クソ豚野郎に接触を図った。かなり前の事だけどな……。
 俺はイリューヴェル皇国をいずれ出る、次期皇帝の座には何の興味もない。
 そう安心させてやろうと思ったってのに……、聞く耳持たずの大罵倒ときた。
 それがまさか……、今度は古に禁じられた術にまで手を出すとはな……。
 
「テメェの命を代償にするほど、次期皇帝の伯父になりたかったのかよ」

 刺客を向けられ続けた事に、悲しみも寂しさもない。
 ただ……、『哀れ』だと感じるだけだ。恐れる必要のない未来に怯え続けた臆病な男。
 テメェの目的を見失うくらいに、愚かすぎる事に手を染めた……、屑。
 
『コロセ……!! コロセェエエエエエエエエエエエエ!! イマシマシイッ、リュウノコヲ……ハヤクッ、ハヤクゥゥウウウ!!』

 俺に対する憎悪の念と、自我を失うほどの怨嗟……。
 禁呪が、その姿を狂気に染まった瞳で睨み上げる。
 
「うるせぇよ……!! グアァァァアアッ……、俺に、命令、すん、ナァァアアアアッ!!」

 術者の命令に……、禁呪が反抗の意思を示している。
 自身が生まれた存在の意味を、意義を、テメェ自身で否定するかのような言動。
 術に意思などない。ただ、術者の意思に従い、隷属するのみ……。
 それなのに、禁呪はおっさんに、必死に悶え苦しみながら抗い続ける。
 有り得ない……、予想外の出来事。術者の支配から逃れ、『意思』を持ち、禁呪はひとつの命となった。
 
「その上、術者の支配から離れ始めてるじゃねぇか……」

 稀に、術者の能力が不足している場合に起こる悲劇。
 それは、分不相応な力を扱おうとした者が報いを受ける当然の結果。
 おっさんは、元々、魔術師でも何でもなく、魔力が在っても、素人同然だ。
 それなのに、……どうやって禁呪なんて大それたモンを行使出来たのか。
 疑問が残る所だが、おっさんに禁呪を扱いきれる素質も力もない。
 そこに、今度は禁呪が『意思』を抱いて反抗を始めた。
 
「制御不能になるのは、……当然か」

 哀れを通り越して、いっそ滑稽だと笑えばいいのか?
 俺を殺す為に、その命まで代償に差し出したっていうのに、まさか……、裏切られるとはな。
 ついでに、禁呪の方も哀れな存在だと言えるだろう……。
 おっさんに行使されたせいで、『自我』と『意思』を抱き、ひとつの命としてこの世界に在り始める事になってしまった。
 ただの術であれば、何を思う事も、何を感じる事もなく、使われるだけで済んだはずだ。
 それなのに、『生まれてしまった』……。
 
「生きるってのも、案外辛いもんだぜ……」

 人生を歩むという事は、この世界の全てに影響され続けるという事だ。
 様々な葛藤を伴い、自身の存在意義を探し、彷徨い続ける……。
 俺の身体を奪って好き勝手している奴だが、行使された禁呪もまた、眠りを覚まされて翻弄された犠牲者とも呼べるだろう。
 おっさんが馬鹿げた事をやり始めたせいで、もうこの禁呪は、使い捨ての駒でいる事に耐え切れなくなった。
 人の都合で生み出された禁呪の狂い様は、少しだけ……、俺の存在と似通っている気もする。
 望まれない存在で在りながら、『命』と『意思』があるせいで、自由と自分の道を渇望してしまう。誰にも、何にも、……縛られたくなどない。周囲の思惑なんか知らない。
 使い捨ての存在でなど……、いたくはない。
 
(俺の場合は、利用さえされずに、ただ消える事だけを望まれていたんだよな……)

 冷たい闇だけが満ちるイリューヴェル皇宮の中、母親以外に必要とされずに生まれてきた第三皇子。俺の存在がこの世界に在るだけで、疎まれ続けたこの命は、幾度となく危険に晒された。
 それこそ、幼かった俺が恐ろしさと耐え切れない現実に発狂するほどには……、最悪だった。
 お袋も、俺を守ろうと必死だったが……、元々、気の弱い女だったからな。
 皇宮の闇と悪意に立ち向かえる強さなどなかった。ただ……、黙って心が弱っていくのを感じるだけ。あまりに儚い守り手……。幼かった俺はやがて……、過酷になっていく境遇の中で、『適応』し始めた。頼れる者もなく、自分を鍛え上げ、面倒事を回避していく知恵をつける事……。
 俺を縛りつけるイリューヴェルという世界から、いつか、解放される事を願い続けて、俺は『適応』し続けた。
 
「他にやり方もあったろうが……、がむしゃらに生きるしかなかったんだよな」

 俺は、右手を漆黒の竜の形状へと変化させ、その鋭い爪の先端を禁呪に向けた。
 自分を縛りつける枷から解放されたいと望む禁呪……。テメェは少しだけ、俺に似てるぜ。
 
「だけどな……、だからって、同情してやるほど俺は優しくねぇんだよ!!」

 振り上げた竜手の気配を感じた禁呪が、奇声を上げながら俺に向かって突進してくる。
 どんな事情があれ、これは俺の身体だ。テメェの好きにはさせねぇ!!
 禍々しい黒い靄、この世界に存在する忌むべき存在……、瘴気。
 まだ俺の身体には、王宮医師達の放った術による負荷がかかっているが、動けないほどじゃない。
 憎悪に歪んだ禁呪の酷い形相を目にしながら突進を避けると、その懐に飛び込み、胸倉を掴み上げた。
 
「グアァアアアアア!! 殺す、ぶっ殺す……!!」

「散々、人を苦しめ倒してくれたんだ……。覚悟しろよ、クソ野郎!!」

 俺が封じ込められていた闇は、禁呪とクソ豚野郎を呑み込む為に大口を開け、底で待っている。
 光が溢れ出しているその場所に視線を定めた俺は、禁呪を一度地に叩きつけ、その胸倉をもう一度勢いよく掴み上げると、勢いよく光の穴に向かって放り投げた。
 その真上へと今度は地を蹴って飛び上がり、渾身の踵落としを禁呪の腹目がけて叩き込む。
 
「グァアアアアアアアアアアアアアア!!」

『コロス!! コロス!! リュウ、リュウ……、リュウノ、コドモ!!』

「誰が大人しく殺されてやるかよ!! クソ豚野郎!!」

 光に呑み込まれていく禁呪とおっさんの怨嗟の声を聞きながら、その禍々しい瘴気が光を押しのけて俺の方へと襲い掛かってこようとするのを視界に映すが、俺に届く事はない。
 大きく口を開けた光の穴が瘴気を喰らい――。

「ふぅ……、終わったな」

 俺の意識が、禁呪とおっさんを闇の底へと封じた事により、急速に眠気を覚え始める。
 歪んだ支配から解き放たれた身体が、俺とひとつに溶け合っていく。
 ゆっくりと瞼を閉じながら……、思い浮かべる。
 次に目が覚めた時は、今度は現実の風を感じる事が出来るのだろう。
 そして……、アイツの顔を、優しい声を、取り戻した俺自身の身体と心で感じられる。

(お前には、伝えたい事があるからな……。待ってろよ、ユキ)

 俺の生きる世界へと……、今、還る。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私の恋が消えた春

豆狸
恋愛
「愛しているのは、今も昔も君だけだ……」 ──え? 風が運んできた夫の声が耳朶を打ち、私は凍りつきました。 彼の前にいるのは私ではありません。 なろう様でも公開中です。

もう彼女でいいじゃないですか

キムラましゅろう
恋愛
ある日わたしは婚約者に婚約解消を申し出た。 常にわたし以外の女を腕に絡ませている事に耐えられなくなったからだ。 幼い頃からわたしを溺愛する婚約者は婚約解消を絶対に認めないが、わたしの心は限界だった。 だからわたしは行動する。 わたしから婚約者を自由にするために。 わたしが自由を手にするために。 残酷な表現はありませんが、 性的なワードが幾つが出てきます。 苦手な方は回れ右をお願いします。 小説家になろうさんの方では ifストーリーを投稿しております。

最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません

abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。 後宮はいつでも女の戦いが絶えない。 安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。 「どうして、この人を愛していたのかしら?」 ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。 それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!? 「あの人に興味はありません。勝手になさい!」

砕けた愛は、戻らない。

豆狸
恋愛
「殿下からお前に伝言がある。もう殿下のことを見るな、とのことだ」 なろう様でも公開中です。

夫と親友が、私に隠れて抱き合っていました ~2人の幸せのため、黙って身を引こうと思います~

小倉みち
恋愛
 元侯爵令嬢のティアナは、幼馴染のジェフリーの元へ嫁ぎ、穏やかな日々を過ごしていた。  激しい恋愛関係の末に結婚したというわけではなかったが、それでもお互いに思いやりを持っていた。  貴族にありがちで平凡な、だけど幸せな生活。  しかし、その幸せは約1年で終わりを告げることとなる。  ティアナとジェフリーがパーティに参加したある日のこと。  ジェフリーとはぐれてしまったティアナは、彼を探しに中庭へと向かう。  ――そこで見たものは。  ジェフリーと自分の親友が、暗闇の中で抱き合っていた姿だった。 「……もう、この気持ちを抑えきれないわ」 「ティアナに悪いから」 「だけど、あなただってそうでしょう? 私、ずっと忘れられなかった」  そんな会話を聞いてしまったティアナは、頭が真っ白になった。  ショックだった。  ずっと信じてきた夫と親友の不貞。  しかし怒りより先に湧いてきたのは、彼らに幸せになってほしいという気持ち。  私さえいなければ。  私さえ身を引けば、私の大好きな2人はきっと幸せになれるはず。  ティアナは2人のため、黙って実家に帰ることにしたのだ。  だがお腹の中には既に、小さな命がいて――。

【完結】婚約破棄される前に私は毒を呷って死にます!当然でしょう?私は王太子妃になるはずだったんですから。どの道、只ではすみません。

つくも茄子
恋愛
フリッツ王太子の婚約者が毒を呷った。 彼女は筆頭公爵家のアレクサンドラ・ウジェーヌ・ヘッセン。 なぜ、彼女は毒を自ら飲み干したのか? それは婚約者のフリッツ王太子からの婚約破棄が原因であった。 恋人の男爵令嬢を正妃にするためにアレクサンドラを罠に嵌めようとしたのだ。 その中の一人は、アレクサンドラの実弟もいた。 更に宰相の息子と近衛騎士団長の嫡男も、王太子と男爵令嬢の味方であった。 婚約者として王家の全てを知るアレクサンドラは、このまま婚約破棄が成立されればどうなるのかを知っていた。そして自分がどういう立場なのかも痛いほど理解していたのだ。 生死の境から生還したアレクサンドラが目を覚ました時には、全てが様変わりしていた。国の将来のため、必要な処置であった。 婚約破棄を宣言した王太子達のその後は、彼らが思い描いていたバラ色の人生ではなかった。 後悔、悲しみ、憎悪、果てしない負の連鎖の果てに、彼らが手にしたものとは。 「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルバ」にも投稿しています。

記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。

せいめ
恋愛
 メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。  頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。   ご都合主義です。誤字脱字お許しください。

婚約破棄されたら魔法が解けました

かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」 それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。 「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」 あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。 「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」 死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー! ※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です

処理中です...