この身が朽ち果てる前に

不倫のブルース

・ふりん［不倫］
〈名・ダ〉異性関係において、道徳に外れている行為のこと。

　不倫というワードを辞書で調べてみると、こういう風に書かれてある。私の率直な意見だが「成る程、まったくその通り」と、いったところだろうか。
　この、道徳に外れるというのは、結婚して家庭があるにもかかわらず、他の異性に惹かれ、性的な関係を持ってしまう、ということなのだろう。
　不倫については、様々な意見がある。ちなみに、私の不倫に対する解釈は「不倫する人は、寂しい人なんだろうな」と、思っているくらいだった。

　少し昔の話だが、私の女友達（Ｎ子）の友達で、不倫をしている、一人の主婦がいた。
　Ｎ子はその友達（主婦）が、不倫をしているのを知っている。だが、Ｎ子はその主婦の不倫を止めさせるどころか、応援をし始めたのだ。
　その事実を知った私は、Ｎ子に聞いた。

「なんで、止めさせねぇの？」と。

　それを聞いたＮ子は、こう答えた。

「いろいろ複雑な事情があるのよ」と。

　成る程ねえ。きっとアレだな。うん、きっとそうだ。きっと、その主婦と不倫相手の間には、劇的なドラマティックなストーリィがあるんだなと、私は思った。

　例えていうなら、あの名作『マディソン群の橋』（いい映画だから観てない人は観た方が良い）のように、感動し、涙なくしては語れない、深い深い物語があるのだろう。私はそう思い、Ｎ子にはそれ以上、何も言わなかった。

　だが、後から話を聞くと、あらビックリ。ドラマティックストーリィどころか、その主婦は『出会い系サイト』で知り合った男を、取っ替え引っ替えと渡り歩き、その性行為に興じた人数は、二十数人に登るという。
　名付けるならば『お手軽アバンチュール』いやいや、おやつ感覚で召し上がってらっしゃるようなので『プッチン不倫』と、いったところだろうか。
　いや、これもある意味ドラマ？　というジレンマに、私はさいなまれている（まあ、どうでもよいのだが……）。

　その主婦いわく──。
　可愛い二人の息子がいるから、離婚はしたくないけど、旦那との夜の生活は渇ききってしまっている。だから、性欲を解消するために、不特定多数の男との性行為を繰り返していることのようだ。

　どうやらこれが、Ｎ子の言っていた複雑な事情らしい。複雑どころか、単純な話だ。この主婦はただ単に、誰でもいいからヤリたかっただけなのだ（まあ、ちょっとは選んでると思うが）。
　そんなにヤリたいのなら、せっかく旦那という、性欲を発散させてくれるパートナーがいるのだから、旦那とヤレばいいではないか。
　と、私的には思うのだが、私がそう言ったら、その主婦は、こう答えるかもしれない。

「旦那が相手にしてくれないから」と。

　旦那さん、奥さんこんなこと言ってますよ。

　それではなぜ、旦那は嫁との性行為をしなくなったのだろうか。
　普通、不倫というのは、男が会社で女子社員に手を出すケースが多いと、私は睨んでいる。ひょっとしたら、旦那も外で不倫をしているのでは……。

　なぜだ！　旦那さんよ！
　アナタが、よその女とパコパコやっているから、アナタの奥さんは、出会い系の男と淫らな行為を繰り返しているのだぞ！
　なぜ、奥さんの性欲を満たしてあげないのだ！

　その旦那いわく──。

「嫁が相手にしてくれないから」

　おお、ブルータスお前もか……。

　奥さん、旦那さんこんなこと言ってますよ。

　とまあ、ここまでは一組の夫婦の不倫を例に挙げたが（途中で妄想が入ったが）不倫というのはやはり、道徳に外れている行為に変わりはない。
　私は不倫を良いとは思わない。もし私が結婚したら、私はワイフがよその男と不倫しないように、全力で性行為に励もうぞ！
　それでもワイフから相手をされなくなってしまったら、私は不倫などせずに、全力で自慰行為に励もうぞ！
　これを聞いたアナタは「ワイフが不倫したらどうするんだ？」と、言うかもしれない。だが、私は宣言しよう。

　私のワイフになる人に限って、不倫なんかするわけがない！

　と、思ってる私は、日本一おめでたい人間である。