かずのこ牧場→三人娘

パピコ吉田

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第三十六話 仲直り

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びす子:それでメイはこの館に来たって訳か。
 
メイ:はい。でもそれだけの理由ではないのです。
 
荒正:というと?
 
メイ:えっと、それは・・。
 
マツダ:ここからは私から話をさせて下さい。
 
 メイが喋ろうとした時にマツダが制止した。
 
マツダ:実はクーデターの首謀者が父のビクターだと報道されました。
 
美留來:だから放送内で何度も『マツダ』って連呼してたのね。
 
荒正:それで親子で何を企ててるんだ?
 
びす子:おい、失礼にも程があるぞ。
 
 びす子が荒正に言うのと同時にメイが立ち上がり目の前の紅茶を荒正の顔をめがけてかけた。
 
荒正:な、何するんだ!
 
メイ:父様もお兄様も悪い事してない!お前なんて嫌いだ!うわーん!!!
 
 メイは顔を真っ赤にしながら泣き出した。
 
荒正:こっちが泣きたいよ・・着替えて来る!戻るまでにこれからどうするかきちんと決めておいてくれよ!
 
 荒正は大股でティールームから出て行った。
 
びす子:メイ、私はマツダとマツダのお父さんがクーデターを起こしたなんて思ってないよ。
 
メイ:ほんと?
 
びす子:もちろん。
 
美留來:それにしてもメイちゃんのお陰で気分がスカッとしたよね。
 
びす子:本当だな。
 
マツダ:でも、例え相手が失礼な事を言ったとしても、レディがはしたない事をするのは良くないと思うぞ、メイ。
 
 マツダが諭すように言うとメイはレディとして恥ずかしい行いをしたと自覚したのかシュンとした顔で兄に謝った。
 
メイ:ごめんなさい。
 
マツダ:分かればよろしい。荒正様が戻ったらちゃんと謝るんだぞ。
 
メイ:分かった。
 
 その時に給仕がティールームに入って来た。
 
給仕:そろそろ昼食となりますがどうなされますか?
 
びす子:そういえばお腹すいたな。
 
美留來:うん。メイちゃんは何か食べて来たの?
 
メイ:食べてない・・。
 
マツダ:それじゃ一緒に食べよう。すみませんが準備出来るまでメイと一緒にいて貰えませんか?
 
びす子:私は構わないよ。
 
美留來:私も。
 
マツダ:助かります。メイ、良い子にしてるんだよ?
 
メイ:はい・・。
 
 メイは兄と離れ難いように見えたが、育ちが良いせいか礼儀をわきまえていてマツダがいなくなっても先程のように取り乱す事はなかった。
 
 少しすると食事の準備が出来たと給仕が呼びに来た。
 
 メイを連れて食堂に行くと荒正が既にテーブルについており、脇にはマツダが立っていた。
 
 メイは荒正の姿を見るとびす子の後ろに隠れた。
 
荒正:さっきは悪かったよ。ごめん。
 
マツダ:荒正様が謝ってくれたのだぞ。メイ、隠れてないで何か言う事はないのか?
 
 メイはびす子の後ろからひょっこり顔を出し、恐る恐る荒正の近くまで行くと「許してあげる」と口をとんがらせた。
 
びす子:よし、これで仲直り出来たな。あー腹減った。食べよう。マツダ達も一緒にどうだ?
 
美留來:良いね!
 
メイ:兄様と一緒に食べたい!
 
マツダ:ありがとうございます。では、お言葉に甘えて。今、ユイを呼んで来ます。
 
 数分後にユイを連れてマツダがやって来るとメイはトコトコと兄の近くまで行くと隣に座った。
 
 全員が着席すると食事が運ばれて来た。
 
 朝食時とは違って人数が増えて賑やかな昼食となった。
 
 午後はびす子達は少し休憩を取る事になり、その間にマツダとユイが情報収集すると言って階下に降りて行った。
 
 美留來はメイに部屋を譲り、兄に会えて安心したのかメイはそのままベッドで眠ったらしく中ドアから美留來がびす子の部屋に入って来た。
 
びす子:メイはどう?
 
美留來:大丈夫。ぐっすり。
 
びす子:そっか。良かった。
 
 びす子がベッドに寝転ぶと美留來がベッドに腰掛けた。
 
美留來:はぁ・・お父さんが行方不明になったり、クーデターが起きたり色々あり過ぎて頭がこんがらがってる。
 
びす子:ごめん。巻き込んじゃったな。少し横になった方が良い。
 
美留來:謝らないで。きっとマツダさん達がお父さんを見つけてくれると思ってるからそこは気にしてない。それよりクーデターが起きてる方が心配だよ。
 
 美留來は横にゴロンと寝転ぶとびす子の方を向いた。
 
びす子:美留來がいてくれて心強いよ。でも、クーデターについては真偽が分からないとどうにも出来ないなあ。
 
 びす子は天井を眺めながら大きくため息ついた。
 
美留來:ペルーサさんに聞いてみるのはどう?
 
びす子:そうだな。後で聞きに行ってみるか。
 
美留來:うん。
 
 午前中に目まぐるしく色々な事が起き、お腹がいっぱいなのも相まって二人はいつの間にか眠ってしまった。
 
つづく
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