19 / 65
第十八話 用意周到
しおりを挟むそれから数日は和孝の姿を見る事もなく、諦めて帰ったのではないかと思っていた。
とある夜、お風呂から上がると父の直己から着信がある事に気がついた。
何事かと思い連絡してみると、父はかなり興奮した様子だった。
直己:『もしもし、今日、和孝くんと会ったよ。良い人じゃないか。どうして教えてくれなかったんだ』
花音:え?和孝さんが家に行ったの?
直己:『仕事から帰って来たら、母さんと楽しそうに話してて、結婚する前に挨拶に来たと言っていたぞ』
花音:お父さん、後で詳しく話すけど結婚はしないから。それに和孝さんが来たら家に入れないように。お願いね!
直己:『どういう事だ?全く何が何だか・・』
花音:えっとそれは・・。
花音が返答に困っていると父に代わり母が嬉々と喋り始めた。
瑤子:『花ちゃん良い人を見つけたじゃないの。今度、和孝さんのご両親と会う事になったのよ』
花音:えっ。ダメ。絶対会っちゃダメ。断って!
瑤子:『あら、どうして?』
花音:とにかく、和孝さんとは結婚はしないから!分かった?
瑤子:『よく分かんないけど・・結婚はしないの?』
花音:うん、しない。だから、相手の両親に会う必要ないから。
瑤子:『そうなの?勿体無いわねえ』
電話の向こう側の母はとても残念そうにため息をついていた。
実家に来た和孝は表向きはとても愛想が良いせいで『こんな良い人なのにどこが問題なの?』と思ったに違いない。
両親との電話が終わるとそのままベッドに寝転んだ。
すると、通知音が鳴り画面を見ると姉の翼からメッセージが来ていた。
『結婚するんだってな、おめでとう。
今日フィアンセの人が会社に来てわざわざ挨拶に来たよ。良い人そうじゃん。幸せになれよ。』
そのメッセージを見て和孝が姉の会社にまで顔を出してる事に驚いた。
姉に返信しようとした時だった、地元の同級生や会社の同僚からお祝いメッセージが一気に届いた。
文章を見ると『結婚式の招待状が届いた』『結婚おめでとう』『先程連絡貰いました、やったね花音』『寿退社おめでとう』など、何故か花音の知らないところで結婚式の話が一人歩きしていた。
このメッセージを見ると、どう考えても和孝が勝手に招待状を送ったとしか思えなかった。
両親や姉、ましてや同級生や同僚まで巻き込む用意周到さは見事なものだ。
一人一人に返信する気にもなれず、花音は携帯電話を握りしめてベッドの上で丸くなった。
翌日、自分では対処し切れないと思った花音は弁護士の立浪に相談すると招待状を送った人に対して事務所の方で対処してくれるとの事だった。
立浪:こちらが想定してるよりも佐々木という男は動きが早いですね。勅使河原様の方の調査結果次第ではこちらも動けるのですが・・。
花音:そうですか・・。私、和孝さんに直接言って来ます。
立浪:だめです。花音さんが行ったら相手の思う壺です。ここはぐっと我慢です。また何かありましたすぐご連絡下さい。
花音:分かりました・・。
花音は自分ではどうにも出来ない無力さを一気に感じていた。
このまま和孝を泳がせているわけには行かないと、立浪に止められたが和孝が泊まっているホテルに思い切って行ってみた。
だが、和孝はホテルには不在でフロントに聞いても何処に出かけたのも分からず探しようがなかったのであった。
つづく
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
膀胱を虐められる男の子の話
煬帝
BL
常におしがま膀胱プレイ
男に監禁されアブノーマルなプレイにどんどんハマっていってしまうノーマルゲイの男の子の話
膀胱責め.尿道責め.おしっこ我慢.調教.SM.拘束.お仕置き.主従.首輪.軟禁(監禁含む)
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
私たち、博麗学園おしがまクラブ(非公認)です! 〜特大膀胱JKたちのおしがま記録〜
赤髪命
青春
街のはずれ、最寄り駅からも少し離れたところにある私立高校、博麗学園。そのある新入生のクラスのお嬢様・高橋玲菜、清楚で真面目・内海栞、人懐っこいギャル・宮内愛海の3人には、膀胱が同年代の女子に比べて非常に大きいという特徴があった。
これは、そんな学校で普段はトイレにほとんど行かない彼女たちの爆尿おしがまの記録。
友情あり、恋愛あり、おしがまあり、そしておもらしもあり!? そんなおしがまクラブのドタバタ青春小説!
【R15】【第一作目完結】最強の妹・樹里の愛が僕に凄すぎる件
木村 サイダー
青春
中学時代のいじめをきっかけに非モテ・ボッチを決め込むようになった高校2年生・御堂雅樹。素人ながら地域や雑誌などを賑わすほどの美しさとスタイルを持ち、成績も優秀で運動神経も発達し、中でもケンカは負け知らずでめっぽう強く学内で男女問わずのモテモテの高校1年生の妹、御堂樹里。親元から離れ二人で学園の近くで同居・・・・というか樹里が雅樹をナチュラル召使的に扱っていたのだが、雅樹に好きな人が現れてから、樹里の心境に変化が起きて行く。雅樹の恋模様は?樹里とは本当に兄妹なのか?美しく解き放たれて、自由になれるというのは本当に良いことだけなのだろうか?
■場所 関西のとある地方都市
■登場人物
●御堂雅樹
本作の主人公。身長約百七十六センチと高めの細マッチョ。ボサボサ頭の目隠れ男子。趣味は釣りとエロゲー。スポーツは特にしないが妹と筋トレには励んでいる。
●御堂樹里
本作のヒロイン。身長百七十センチにIカップのバストを持ち、腹筋はエイトパックに分かれる絶世の美少女。芸能界からのスカウト多数。天性の格闘センスと身体能力でケンカ最強。強烈な人間不信&兄妹コンプレックス。素直ではなく、兄の前で自分はモテまくりアピールをしまくったり、わざと夜に出かけてヤキモチを焼かせている。今回新たな癖に目覚める。
●田中真理
雅樹の同級生で同じ特進科のクラス。肌質や髪の毛の性質のせいで不細工扱い。『オッペケペーズ』と呼ばれてスクールカースト最下層の女子三人組の一人。持っている素質は美人であると雅樹が見抜く。あまり思慮深くなく、先の先を読まないで行動してしまうところがある。
校長先生の話が長い、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
学校によっては、毎週聞かされることになる校長先生の挨拶。
学校で一番多忙なはずのトップの話はなぜこんなにも長いのか。
とあるテレビ番組で関連書籍が取り上げられたが、実はそれが理由ではなかった。
寒々とした体育館で長時間体育座りをさせられるのはなぜ?
なぜ女子だけが前列に集められるのか?
そこには生徒が知りえることのない深い闇があった。
新年を迎え各地で始業式が始まるこの季節。
あなたの学校でも、実際に起きていることかもしれない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる