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第七話 いざ競りへ
しおりを挟む美留來:母さんが大事に育ててた馬の子供なのに・・・。
美留來はその場で泣き崩れた。
花音は悲しんでる美留來の姿を見てそっと抱き寄せ肩を撫でた。
蒔絵:びす子お前は午後から経営学の勉強があるはずじゃろ。一緒にトラックに乗るんじゃ。
びす子:うん・・・。美留來ごめんな・・・。花音またな。
びす子は何も出来ない無力さを感じながら美留來達に合わせる顔がないとばかりに振り返らずにトラックに乗り込んだ。
蒔絵:あ、そうだ。梅男さん特別にこの招待状をあげよう。ルーラ渡しておやり。
ルーラがチケットとパンフレットを渡した。
ルーラ:今度の土曜日にうちの牧場で競りがあります。このチケットを持ってお越し下さい。
びす子:婆ちゃん良いとこあるじゃん!
びす子はこのまま帰るのは気が引けると思っていたが蒔絵の粋な計らいに素直に喜んでいた。
蒔絵:わしもそこまで鬼じゃない。それに、いつもびす子がお世話になってるお礼だ。
梅男:あ、ありがとうございます。必ず伺わせて頂きます。
梅男はトラックに乗ってる蒔絵に向かって涙を滲ませながら何度もお辞儀をしていた。
トラックが牧場から出て行った後、貰ったパンフレットを梅男は開いてみた。
美留來:お父さんパンフレット見せて!競りなんて行った事ないよ。
数鋸:俺も初めてだよ。父さん行った事あるの?
梅男:母さんが生きてる頃にあるよ。まだ結婚したばかりの時だったかなぁ、なけなしの金で買って母さんが今の馬を競り落としたんだ。
美留來:お母さんって引きが強かったんだね。この馬って活躍してたよね、高いのかなあ?
花音:パンフレットの表紙に今回の一番人気って書いてありますね。
梅男:活躍した馬や、引退した馬や、強い子供を産める馬とか定期的に勅使河原さんちは売りに出すんだよ。
美留來:って事は、うちでも買えそうな馬もいるのかな?
花音:そうなるけどまた借金が膨らむんじゃ・・?
数鋸:でも、うちで育ててレースに勝てるようになれれば返せるよね父さん!
梅男:そ、そんな簡単に行くなら良いけど・・。それに競り落とせるかなぁ・・。
花音:梅男おじさんの運にかかってるって事ですね!
梅男:う、ううう。
美留來:お父さん頑張ってよ!
梅男は必ず競り落とすぞとチケットを強く握りしめた。
そしてあっという間に勅使河原牧場の競りの日になった。
梅男は先に会場入りをし、美留來達は競りに出る馬を下見てしいた。
美留來は放牧されてる馬を見て一瞬で見惚れてしまった。
美留來:あのたてがみ見て!金髪で綺麗。
花音:馬の事は素人だけど引き締まった身体で他の馬とは違うオーラみたいなの感じる。
数鋸:あれを父さんが競り落とせたらすごいよ。
美留來:うんうん。
美留來達が馬を見ながら歓談していると高笑いしながらとある女性が現れた。
遥:おーーーほっほっほっ。あーら数鋸さん来てらしたの?お・ひ・さ・し・ぶ・り!美留來ちゃんとそのお友達の花なんちゃらさんも一緒なのね。
加茂淀遥はこの町では勅使河原家の次に大きな牧場で美留來達とは顔見知りだった。
数鋸:加茂淀牧場さんも今日は参加するんですか?
遥:ええ、父の代わりにね。今日は良い馬が勅使河原さんが放出するって聞いてね。
司会者:そろそろ始まります。チケットをお待ちの方は会場にお入り下さい。
遥:あら、そろそろ行かなくちゃだわ。数鋸さん今度またデートしてくださいね?では、また!おっほほほほほ。
数鋸:はははは、、また機会があったら。
美留來:いつもながら嫌味な女だな。
花音:まあ、悪気はなさそうだけど。
美留來:てかさ、お兄ちゃんって何度も食事に行ってるみたいだけど遥さんと付き合ってるの?
数鋸:それはない。ただ、何度も誘われるとさすがに無下に断れなくて・・たまに食事に行く事があるんだよ。
花音はそれを聞いて「ふーん」と数鋸に聞こえるか聞こえないように機嫌悪そうに口を尖らせた。
美留來:あ!そろそろ始まるよ!
数鋸:父さん大丈夫かなあ、家を出る時からかなり緊張してたけど。
三人は競りの会場には入れないので外で見守るしかなかった。
つづく
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