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第五話 検査入院
しおりを挟むあれっくすが転校して来てから二年が経つと一兄とあれっくすと孝は野球が強い私立の中学へ、ぺんちゃんと瑳呂紋はそのまま公立の中学に進学した。
部活に入ってないぺんちゃんと瑳呂紋は放課後には柚子の家にいつも通り遊びに来ていた。
桃華:今日のお菓子はマフィンよ。
三時のおやつにマフィンを並べ出したのを見てぺんちゃんがパックに詰め出した。
ぺん:こんなにいっぱい。一兄達に持って行くだす。
瑳呂紋:ぺんちゃん、今日も行くのかよ・・。
ぺん:いつもお腹空いたって言ってるから一兄達に持って行くだす。
桃華:そう思っていっぱい焼いてますから。いつも差し入れありがとうね、ぺんちゃん。
ぺん:へへっ。照れるだす。ほら、さろっちも一緒に行くだす。
瑳呂紋:しょうがねえなあ。俺もたまには見に行ってやるか。
柚子:そういえば瑳呂紋は何か部活に入らないのかい? ぺんちゃんはいずれは一兄達と一緒の高校に行って野球部のマネージャーをやるみたいだけど。
瑳呂紋:俺もやりたい事あるけど・・・。
柚子:そうかい。やりたい事あるなら良かった。
柚子はそれ以上はしつこくは聞かず瑳呂紋の肩をポンポンと叩いた。
柚子と瑳呂紋が話してる間に支度が終わったぺんちゃんが玄関で足踏みしながら待っていた。
ぺん:さろっち、そろそろ行くだすよ。
瑳呂紋:はいはい。ばあちゃん、またな。
柚子:気をつけて行くんだよ。
ぺんちゃんと瑳呂紋は『はーい』と返事をしながら一兄達の元へと行ってしまった。
二人を見送った後に柚子は急に胸が痛くなり、体の力が入らずそのまま玄関先で倒れこんだ。
居間にいた桃華が物音に気が付き玄関に行くと倒れた柚子の姿を見てすぐさまかかりつけの病院へと連れて行った。
部活が終わると柚子が入院した事を聞いた一兄達はすぐさま病院に駆けつけた。
一兄:ばあちゃん大丈夫かよ。倒れたって聞いて心臓止まりそうになったぞ。
柚子:ちょっと立ちくらみした程度だよ。桃華さんが大袈裟に救急車呼んだだけさ。
桃華:でも一応検査は受けた方が良いです。
ぺん:ばあちゃんにはまだまだ長生きして貰わないとだす。
孝:そうだな。
瑳呂紋:ばあちゃんの説教もまだ聞き足りないしな。
あれっくす:ばあちゃんに話したい事いっぱいあるしね♪
柚子:みんなありがとうね。
一兄:冗談はそれくらいでちゃんと検査して悪いところ治してくれよ。
柚子:そうするよ。
長く病室にいるのも柚子の体に障るとの事で一同は病院を後にした。
ぺん:ばあちゃん思ったより元気そうだっただす。
一兄:すぐ退院出来そうな感じだな。
孝:でも、母さんがすぐ気がついてくれて良かったよ。
一兄:ホント助かったよ。うちの両親が桃華さんにありがとうって伝えて欲しいって言ってたよ。
孝:うん、伝えておくよ。
瑳呂紋:そういえば、お前達は野球の練習があるだろうから退院するまで俺とぺんちゃんが放課後にばあちゃんの様子を見に行くよ。
一兄:助かる。俺も練習が早く終われば顔出すよ。
孝:母さんが付き添いしてるから家の事は俺がやっとくよ。
あれっくす:じゃ、僕は練習が終わったら孝の手伝いに行くよ。
ぺん:わだすも手伝うだす!
こうして五人はますます結束を強めていった。
それから数日後には検査が終わり柚子は何事もなく無事に退院し、しばらくは体調も良く五人の成長を見守っていた。
そして子供の成長は早いもので一兄達は中学三年になった。
一兄達の最近の話題は今後の進路についてだった。
一兄:俺と孝とあれっくすとぺんちゃんは同じ高校に行くけどお前はどーするんだよ。
瑳呂紋:・・・まだ決めてない。
一兄:学費なら俺の親父に頼むから心配ないって。瑳呂紋も同じ高校に行こうぜ。
柚子:まあまあ、無理強いは良くないよ。瑳呂紋もやりたい事あるだろうし、ね?
一兄:やりたい事ってなんだよ。
瑳呂紋:何だって良いだろ。今日は帰るわ。
そう言って瑳呂紋は不貞腐れた顔で帰ってしまった。
一兄:なんだよあいつ。全員で同じ高校のが楽しいのによ。
孝:十六歳になったら施設から出ないとだろ、かといって一兄に全部負担して貰うのも気が引けるんじゃないのか?
一兄:そんな事なんて気にしなくて良いのに水臭い・・・。
あれっくす:まあでも、瑳呂紋にも考えがあるんだろうからまた集まった時にゆっくり話してみよ。
ぺん:でも、さろっちは何をやりたいんだすかねぇ。気になるだす。
一部始終を見ていた柚子は瑳呂紋の事を心配するのであった。
つづく
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