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スピンオフ ダンデリオンの花嫁
第三話 ダイナムの囁き
しおりを挟む変貌したその姿はグレイそのものだった。
グレイが突如現れた事に広間にいた全員はその場で凍りついた。
その空気を遮り本人は優しい隣人かのように明るく挨拶を始めるのであった。
グレイ:皆さまこんばんわ。アキラ久しぶりだね元気だった?ちょっと君の弟の顔を借りさせて貰ったよ。
アキラ:お前まさかノクトまで・・・。
返答次第ではぶん殴るぞと言わんばかりに拳を握りしめていた。
ミミとマサはここぞとばかりにセラとサクラと頼電を逃がそうと広間の外に出ようとしたが外側から何かしらの力が働いてるのか扉はびくとも動かなかった。
ミミとマサはアキラ達の方へと振り返り閉じ込められた事を目で訴えた。
ニコラ:私達を閉じ込める気なの?!だとしてもお生憎様!あんた一人なら私達で倒せるもんね!
ニコラとルチカは武器を構えやる気満々といった感じだった。
グレイ:血気盛んだな・・・まだ話は終わってないんだがね。
そう言いながらグレイはトーマが座るはずだった椅子に優雅に腰を下ろしテーブルに肘をついた。
グレイ:とりあえず話し合おうではないか。
アキラ:今更何を言ってやがる!弟のノクトは生きているのか?!
グレイは「くくく・・」といやらしく笑うとアキラに楽しそうな表情を向けた。
グレイ:ユウトが死んだ後に兄の仇だと言って宮殿に一人でやって来たよ。しょうがないから私が直々に相手をしてあげたけどね。まあ、残念ながら結果は分かるだろう?
ニコラ:嘘だ!ノクトは師匠のところへ向かったはずだ!ノクトが死ぬはずない・・・!
師匠のところへ向かう朝にニコラの元にやって来たノクトは「俺は必殺技を覚えて必ず強くなって兄の仇を討つ!ニコラ待っててくれよな!」と、笑顔で手を振って旅立って行った事をニコラは思い出していた。
その姿が最後だったのかと思うとニコラは涙が溢れ出した。
ルチカ:許さない・・・ニコラまで泣かせるなんて・・・。
ツバキ:私も許さない!サツキの仇を此処で討つ!
ツバキも刀を抜きグレイへと刃先を向けた。
グレイ:良いのかな私にそんな物騒な物を向けて。
グレイはアキラ達に囲まれても飄々としていた。
アキラ:随分と余裕じゃないか。私達相手じゃ役不足とでも言いたいのか!
食いかかるアキラにグレイはやれやれと両手を広げゆっくりとアキラ達の後ろの方を指を刺した。
グレイ:彼がどうなっても良いなら。
アキラ達はすぐさま後ろを振り返るとダイナムが頼電の喉元に短剣を押し当てているのが見えた。
エマ:ダイナム!その短剣を下ろしなさい!さもないと!
エマは手に持っていた魔法書を慌てて開き呪文を唱え始めた。
グレイ:無駄だよ。スライドと同じ契りの呪文はダイナムには効かない。
エマはそれでも呪文を唱え続けたがグレイの言う通りダイナムに効く様子がなかった。
サクラ:ダイナムお願い頼電を解放して!!
サクラの悲痛な叫びはダイナムには届かず真一文字に口を閉じたままだった。
グレイ:さあ、全員武器を下ろしたまえ。それとも頼電が死んでも良いのかね?
アキラ:道理で余裕かましてると思ったらそういう事か・・・全員武器を収めろ。
それを合図に広間にいた全員が武器を収めた。
グレイ:それで結構。ダイナムこっちに頼電くんを連れて来てくれ。
ダイナムが頼電の腕を掴みゆっくりとグレイの方へとゆっくり歩き出した。
頼電:ダイナム・・・どうして・・・僕の事が嫌いになっちゃったの?
つい先日まで熱心に自分の事を看病して優しくしてくれたダイナムが何故こんな事をするのか頼電には全く理解出来なかった。
ダイナムは周りに聞こえないように頼電に囁いた。
ダイナム:少しの辛抱です必ず助けます。今は私の言う事を聞いて下さい。分かったら黙って頷いて下さい。
ダイナムの言葉を信じて頼電は小さく頷くのであった。
つづく
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