満月に吼える狼

パピコ吉田

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スピンオフ 反撃のダンデリオン

第二話 三つのルーチェ

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 一階に降りると丁度セラが宿屋に入ってくるところだった。

 タカールはセラに晴とあれっくすが地球には戻っておらず、アリュバス星に迷い込んでる事を知らせた。
 
セラ:晴さんとあれっくすさんが・・分かりました。ミミとマサに捜索するように連絡しておきます。

タカ:それとダマール兵からこの里を見えぬようにこれから術をかける。ダイナムの力も必要になる。代わりにエマの看病を頼まれてくれないか。

セラ:かしこまりました。ダイナムをこちらに来るように伝えます。

 セラがエマの部屋に行ってから数十分後にダイナムがタカールの元へとやってきた。

ダイナム:タカール様お待たせしました。

タカ:では里の周辺に見えないバリアを張るぞ。
 
 タカールとダイナムが里の入り口に行くと、ヴァルキリー特攻隊が列を成してこちらに向かって来るのが見えた。

 先頭の厳つい銀の甲冑を着た女性がタカールに気がついた。
 
 すると後方に合図を送ると列を成していた隊員達はピタッと止まった。

メル:ヴァルキリー特攻隊長メル。ただ今到着しました。

 メルは馬から降りるとタカールの前で跪き挨拶した。

タカ:よく来てくれた。ヴァルキリー特攻隊が一番乗りだ。中央の教会の隣にある塔にトーマが行っておる。そちらに向かってくれ。

メル:はっ! 承知しました。行くぞ。

 メルは馬に颯爽と飛び乗ると里の中へと入って行った。

 そしてその後も他の隊も続々と合流し始め、その晩に会議が行われる事になった。

トーマ:では、会議を始める。その前にこんな事になって申し訳ない。それでもこうやって集まってくれた事にとても感謝している。それとネイランの里の長であるコーネリアの協力にも感謝している。

コーネリア:こんな時の為の里であります。役に立つ時が来た事を光栄に思っております。皆さま何でもお申し付け下さいませ。
 
 コーネリアはトーマの横で隊長達に深くお辞儀をした。
 
トーマ:それで本題に入る前にこの里に来た経緯を話そうか。
 
 トーマがルーチェの天体の間で起きた事を話すと全員驚いた様子だった。

コーネリア:まさか妃の弟君が・・何故故に。 
 
トーマ:仕えてる者の事も分からなかったのは私のせいでもある。本当に不覚だった。
 
タカ:それを言うなら私も同罪だ。私もスライドの事を見抜けなかった。

コーネリア:起きてしまった事は仕方ないです、これからどうするかで御座います。
 
トーマ:そうだな。諜報部隊の方では何か情報は掴んでおるか?
 
 すると、サーベル諜報部隊長のツバキが一歩前に出た。
 
ツバキ:はい。現在はダマール地方はダマール兵に制圧されております。それと・・大変言い難いのですが。
 
トーマ:構わん続けてくれ。
 
ツバキ:クロスボウ特攻隊長のギャーがダマール側についたとの噂が。

メル:あいつは確かプラーガト村の出身地だったな・・。
 
トーマ:他にはないか?

タカ:エマから先程聞いたのだが、タブリンから使い鳥が来てプラーガト村に晴とあれっくすがいると連絡が来たそうだ。

ツバキ:ブラガート村の村長のところにグレイが現れたとも聞きました。

タカ:まさか・・・。

トーマ:タカール様、何か心当たりでも?

 それを聞いたタカールは神妙な面持ちで話し始めた。
 
タカ:村長はルーチェの証を持っておる。
 
トーマ:村長が何故ルーチェの証を・・。
 
タカ:村長については後で詳く話をするとして、グレイは証を奪い取りに行ったのかもしれん。
 
メル:ですが、ルーチェの証とはそこまで重要な物なのですか。
 
タカ:次の王位継承者が三人現れるとルーチェの証も三つ現れる。
 
コーネリア:次の王位継承はトーマ様では。
 
タカ:本来ならばそうなのだが・・・そろそろ私の寿命が尽きる頃なのかもしれない。
 
 タカールが袖をまくり手の甲をトーマに見せると、以前あった紋様が僅かに薄くなってるように見えた。
 
タカ:頼電に紋様が出ていた事から予想するにグレイにも紋様が出てるかもしらん。
 
メル:となると、トーマ様にも王位継承者として紋様が現れるかもしれないと?

タカ:こればかりは分からない。だが、ルーチェの証を三つ合わせルーチェの門を開くと古代の剣が現れる事になっておる。
 
メル:古代の剣・・何でも希望が叶うと言われてる代物ですよね、確か。
 
コーネリア:そうなるとグレイ様は頼電様もルーチェの証を奪いに来る可能性もあるのでしょうか?
 
トーマ:その可能性は否定は出来ない・・・。でも、グレイが村長のところに取りに行った理由が分かりません。
 
タカ:グレイの母のニヨルドがダマールの末裔だ・・。
 
メル:・・・確かメサの父はヴェルフ王の兄のヴォルク様でしたよね。

トーマ:グレイは私の従兄弟になる。だが、叔父上は体が弱く王位継承を弟に譲ると言って私の父が王になったと聞いている。
 
タカ:うむ、確かにそうだ。ただ、もしグレイに紋様が出ていたら・・・王位継承権が発生する。
 
 そこへ慌てた様子でセラが会議室に入って来た。
 
セラ:会議中にすみません。至急お伝えしたい事が。
 
トーマ:セラどうした?
 
セラ:それがタブリンからの連絡で村長の孫がトルマールにいるらしくグレイが向かっていると。それに付け加えて晴さんとあれっくすさんも同じ町に向かってらしくて・・。
 
メル:ふむ・・となると、グレイに対抗出来るのはこの中では私くらいだな。
 
トーマ:メル頼めるか。
 
メル:はい。ヴァルキリー隊は副隊長に任せこれから急ぎ向かいます。では、失礼。
 
ツバキ:ではサーベル諜報部隊はグレイの周辺に探りを入れてみます。
 
タカ:頼んだぞ。
 
 メルの後に続きツバキは会議室を後にするのであった。
 
つづく
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