満月に吼える狼

パピコ吉田

文字の大きさ
上 下
82 / 182
スピンオフ 騎士団への道

第四話 村長の手紙

しおりを挟む

 朝食を食べ終わり噴水前のベンチで待っていると大きな荷物を背負った大柄の山男が晴達に声をかけてきた。

ロンジ:待たせたな。おめえら飯食ったか。

あれっくす:おはようございます。はい、食べました。
 
ロンジ:これから長旅になるからな。それにしてもこんなひょろひょろな体で大丈夫なんか。

 晴はロンジに体をジロジロと見られると、なんだか裸にされてるような気分になり両手で体を隠した。
 
晴:だ、大丈夫です‼︎

ロンジ:まあ、とりあえず村長の娘のところに行かないとな。ついて来い。

晴:は、はい。

あれっくす:娘さんの家はここから遠いんですか?
 
ロンジ:いんや? ちいせえ村だからそこの坂を登ってすぐだ。ほら、どんどん行くど。時間がねえ。

 ロンジの後ろからついて行ったものの背中から無言の重圧を感じ娘の家に着くまで一言も発する事が出来ない二人だった。

ロンジ:ここだ。馬車をこっちまで持ってくるからお前ら頼むぞ。

 ぶっきらぼうに言うと坂を下って噴水の方へと消えて行ってしまった。

あれっくす:わかりました。煙突から煙が出てるから誰か家にいそうだね。とりあえず扉叩いてみようか。

 晴は扉の前に立つと一呼吸してから家の扉を数回叩いた。
 
 するとふっくらとした体型の女性が出て来た。

女性:あの・・・どちら様ですか?

晴:プラガート村の村長さんからお手紙を預かってきました。村長さんの娘さんはいらっしゃいますか?

村長の娘:私が娘です。父に何かあったんですか? とりあえず中に入って下さい。

 中に入るとすぐ大きなテーブルがあり椅子に座るように促された二人だった。

村長の娘:それで父からの手紙とは?

あれっくす:こちらです。

 あれっくすは村長の娘の方に向かってテーブルの上に手紙を差し出した。

 村長の娘はお礼を言って手紙を読み始めた。

 読み終わるのを晴とあれっくすは黙って静かに待った。

村長の娘:・・・。

 読み終わったのか娘の表情から察すると良い知らせではないようで少し目が潤んでいるようにも見受けられた。

テル:ただいま‼︎ 水汲みに行ってきたよ。

 そこへ先日、馬の水飲み場で出会った男の子が家の中へ入って来た。

テル:おいブス! 何でお前ここにいんだよ。さてはお礼持って来たのか?

村長の娘:こら。お客様に何て事言うの‼︎ テル、ちゃんと挨拶しなさい。

テル:・・・ちぇっ・・・いらっしゃいませ。

 テルは怒られた反動か渋々挨拶して来た。

晴:テルくんよろしくね?

あれっくす:ははっ、お母さんには頭が上がらないんだな。

テル:うるせえ‼︎ 裏で薪割って来る‼︎

 汲んできた水を水瓶に入れたテルは不貞腐れた顔をして外へと出て行った。

村長の娘:ごめんなさいね。本当は優しくて良い子なのに。口が悪くて。

あれっくす:元気で良いじゃないですか。

 娘は読み終わった手紙を封筒に戻し晴とあれっくすに改めて話し出した。

村長の娘:実はあの子は地球人なんです。地球で虐待されていたあの子を主人が助けてうちに連れて来たんです。

晴:だから地球でしか使わないような言葉も知ってたわけですね。
 
あれっくす:そうだったんですか・・。

 晴とあれっくすはテルが同じ地球人だと知って親近感が湧くのであった。

村長の娘:それで二人にお願いがあります。

晴:私達に出来る事なら。ね? あれさん。

あれっくす:うん、僕達に出来る事なら。

村長の娘:実はルーチェの証はテルが持ってるのです。父は本当の孫のようにテルを可愛がってましてテルの誕生日の時にプレゼントしたのです。

村長の娘:この手紙には危険が迫ってると書かれています。そして安全な場所へあなた達が連れて行ってくれると。

晴:私達がですか⁈ 何かの間違いじゃ・・・・だって、アリュバス星に来たばかりでどこが安全な場所か分からないです。

あれっくす:ロンジさんなら分かりそうじゃない?

晴:そうだけど。それにテル君はこの事を知ってるんですか?

村長の娘:裏でテルが薪割りをしてると思うのですぐに旅に出る支度するように言ってください。それともしも私に何か起きてもテルだけ連れて逃げて下さい。
 
あれっくす:分かりました・・。
 
晴:・・・はい。

 晴とあれっくすは未だに自分達の周りで何が起きてるのか把握が出来ていなかった。
 
 だが、村長の娘の表情を見ると現状とても危険が迫っているというのは感じとれた。
 
 そして村長の娘にテルの事を何度も念を押され、晴とあれっくすは裏手の薪割り場に向かうのであった。

つづく
しおりを挟む

処理中です...