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第三章 現る!過去の亡霊
第十一話 悲しい夜明け
しおりを挟む王は真剣な表情でタカールに言った。
王:だめだ、追手が多すぎる。壱乃と娘を誰にも気がつかれない場所に逃げさせるまでは帰れない。
壱乃:おおかみも一緒に来てくれるんでしょ?
王:後で必ず迎えに行く。タカールと今は逃げてくれお願いだ。
王は壱乃を強く抱きしめた。
壱乃:分かった。必ずだよ?
王:うむ。タカール頼んだぞ。私が敵をおびき寄せる。隙をついてアリュバスに戻ってトルキエの弓を取って来る。必ず。
タカ:分かった。夜明けが来ると俺は生まれ変わる。このネックレスのルーチェの証を目印に来てくれ。トルキエの光を受けないと俺は地球人としてここで終わる事になるからな。
王:うむ。だが追手を撒いてここに来たがそろそろ勘づかれる頃だ。
その瞬間ダガーが何本も窓に突き刺さった。
王:くっ、もう嗅ぎつかれたか。早く行け‼︎
タカ:壱乃行くぞ!
タカールはマントに赤ちゃんを抱いた壱乃を隠すようにして玄関へと向い、壱乃は王を一目見ようと振り返った。
壱乃が最後に見た王は白い翼を広げ勢いよく窓から飛び立つ姿であった。
タカールは壱乃達をマントに隠したまま駅まで来ていた。
タカ:丁度始発に間に合ったな。これに乗って行くんだ。
壱乃:タカールさんは来ないの?
タカ:私まで行ったら狙われる。いいか、王が迎えに来るはずだ。それまでに人里離れたどこかへ逃げるんだ。
壱乃:分かった。
その時に王から貰った黒いダイヤのイヤリングが光った。
壱乃は始発の電車に乗ると発車する音が鳴り、ドア越しにはホームにいるタカールに「ありがとう」と言った。
赤ちゃんを抱きしめながら壱乃はタカールの姿が見えなくなるまで窓の外を見つめていた。
電車を見送ったタカールは近くのベンチに座り王が来るまで休む事にした。
だが王は現れる事なく無情にもホームに朝日が差し込みタカールは見る間に赤ちゃんの姿に変貌し全ての記憶をなくし地球人として産声をあげるのであった。
話を聞き終えたギア子は自分でも気がつかず一筋の涙を流し母の形見のイヤリングを握りしめていた。
タカ:ギア子お前がトルキエの弓でバリアを作った光のお陰で私のすべての記憶が戻り元の姿に戻れたのだ。礼を言う。
ギア:お母さんがいつも窓の外を見てた意味がやっと分かった。お父さんはどうなったの?
その時、トーマがすっとギア子の前に立った。
トーマ:ここから先は私から話そう。父が帰ってきたあの日・・・。
王が戻ってきた時には宮廷魔術師のエマに肩を貸して貰いながら宮殿へと入ってきた。
トーマ:父上‼︎何があったのですか⁈
エマ:マサ。ミミ。王を寝室へ。
どこからともなくマサとミミが現れ王を寝室へと連れていった。
セラ:父上は大丈夫なのですか?
エマ:・・・セラ王女様、リョウ王子様をここに連れてきて下さい。
セラ:分かりました。
エマに連れられトーマとセラが幼きリョウと手を繋ぎ王の枕元に集まった。
王:来てくれたか。お前達にお願いがある。地球に行って欲しい・・・それからトルキエの弓を・・・の・・・お前達の大事な・・・を連れて帰り、そして仇を・・・頼む。
王は息も絶え絶えになりながら何とか伝えようとしていた。
トーマ:父上・・・・分かりました。私達がきっと仇を打ちます。
エマやトーマ達は王の言葉を聞き地球人にやられたと思い込み、仇を討って欲しいと頼まれたと勘違いしてしまった。
そして王は大事な部分を言えずにこの世を去ってしまったのであった。
つづく
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