満月に吼える狼

パピコ吉田

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第一章 叩け!釈迦頭金貨財団

第十話 深まる謎

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 リョウが客席の一人一人に目配りながら早口で話し始めた。

リョウ:釈迦頭金貨財団では講演会やイベントに参加する事で金貨を取得できます。金貨は様々なアイテムと交換出来る事は光人から聞いてるとは思いますがその前にうちの財団の御神体を披露させて頂きます。

 そうすると司会の光人が布に被せられた横長の箱を中央のテーブルの上に置いた。

 リョウがマジシャンのごとく箱に掛けてあった布をさっと取り、箱を開け中身を持ち上げると真紅の大きな弓が現れた。

リョウ:これぞ釈迦頭より代々伝わる御神体‼︎トルキエの弓です‼︎

 リョウは取り出した弓を大きく引くと客席に向けて御身体をアピールし始めた。

リョウ:これを触るとご利益が与えられ御神体に認められた方には特別な宝石が与えられます。どうぞご覧ください。

 すると右手の袖口からデコルテが綺麗に見える赤いベルベッドのドレスを着た女性が現れた
 
 首元には大きな黒いダイヤのネックレスをつけリョウの元までゆっくりと歩いてきた。

 リョウは女性の手を取り客席にネックレスが見えるように女性をゆっくり一回転させた。

リョウ:見て下さい。この黒いダイヤはとても希少ですがサイズも大きく当然価値が高い品物です。どうですか皆さん欲しくなったでしょう?

 観客は「おおお!」「素晴らしい!」と響めき拍手がまた起こった。

 その時、ギア子はダイヤを付けている女性が晴だと気がついた。
 
 先日会った時には薄化粧だったが、今日はドレスに合わてるせいか濃いめのメイクでぱっと見ギア子は晴とは気がつかなかった。

ギア:どうして晴さんが。

ぺん:ギアっちどうしただすか?

ギア:あのネックレスつけてる女性はメガたんの会社の研修生なんだよ。

ぺん:なんと⁉︎

 この講演会の警備を晴が契約を取って来たのも合点がいったギア子だった。

 そしてギア子とぺんちゃんは財団自体には興味はないものの、ゆきの為にとりあえず最後まで話を聞き、帰りに釈迦頭金貨財団のパンフレットを貰い帰途についたのであった。

 ギア子の家に着いた頃には二人は講演会の熱気に当てられたせいかぐったりとしていた。

ギア:はぁ、なんか疲れた。それにしてもなんか胡散臭い財団だったわね。

ぺん:はい~。怪しかっただす。

 そう言ったぺんちゃんのバッグの横に釈迦頭と文字の入ったビニールバッグが見えた。

ギア:何これ?釈迦頭の物じゃないの?

ぺん:トイレ行く途中にグッズが売っててトルキエの弓のキーホルダーと黒いダイヤのネックレスのレプリカ安いから買っちゃいました、へへっ。

ギア:あんた何しに行ってんのよまったく!

ぺん:これでわだすも宝くじ当たるかもしれないだすうう。

 そう言ってぺんちゃんはアクセサリーを早速身につけていた。

 こうやって少しずつ洗脳されていくのね~と横目に見ながらギア子は持ち帰ったパンフレットを見始めた。

 パンフレットをパラパラめくって行くと、とあるページにイベント日程があり、財団が管理する施設の見学会がある事が分かった。

ギア:(ゆきさんの家族がいる施設はここか、見に行く必要あるわね・・・。)

ギア:来週は施設を見学にいくわよ!

ぺん:本当だすか⁈ 行く‼︎ 行くだす‼︎

 ぺんちゃんは異様に乗り気だ。

 その夜にメガ男に晴が講演会に現れた事を話すと驚いた様子だった。

メガ:えっ? 晴さんが財団の講演会に⁈そんな事は一言もなかったけどなあ。

 晴は会社では至って普通で財団の話なども一切した事がないようだった。
 
 メガ男に来週ぺんちゃんと施設の見学会に行く事を伝えると、メガ男は心配だからついて来ると言ったが、財団と警備の契約をしてるメガ男には迷惑がかかると思い来ないようにと釘を刺した。

 それにゆきは何度か施設に行ってはいるが門前払いで家族に会えてないようだった。

 それもあり見学会であわよくばゆきの家族と会えればと思っていた。

 はてさてギア子は施設でゆきの家族に会う事が出来るのだろうか。

つづく
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