満月に吼える狼

パピコ吉田

文字の大きさ
上 下
9 / 182
第一章 叩け!釈迦頭金貨財団

第八話 親友の門出

しおりを挟む
 メガ男にバレないように尾行し始めたギア子。

 十分ほどメガ男と晴の後をついて行くと二人は誰もが知る有名なホテルへと入って行った。

 少し時間を置いてから中に入るとメガ男と晴が受付にいるのが見えた。
 
 ギア子は入り口にある観葉植物に隠れて聞き耳を立ててみたもののまったく聞こえなかった。

 その時だった晴を置いてメガ男がギア子の方に歩いて来た。

メガ:ギア子そこにいるのはわかってるぞ。

 上手く隠れていたつもりだがメガ男には丸見えだったようだ。

ギア:バレちゃってたんだ。さっき二人が歩いているのを見て気になって、つい後をついて来ちゃった。ごめんなさい。

メガ:素直でよろしい。

 メガ男が怒ってなくて良かったと胸を撫で下ろしたギア子だったが、最近結婚した相手が研修生とホテルに入るのを見たら変な疑いをかけてしまうのはしょうがないのでは?という顔をしてしまっていた。

 そんなギア子の表情を読み取りメガ男が仕事だよと説明をしてくれた。
 
 メガ男と晴が来た理由はホテルのレセプションルームでとある企業の催物の予定があり、その警備の依頼を受けた晴が一緒に確認に来て欲しいとお願いされたとのことだった。

ギア:なーんだそうだったか。早とちりしちゃった。
 
メガ:次からは見かけたら声かけてくれて良いからな。
 
ギア:分かった。で、もう仕事終わり?

メガ:うん。仕事帰りに寄っただけだから。たまには二人で商店街でもぶらぶらするか。

 二人は久しぶりにショッピングを楽しみ帰宅するのであった。

 帰宅するとアパートのすぐ脇に継之助の車が止まっており、階段を上がるとサクラの部屋のドアが開いていた。

ギア:サクラいるの?

 部屋の中を覗き込むとサクラがダンボールに荷物を詰め込んでいた。

 サクラはメガギアに気がつき手を止め近くにいる継之助に声をかけ玄関先にやって来た。
 
サクラ:実は継之助さんと同棲する事にしたの。

継之助:サクラさんが就活中というのもあるし、家賃とか色々考えたら一緒に住んだ方が良いんじゃないかって。僕から提案したんです。

 サクラは照れ臭そうに「まあ、そういう事なんだよね」と言いながら継之助の方を見て微笑んでいた。

ギア:サクラ良かったね。たまには遊びに来てね。

 サクラが突然いなくなると思うとギア子は目頭が熱くなっていた。

サクラ:ちょっとギア子泣かないでよ。私まで涙が・・・。

 サクラがアパートに引っ越して来てからいつも一緒だった事を思い出したギア子は大号泣していた。

メガ:もう会えない訳でもないし。それに継之助くんのアパートは割と近くじゃないか。
 
ギア:そういえばそうだった。

 いつでも会える距離だった事を思い出すとギア子の涙がピタリと止まった。
 
サクラ:そそ、近いからギア子も遊びに来て。
 
メガ:じゃ俺たちも引っ越し手伝うか。

 メガ男とギア子が手伝ったおかげで引っ越しも早く終わり、大家に鍵を渡しサクラは継之助の車に乗って行ってしまった。

 そしてサクラが引っ越して一週間ほど経った頃に新しい入居者が決まったようで引っ越し業者がやってきた。

 その日のうちに入居者のゆきがギア子の家に挨拶に来た。

ゆき:隣に引っ越してきたゆきと申します、よろしくお願いします。

 ゆきの声はギア子が耳をすまさないと聞こえないくらいの弱々しいものだった。

ギア:わざわざご挨拶ありがとうございます。こちらこそよろしくお願いします。

 ゆきは軽く会釈してふらふらと自分の部屋へと戻って行った。

ギア:(あの人大丈夫かしら?)
 
 ちょっと気になったものの引っ越しで疲れてるのかもしれないとギア子は気にしない事にした。

 翌日にギア子が出かけようと部屋から出て階段を降りようとしていた時、ゆきが買い物から戻って来たところらしく荷物を持ちながら階段を上がっていた。

 お互いすれ違い様に「こんにちわ」と声かけ合い、ギア子が階段を降り終わると上から大きな物音が聞こえて来た。

 嫌な予感がしてギア子が慌てて二階に戻るとゆきが部屋の前で倒れ込んでいた。

ギア:だ、大丈夫ですか?

 ゆきに駆け寄り起き上がらせた時にあまりにもゆきの体が軽くてびっくりしたギア子だった。

 ギア:かるっ⁉︎ ちゃんとご飯食べてますか?もし良ければ今夜うちに食事に来ませんか?

 ギア子はゆきの事が心配になり夕食に誘ってみた。

 ゆきはというと少し涙ぐみ、蚊の鳴くような声で「ありがとうございます、今夜行かせて貰います」と言ってふらふらと自室に戻って行った。

 ゆきに何か栄養がつくものを食べさせなくてはとスーパーで精力がつきそうなメニューを考えながら買い物をするのであった。

つづく
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

あなたの子ですが、内緒で育てます

椿蛍
恋愛
「本当にあなたの子ですか?」  突然現れた浮気相手、私の夫である国王陛下の子を身籠っているという。  夫、王妃の座、全て奪われ冷遇される日々――王宮から、追われた私のお腹には陛下の子が宿っていた。  私は強くなることを決意する。 「この子は私が育てます!」  お腹にいる子供は王の子。  王の子だけが不思議な力を持つ。  私は育った子供を連れて王宮へ戻る。  ――そして、私を追い出したことを後悔してください。 ※夫の後悔、浮気相手と虐げられからのざまあ ※他サイト様でも掲載しております。 ※hotランキング1位&エールありがとうございます!

【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。

くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」 「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」 いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。 「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と…… 私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。 「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」 「はい、お父様、お母様」 「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」 「……はい」 「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」 「はい、わかりました」 パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、 兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。 誰も私の言葉を聞いてくれない。 誰も私を見てくれない。 そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。 ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。 「……なんか、馬鹿みたいだわ!」 もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる! ふるゆわ設定です。 ※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい! ※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇‍♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ! 追加文 番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。

ヒューストン家の惨劇とその後の顛末

よもぎ
恋愛
照れ隠しで婚約者を罵倒しまくるクソ野郎が実際結婚までいった、その後のお話。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

愚かな父にサヨナラと《完結》

アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」 父の言葉は最後の一線を越えてしまった。 その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・ 悲劇の本当の始まりはもっと昔から。 言えることはただひとつ 私の幸せに貴方はいりません ✈他社にも同時公開

孕ませねばならん ~イケメン執事の監禁セックス~

あさとよる
恋愛
傷モノになれば、この婚約は無くなるはずだ。 最愛のお嬢様が嫁ぐのを阻止? 過保護イケメン執事の執着H♡

〈完結〉妹に婚約者を獲られた私は実家に居ても何なので、帝都でドレスを作ります。

江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」テンダー・ウッドマンズ伯爵令嬢は両親から婚約者を妹に渡せ、と言われる。 了承した彼女は帝都でドレスメーカーの独立工房をやっている叔母のもとに行くことにする。 テンダーがあっさりと了承し、家を離れるのには理由があった。 それは三つ下の妹が生まれて以来の両親の扱いの差だった。 やがてテンダーは叔母のもとで服飾を学び、ついには? 100話まではヒロインのテンダー視点、幕間と101話以降は俯瞰視点となります。 200話で完結しました。 今回はあとがきは無しです。

処理中です...