満月に吼える狼

パピコ吉田

文字の大きさ
上 下
6 / 182
第一章 叩け!釈迦頭金貨財団

第五話 研修生

しおりを挟む

 サクラは連絡先を交換してから継之助と食事に行く機会が増え、デートを重ねて行くうちに付き合うようになっていった。

 デートした翌日には惚気話を誰かに聞いて欲しいとばかりにサクラは夕食時にまた現れるようになった。

 夕食が終わるとサクラは楽しそうにメガギアにデートの内容や継之助の事を話していた。

 聞き飽きて来た頃にタイミング良くインターホンが鳴り、ギア子はここぞとばかりに「私が出る!」と言って玄関に向かった。

 玄関を開けると紺のスーツを着た如何にも新入社員らしい女性が立っていた。

晴:こんばんわ、メガ男さんの会社で研修しているはると言います。明日の現場に必要な書類をお忘れだったようなのでお持ちしました。

 晴は髪の毛を後ろに一本に縛り、薄化粧に素足で若さが際立っていた。

 メガ男が晴に気がつき「おおどーした?」とギア子の後からやって来た。

晴:明日の現場の地図や車両のリストです。
 
メガ:明日は直接現場に行く予定だったから助かるよ。お茶でも飲んでいくかい?
 
晴:お誘いありがとうございます。ですが、またの機会にお願いします。
 
メガ:わかった。今日はありがとう。ではまた明日。お疲れ様でした。
 
 晴は深く一礼すると階段を降りて行った。

 メガ男がテーブルに戻りお茶をすすり始めた時だった。
  
ギア・サクラ:ちょっと今の子誰よ!

 二人同時に言われたメガ男はしどろもどろになりながら大学生の晴が就職前に研修として入った事を伝えた。

 ギア子とサクラは「そんな事聞いてない」などメガ男に文句を言い始めたが、研修の子が入る度にいちいち報告する必要もないだろうと一蹴した。

 二人は納得行かない様子だったがメガ男はそんな空気をスルーするかのようにお風呂に入ってしまった。 
 
 翌日の午後にギア子は自宅で就活中のサクラの部屋に来ていた。

 ギア子は早速昨日の夜に来た晴の話をし始めた。

ギア子:晴さん学生さんって事もあって、あの若々しさは眩しかったわあ・・・。

サクラ:ほんと。でも学生なのにしっかりしてたわよね。スタイルも良かったなあ・・・。

 二人は晴の姿を思い出してため息をついた。

サクラ:あ、そうだ。会社の後輩だった子がお試しで行ってたエステの話してたんだけど。これなんてどう?

 就活に使っているノートパソコンでサクラが検索すると開いたページをギア子に見せた。

 サイトには美奈子ビューティエステと書いてあり、その下には全身コースが初回無料と文字がでかでかと載っていた。

サクラ:無料だしここのエステとってもおすすめですって言われたの。お試しに行ってみない?

 ギア子は無料という言葉に弱く簡単に快諾した。

サクラ:よし、これで予約完了。二人が同じ日に取れたから来週行ってみよ。

ギア:来週ね。よーし、綺麗になってやるぞう。
 
サクラ:同じく。
 
 エステ初心者の二人は一回のエステで見違えるほど変身できると思い込んでいた。

つづく
しおりを挟む

処理中です...