上 下
15 / 17
元旦那編

流れ着いた先で

しおりを挟む
勘当されたあの日行くあてもなく王宮で仕事をしていた時に評判の良かった南の方に行ってみようと初めて乗合馬車に乗ってみた。
持たされた金額は私が知る限り平民の1年の収入くらいだろうと言うことくらいで今までのように気軽に使ってはいけないことくらいしか知らない事に気付かされもする。
人生初の乗合馬車は座席が木の板張りでクッションすらなく直ぐにおしりが痛くなり騎乗している時よりも痛くなるのは不思議だったり自分でクッションの変わりにコートをひいたりと頭を使っていることにしきりに感心する。無いならば似たようなものを代用するそんな事今まで必要ならば用意する、されている事が当たり前だったのだと見るもの全てに気づきを感じていたと思う。
何度目かの馬車で乗り合わせた幼い少年は将来は騎士になるんだと夢を語ってくれた。
少し前の私なら平民は兵士にしかなれないと言っていたかもしれない。
「素敵な夢だな、がんばれよ。」
そう言っている自分に驚く。

途中の街を散策している時に不意に裏路地に紛れ込んだ時に見たものが衝撃だった。
アイツが私に言ったことは大袈裟な部分があったと思っていたんだ。
初夜の時みたボサボサガリガリのリディアと路地にいた物乞いが同じようにガリガリだった事に。
あの時ろくに彼女の事を見なかったが、女らしさの欠片もないと思った事だけは覚えていた。

ひたすら南に向けて乗合馬車を乗り、その間色々と自分が見えていなかったものが見えた。

ようやく着いた南方にある街のひとつの港町にしばらく腰を落ち着けようと考えていた。ここなら港町を使う他国の人間もいるためよそ者でも受け入れてくれるかもしれないという安直な考えからだったが、渡された金も既に3分の1ほど消費してしまっておりはこれ以上の移動は難しいと判断したからだ。

比較的仕事はすぐに見つかったのは良かったし、住む家も貸して貰えた。

平民の生活に疎いため安定的な仕事だろうと兵舎の事務員の募集を職業斡旋所で見つけ応募したら王都で文官をしていたが面接の際には上司と折り合いが悪くこちらに流れてきたという事にしておいたため、王都で文官していたなら是非ともと言って貰え、嘘をついている事に罪悪感を感じた。

しばらく働いていると書類上の内容と実際の問題とが噛み合わず現場に出向いて話を聞きに行くしかない事が多くあり、その都度対応する事が必要なのを学んだ。
書類だけ見ていたら分からないことが沢山ある事をもっと早く理解していたらもしかしたらリディアはまだ私の妻で子供も居たのかなとふとそんなことを思ってしまい虚しくなった……

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
少し世間に揉まれた?かもですねw
しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

旦那の真実の愛の相手がやってきた。今まで邪魔をしてしまっていた妻はお祝いにリボンもおつけします

暖夢 由
恋愛
「キュリール様、私カダール様と心から愛し合っておりますの。 いつ子を身ごもってもおかしくはありません。いえ、お腹には既に育っているかもしれません。 子を身ごもってからでは遅いのです。 あんな素晴らしい男性、キュリール様が手放せないのも頷けますが、カダール様のことを想うならどうか潔く身を引いてカダール様の幸せを願ってあげてください」 伯爵家にいきなりやってきた女(ナリッタ)はそういった。 女は小説を読むかのように旦那とのなれそめから今までの話を話した。 妻であるキュリールは彼女の存在を今日まで知らなかった。 だから恥じた。 「こんなにもあの人のことを愛してくださる方がいるのにそれを阻んでいたなんて私はなんて野暮なのかしら。 本当に恥ずかしい… 私は潔く身を引くことにしますわ………」 そう言って女がサインした書類を神殿にもっていくことにする。 「私もあなたたちの真実の愛の前には敵いそうもないもの。 私は急ぎ神殿にこの書類を持っていくわ。 手続きが終わり次第、あの人にあなたの元へ向かうように伝えるわ。 そうだわ、私からお祝いとしていくつか宝石をプレゼントさせて頂きたいの。リボンもお付けしていいかしら。可愛らしいあなたととてもよく合うと思うの」 こうして一つの夫婦の姿が形を変えていく。 --------------------------------------------- ※架空のお話です。 ※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。 ※現実世界とは異なりますのでご理解ください。

いつまでも変わらない愛情を与えてもらえるのだと思っていた

奏千歌
恋愛
 [ディエム家の双子姉妹]  どうして、こんな事になってしまったのか。  妻から向けられる愛情を、どうして疎ましいと思ってしまっていたのか。

貴方の事を愛していました

ハルン
恋愛
幼い頃から側に居る少し年上の彼が大好きだった。 家の繋がりの為だとしても、婚約した時は部屋に戻ってから一人で泣いてしまう程に嬉しかった。 彼は、婚約者として私を大切にしてくれた。 毎週のお茶会も 誕生日以外のプレゼントも 成人してからのパーティーのエスコートも 私をとても大切にしてくれている。 ーーけれど。 大切だからといって、愛しているとは限らない。 いつからだろう。 彼の視線の先に、一人の綺麗な女性の姿がある事に気が付いたのは。 誠実な彼は、この家同士の婚約の意味をきちんと理解している。だから、その女性と二人きりになる事も噂になる様な事は絶対にしなかった。 このままいけば、数ヶ月後には私達は結婚する。 ーーけれど、本当にそれでいいの? だから私は決めたのだ。 「貴方の事を愛してました」 貴方を忘れる事を。

生まれ変わっても一緒にはならない

小鳥遊郁
恋愛
カイルとは幼なじみで夫婦になるのだと言われて育った。 十六歳の誕生日にカイルのアパートに訪ねると、カイルは別の女性といた。 カイルにとって私は婚約者ではなく、学費や生活費を援助してもらっている家の娘に過ぎなかった。カイルに無一文でアパートから追い出された私は、家に帰ることもできず寒いアパートの廊下に座り続けた結果、高熱で死んでしまった。 輪廻転生。 私は生まれ変わった。そして十歳の誕生日に、前の人生を思い出す。

一年で死ぬなら

朝山みどり
恋愛
一族のお食事会の主な話題はクレアをばかにする事と同じ年のいとこを褒めることだった。 理不尽と思いながらもクレアはじっと下を向いていた。 そんなある日、体の不調が続いたクレアは医者に行った。 そこでクレアは心臓が弱っていて、余命一年とわかった。 一年、我慢しても一年。好きにしても一年。吹っ切れたクレアは・・・・・

【完結】私よりも、病気(睡眠不足)になった幼馴染のことを大事にしている旦那が、嘘をついてまで居候させたいと言い出してきた件

よどら文鳥
恋愛
※あらすじにややネタバレ含みます 「ジューリア。そろそろ我が家にも執事が必要だと思うんだが」 旦那のダルムはそのように言っているが、本当の目的は執事を雇いたいわけではなかった。 彼の幼馴染のフェンフェンを家に招き入れたかっただけだったのだ。 しかし、ダルムのズル賢い喋りによって、『幼馴染は病気にかかってしまい助けてあげたい』という意味で捉えてしまう。 フェンフェンが家にやってきた時は確かに顔色が悪くてすぐにでも倒れそうな状態だった。 だが、彼女がこのような状況になってしまっていたのは理由があって……。 私は全てを知ったので、ダメな旦那とついに離婚をしたいと思うようになってしまった。 さて……誰に相談したら良いだろうか。

その瞳は囚われて

豆狸
恋愛
やめて。 あの子を見ないで、私を見て! そう叫びたいけれど、言えなかった。気づかなかった振りをすれば、ローレン様はこのまま私と結婚してくださるのだもの。

跳ね返り令嬢、腹黒殿下に捕まります!?

さくらもち
恋愛
辺境伯と呼ばれるカロナリア伯爵家の末子で唯一の娘であるナタリアは兄たちに囲まれて育ったせいでかなりのお転婆。 社交界デビューで王都に向かう道中で山賊に襲われ撃退した後に駆けつけたこの国フォロバ王国の王弟殿下アルフォード・フォロバ様。 腹黒な王弟殿下に振り回されつつ、窮屈な王都生活を過ごすナタリアのお話です。 【旦那様、わたくし家出します!】の第2王子が10年後王弟殿下になったお話です。

処理中です...