上 下
68 / 68
壱 出会いの章

62話 暗雲

しおりを挟む
「長居をするつもりはないので単刀直入に言おう。君たちは先駆け人を舐めているのか?」

 一瞬何を言われたのか分からなかった緋夜たちは揃って無反応になった。視線を合わせ4人の心境が同じであることを確認し合うと、一応パーティリーダーである緋夜が一歩前に出る。

「申し訳ありません。少々仰っている意味が分かりかねるのですが」

 緋夜がそう言うや否や『煽動の鷹』の面々はますます冷めた目を向け、ケレイブはこれ見よがしにため息をこぼす。

「君たちのこれまでの態度は先駆け人として選ばれた者の態度ではないと言うことだ。魔物暴走スタンピードは国の危機であり、各国が団結して対処にあたる。当然最前線に立つことになる上、こちらは詳しい状況は把握できないという点で危険も多い役目だ」

 まるで何も分からない子どもに教えるような口調で説明を始めたケレイブだが、こんなことも理解できないのかと言わんばかりの呆れが滲んでいた。メディセインの笑みが深まるのをうっすらと感じながらも、緋夜はひとまず最後まで話を聞くことに。

「そんな重大な役目を任されておきながら君たちはおかしな作戦を提案したり、戦闘の間もずっと遊んでいるようにしか感じられない戦いぶりだった」

 間違ってはいないな、と緋夜もそっと思った。余裕綽々の態度で言葉を交わし、魔物との戦いは明らかに手を抜き、真面目に仕事をしているとは言い難い。しかし、ガイたちにとっては本当に雑魚という認識でわざわざ本気を出してやる必要性を全く感じず、結局ただのお遊びになってしまうのだ。
 実際、その場から動くことなく倒せる相手を真面目に対処していく方が馬鹿らしいと悪びれもなく馬鹿正直に宣ったのだから、本人としてはこれでも大人しく相手をしているだけマシという認識に違いない。

「先駆け人とは後から来る仲間たちの負担を少しでも減らすために送られる名誉ある仕事なんだ。だからこそ君たちの、まるで遊んでいるかのような態度は先駆け人としての自覚がないと思われても仕方ないだろう」

 客観的に見ればその通りだろう。これには緋夜も同意する。国が関わっている以上は滅多なことはできない。民間人では到底背負いきれないほどの損害を国にもたらす可能性も考慮すれば、間違っても下手なことはしない筈だ。
 そういう意味で彼の指摘は大いに正しい。普段の調子でやりすぎたかと思案していた緋夜だったが、隣から聞こえた言葉で強制的に思考をぶった斬られる。

「普段と大して変わらない仕事内容なのに、何故そこまで気負う必要があるのかな?」

 はっとして声の方向を見ると心底不思議そうに首を傾げるアードが頬杖をついていた。驚きと僅かな困惑を滲ませた緋夜と目が合ったアードは任せてと声に出さない合図を送った。その意味を正しく受け取った緋夜はとりあえず任せることに。

「変わらないって……本当に理解していないのか? 今回の任務には国家が関わっているんだ。間違っても通常任務と同じにはなり得ない」
「でも内容は変わらないよね? 魔物の討伐なんて日常だし、高ランクの冒険者は高位貴族からの依頼だって受ける。君たちはAランク……だったよね?」
「ああ、そうだが……」

 突然ランクを聞かれて一瞬困惑したのかケレイブは言葉に詰まりながらも答えた。しかしその顔にはそれがどうしたのか、という疑問と困惑、そして僅かな怒りが見て取れる。
 そんなケレイブにアードは笑顔を向けた。

「だったら君たちは貴族からの指名依頼の経験が少なくとも一度はある筈だよ。国だってお偉方だ。それだけ見れば『いつもの依頼』って言えると思うけど……違うのかな?」

 穏やかに、しかしその言葉はとても冷たく室内に響く。アードの言い分は間違っていない。
 緋夜たちは今の所経験はないが、Aランク以上の冒険者は指名依頼というものがありそれらは基本的に豪商や貴族から出される。そして『煽動の鷹』もその依頼を何度か受けた経験があった。

「確かに指名依頼を受けたことはある。だからこそ魔物暴走スタンピードの件は慎重になる必要がある。国の問題になる以上は君たちの態度は看過できないんだ」
「何が看過できないの? 自分達の活動が制限されてしまうことを恐れるのは勝手だけど、僕たちは特に問題は起こしていないし報告もしっかりと行っている。少なくとも君たちの不利にはなっていないはずだけど」

 淡々としたアードの言葉に、障るものがあったのかケレイブはわかりやすく顔色を変えた。

「そんなことを言っているんじゃない! 君の言い方だとまるで自己保身のために君たちを諌めているみたいじゃないか! 我々はただ君たちの仕事への態度が大役を任された者ではないと!」
「何が問題? 魔物は片していたし、会議で意見も言った。仕事はこなしているよね?」
「しかし、戦闘は遊びじゃない。常に命の危険がある以上常に真剣にやるべきだ!」
「うん。それは間違っていないしむしろ大事なことだ」

 あっさりとアードは言った。少なくともこれまでのケレイブの発言に間違いはないし緋夜もアードもそのことを理解していた。たとえ低ランクの魔物でも数次第で脅威へとなりえるし、何が起こるか分からない戦場では些細な油断が命取りになる。ケレイブが言いたいのはまさにそれだろう。
 しかし。
 理解しているからこそ、アードは彼の、彼ら『煽動の鷹』の態度に不快感を覚えたのだ。それはこの場をアードに譲っているガイとメディセインも同じであった。自分達が何も理解していないまま大役を掴み、ろくに仕事もしない連中だと思われていることが心から気に食わないのである。彼らは強い。それゆえにプライドもあるだろう。それがこんな貶され方をして憤りを覚えないはずはない。

「僕たちはいつも通りに仕事をして普段通りの会話をしているだけ。魔物暴走スタンピードを軽視しているわけでもないし警戒を緩めているわけでもない。何がそんなに不満なの」
「……何故君たちがそんな捻くれた考えになるのか理解できない。もっと真剣に取り組むべきだと言っているのがわからないのか?」
「まじめにやっているとは言い難いかもしれないけど、変に気を張っていても疲れるだけだ。気負いすぎて仕事に支障が出る方が問題だし肩の力が抜ける程度の適度な緩さは必要だ」
「君たちは緩すぎるんだ。これでは先駆け人の任務に支障が」
「出していないよ」
「今後出してしまうかもしれないから、言っているんだ」

 いつの間にか舌戦を始めたアードとケレイブに緋夜たちは完全に置いてけぼりを食らっていた。
 そもそもどちらの言い分も間違っていないのに、全く折り合いがつく気配はなく、内容もだいぶ変わってしまっている気がした。緋夜としては自分たちの態度が職務怠慢に見えてしまったことは心当たりがあるので反省点として素直に受け入れようとしていた。しかし先ほどから食い違う言葉を注視していくと、どうにも違和感が拭えない。そしておそらく、その違和感の正体を緋夜以外は感じ取っているのだろう。その証拠にメディセインは表面的な笑みを消している。
 2人の会話は平行線を辿り、埒があかないと思ったのか、ケレイブの視線が緋夜へと向けられた。

「君はどう思っているんだ? パーティリーダーなんだろう」

 もともと緋夜が相手をしていたので話していた人物が元に戻っただけなのだが、なぜか緋夜の中で僅かに怒りが湧く。

「私たちの態度は決して真面目なものとは言えないことは自覚しておりますし、その点に関して反省もしています」

 それは事実だったため、緋夜は素直に口にした。緋夜の答えにケレイブの口元に微かに笑みが浮かぶ。緋夜が素直に過ちを認めたことに対してだろう。

「リーダーである君が理解してくれているようで何よりだよ。ならこれからはもう少し真面目に取り組んでくれ。先駆け人はとても重大な仕事だ。ミスは許されないからね」
「はい、わざわざご忠告いただきありがとうございます」
「わかってくれればいいよ、それじゃあ、この後もよろしくね」
「はい」

 その会話を最後に『煽動の鷹』は部屋を後にする。足音が完全に聞こえなくなったところでメディセインがやや冷たい声で尋ねた。

「何故、反論をしなかったのですか?」

 苛立ちを隠そうとしないメディセインに緋夜はしれっと言った。

「だって無駄だもの」

 なんの悪びれもなく放たれた言葉に3人は目を見開く。

「確かにお話はしていたかもしれないけど、今回の件に関する各国の動きの考察や魔物のことで完全な無駄話ってわけでもないし。ガイたちが手を抜いていたのだって、低ランク相手っていうのもあるけど、あの冒険者や騎士たちに配慮してでしょ? 3人が本気になったら二次被害がすごいし」

 そう、緋夜たちはそこまで無駄な話をしていたわけではない。そもそも『煽動の鷹』とは場所が離れていた上、戦闘による騒音で会話などほとんど聞こえないのだ。つまり彼らは遠目から見ての感想しか言っておらず、同時によく見てもいない。戦闘に集中していたからというのもあるだろうが、一瞬の目視でしかものを語っていなかった。
 ガイたちが不快に感じたのはまさしくこれだろう。一方で得た情報が全てのように受け止め、さらにそれを自分達の基準に当てはめ、それが当然のような物言いで緋夜たちに向けた。

「悪い部分は確かにあるけど、無自覚な上から目線はタチが悪い上にずっと平行線だったからこれは無駄だなって思ったの。だからこちらが非を認めて謝罪をすればこれ以上労力を割く必要はないでしょ。あとは極力関わらないようにすればいい」

 そこまで説明され、僅かに溜飲が下がったメディセインを見た緋夜はもう一押しとばかりににっこりと笑った。

「無駄を削減するための虚言だよ。だから……私は謝罪を言っていない」

 そこまで言うとメディセインに笑みが浮かびガイは呆れ、アードは納得に表情になると同時に吹き出した。

「あっははは! 確かに謝罪は言っていなかったね」
「面倒なやり方しやがって……」
「素晴らしいですよヒヨさん」

 三者三様の反応は非常に彼ららしいもので緋夜も一緒に笑う。室内の空気も柔らかくなり、すっかり元に戻った。

「さて、だいぶ時間がとられたけど、しばらく休憩しよう」


      ♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎

 ーー某所

 とある場所でひとりの男がうっとりと頬を染めていた。男の目に映っているのは2つの検体でその体からは禍々しいほど邪悪な気を放っている。

「もうすぐ……もうすぐだ……私の研究成果が完成する……! これであのお方に褒めてもらえるぞ……」

 その時を夢見ながら男は嗤う。その姿は狂気を孕み目を背けたくなるほどに不気味だった。
 そして男の作品の完成は同時に災厄の宴の始まりを意味していたーー。








しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(15件)

hiyo
2022.03.10 hiyo

読み易くて、楽しく読ませて頂いています~
とても個性的なメンバーなのでこの先が楽しみです。

続きをお待ちしています~♪

蓮条緋月
2022.03.10 蓮条緋月

感想ありがとうございます。この先も皆さんに楽しんで頂けるよう頑張りますので今後ともよろしくお願いします😁

解除
スパークノークス

お気に入りに登録しました~

蓮条緋月
2021.08.17 蓮条緋月

ありがとうございます。これからも楽しんでいただけると幸いです。よろしくお願いします。

解除
春橙-ハルト-

いつも楽しく読んでます!
こうゆう話を探してたのでとっても嬉しいです!!
更新待ちしてる間に何周も読み返してしまいましたw
欲を言うともう少し更新が早いともっともっと嬉しいですw

大変だと思いますが、無理せず程々に頑張ってください😁
応援してます!!

蓮条緋月
2021.07.15 蓮条緋月

感想ありがとうございます。楽しんでいただけてなによりです。更新が遅いことに関しましてはお詫び申し上げます。ですが、これからも読んでくださったら幸いです。今後ともよろしくお願いします。

解除

あなたにおすすめの小説

はぁ?とりあえず寝てていい?

夕凪
ファンタジー
嫌いな両親と同級生から逃げて、アメリカ留学をした帰り道。帰国中の飛行機が事故を起こし、日本の女子高生だった私は墜落死した。特に未練もなかったが、強いて言えば、大好きなもふもふと一緒に暮らしたかった。しかし何故か、剣と魔法の異世界で、貴族の子として転生していた。しかも男の子で。今世の両親はとてもやさしくいい人たちで、さらには前世にはいなかった兄弟がいた。せっかくだから思いっきり、もふもふと戯れたい!惰眠を貪りたい!のんびり自由に生きたい!そう思っていたが、5歳の時に行われる判定の儀という、魔法属性を調べた日を境に、幸せな日常が崩れ去っていった・・・。その後、名を変え別の人物として、相棒のもふもふと共に旅に出る。相棒のもふもふであるズィーリオスの為の旅が、次第に自分自身の未来に深く関わっていき、仲間と共に逃れられない運命の荒波に飲み込まれていく。 ※第二章は全体的に説明回が多いです。 <<<小説家になろうにて先行投稿しています>>>

異世界でフローライフを 〜誤って召喚されたんだけど!〜

はくまい
ファンタジー
ひょんなことから異世界へと転生した少女、江西奏は、全く知らない場所で目が覚めた。 目の前には小さなお家と、周囲には森が広がっている。 家の中には一通の手紙。そこにはこの世界を救ってほしいということが書かれていた。 この世界は十人の魔女によって支配されていて、奏は最後に召喚されたのだが、宛先に奏の名前ではなく、別の人の名前が書かれていて……。 「人違いじゃないかー!」 ……奏の叫びももう神には届かない。 家の外、柵の向こう側では聞いたこともないような獣の叫ぶ声も響く世界。 戻る手だてもないまま、奏はこの家の中で使えそうなものを探していく。 植物に愛された奏の異世界新生活が、始まろうとしていた。

とんでもないモノを招いてしまった~聖女は召喚した世界で遊ぶ~

こもろう
ファンタジー
ストルト王国が国内に発生する瘴気を浄化させるために異世界から聖女を召喚した。 召喚されたのは二人の少女。一人は朗らかな美少女。もう一人は陰気な不細工少女。 美少女にのみ浄化の力があったため、不細工な方の少女は王宮から追い出してしまう。 そして美少女を懐柔しようとするが……

レベルカンストとユニークスキルで異世界満喫致します

風白春音
ファンタジー
俺、猫屋敷出雲《ねこやしきいずも》は新卒で入社した会社がブラック過ぎてある日自宅で意識を失い倒れてしまう。誰も見舞いなど来てくれずそのまま孤独死という悲惨な死を遂げる。 そんな悲惨な死に方に女神は同情したのか、頼んでもいないのに俺、猫屋敷出雲《ねこやしきいずも》を勝手に転生させる。転生後の世界はレベルという概念がある世界だった。 しかし女神の手違いか俺のレベルはカンスト状態であった。さらに唯一無二のユニークスキル視認強奪《ストック》というチートスキルを持って転生する。 これはレベルの概念を超越しさらにはユニークスキルを持って転生した少年の物語である。 ※俺TUEEEEEEEE要素、ハーレム要素、チート要素、ロリ要素などテンプレ満載です。 ※小説家になろうでも投稿しています。

楽しくなった日常で〈私はのんびり出来たらそれでいい!〉

ミューシャル
ファンタジー
退屈な日常が一変、車に轢かれたと思ったらゲームの世界に。 生産や、料理、戦い、いろいろ楽しいことをのんびりしたい女の子の話。 ………の予定。 見切り発車故にどこに向かっているのかよく分からなくなります。 気まぐれ更新。(忘れてる訳じゃないんです) 気が向いた時に書きます。 語彙不足です。 たまに訳わかんないこと言い出すかもです。 こんなんでも許せる人向けです。 R15は保険です。 語彙力崩壊中です お手柔らかにお願いします。

魔法使いじゃなくて魔弓使いです

カタナヅキ
ファンタジー
※派手な攻撃魔法で敵を倒すより、矢に魔力を付与して戦う方が燃費が良いです 魔物に両親を殺された少年は森に暮らすエルフに拾われ、彼女に弟子入りして弓の技術を教わった。それから時が経過して少年は付与魔法と呼ばれる古代魔術を覚えると、弓の技術と組み合わせて「魔弓術」という戦術を編み出す。それを知ったエルフは少年に出て行くように伝える。 「お前はもう一人で生きていける。森から出て旅に出ろ」 「ええっ!?」 いきなり森から追い出された少年は当てもない旅に出ることになり、彼は師から教わった弓の技術と自分で覚えた魔法の力を頼りに生きていく。そして彼は外の世界に出て普通の人間の魔法使いの殆どは攻撃魔法で敵を殲滅するのが主流だと知る。 「攻撃魔法は派手で格好いいとは思うけど……無駄に魔力を使いすぎてる気がするな」 攻撃魔法は凄まじい威力を誇る反面に術者に大きな負担を与えるため、それを知ったレノは攻撃魔法よりも矢に魔力を付与して攻撃を行う方が燃費も良くて効率的に倒せる気がした――

婚約破棄と領地追放?分かりました、わたしがいなくなった後はせいぜい頑張ってくださいな

カド
ファンタジー
生活の基本から領地経営まで、ほぼ全てを魔石の力に頼ってる世界 魔石の浄化には三日三晩の時間が必要で、この領地ではそれを全部貴族令嬢の主人公が一人でこなしていた 「で、そのわたしを婚約破棄で領地追放なんですね? それじゃ出ていくから、せいぜいこれからは魔石も頑張って作ってくださいね!」 小さい頃から搾取され続けてきた主人公は 追放=自由と気付く 塔から出た途端、暴走する力に悩まされながらも、幼い時にもらった助言を元に中央の大教会へと向かう 一方で愛玩され続けてきた妹は、今まで通り好きなだけ魔石を使用していくが…… ◇◇◇ 親による虐待、明確なきょうだい間での差別の描写があります (『嫌なら読むな』ではなく、『辛い気持ちになりそうな方は無理せず、もし読んで下さる場合はお気をつけて……!』の意味です) ◇◇◇ ようやく一区切りへの目処がついてきました 拙いお話ですがお付き合いいただければ幸いです

妻は従業員に含みません

夏菜しの
恋愛
 フリードリヒは貿易から金貸しまで様々な商売を手掛ける名うての商人だ。  ある時、彼はザカリアス子爵に金を貸した。  彼の見込みでは無事に借金を回収するはずだったが、子爵が病に倒れて帰らぬ人となりその目論見は見事に外れた。  だが返せる額を厳しく見極めたため、貸付金の被害は軽微。  取りっぱぐれは気に入らないが、こんなことに気を取られているよりは、他の商売に精を出して負債を補う方が建設的だと、フリードリヒは子爵の資産分配にも行かなかった。  しばらくして彼の元に届いたのは、ほんの少しの財と元子爵令嬢。  鮮やかな緑の瞳以外、まるで凡庸な元令嬢のリューディア。彼女は使用人でも従業員でも何でもするから、ここに置いて欲しいと懇願してきた。  置いているだけでも金を喰うからと一度は突っぱねたフリードリヒだが、昨今流行の厄介な風習を思い出して、彼女に一つの提案をした。 「俺の妻にならないか」 「は?」  金を貸した商人と、借金の形に身を売った元令嬢のお話。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。