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第六章 ~ロックロスの序曲~

91 似たタイプ

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「いやはや、流石に凄い魔力を感じますね。確かに僕は君達について何も知りません。だからこそ、アルカトラズ襲撃から約一年、君達をずっと追っていました。

しかしこれといった有力な情報が得られず、退屈過ぎたので今日はこうして訪れたのです。初めからこうしておくべきでした。まさかこれ程面白いことが起きているとは。
どういう訳で古代黒龍なんかがレイと一緒にいるのかも分かりませんが、君が晴れて魔力を扱える様になったと言うのは本当の事でしたね。その力ならば、いくつもの不可解な点が全て繋がりますよ。

ですが、その程度の力では到底リバースダンジョン等挑めないでしょう。それ以前に、Sランクになる事自体不可能です。しかもリバースダンジョンはそもそも見つけるのが困難ですが、恐らくそのドラゴンやフェアリー・イヴが何か知っているのでしょうが。それでも根本に実力がなければ元も子もない。

ロックロス家でありながら確かに不覚ですが、正直この一年で分かった事はそれぐらい。一番の疑問は、何故レイが異空間とやら探しているのかです。そのドラゴン達にそそのかされているのか、もしくは他の別の理由なのか。

本来であれば、我がロックロス家を追放された能無しの君に構う理由等一ミリも無いのですが、君が手に入れようとしている物が、余りに我々ロックロスとの関りが深いのです。最初は君を捉え拷問でもして吐かせればいいとも思っていましたが、フェアリー・イヴも絡んでいるとなるとこちらも少々面倒。厄介なんですよね。
それこそ全面戦争を起こすにも、こちらもそれなり準備をしないといけませんから利口とは言えません」

<……本当によく喋る。故に目障りだ>

ドーランが珍しく好戦的な態度を取る。
そっちがその気ならもうこのまま“始めてもいいぞ”と言わんばかりだ。

レイとドーラン、ヨハネとポセイドンが互いに睨み合う。
すると、ここでポセイドンが一歩前に出た。

「ヨハネ様どう致しますか? 一応本日は偵察という形でしたが、もしお気持ちが変わっている様でしたら如何ほどでも私は動けます」

そう言ったポセイドンは威嚇するように魔力を高め出した。

<そっちのデカい主は中々やる様だな。まぁたかが人間レベルでの話だが>

「噂でしか聞いたことがないが、千年決戦と呼ばれる戦いが本当に存在したのならば、貴様はそのたかが人間であるロックロス家に封印されたのだろう? ドラゴンよ。実体のない所を見ると更に現実味が増すな。王家ロックロスに負けた下等ドラゴンが」

普段は冷静なドーランであったが、これも竜の王としてのプライドなのか、はたまた同族嫌悪とでも言うべきか……ヨハネもポセイドンも第三者から見ると、自分の方が上だという人を見下した態度や口調や雰囲気が全面に溢れ出ているのである。

これがドーランにとっては兎に角癇に障る様子。
ここまで嫌味っぽくも傲慢な感じもないが、ドーラン、そしてイヴも、ある意味似たタイプと言えよう。

そして似ているが故に、それを相手にやられると非常に気に食わない。

<――よし。奴を食らう>

一切の迷いなくそう断言したドーランは、レイと出会ってから初めて自らが“直接攻撃”に出た――。

<先ずは丸焼きだ>

「は⁉ おいおい、ちょっと待ッ……『――ボオォォォォォンッ!!』

次の瞬間、レイの後ろに姿を現していたドーランが口を開くや否や、凄まじい業火の咆哮がやヨハネとポセイドンを襲った。

「「――⁉」」

ポセイドンは瞬時にヨハネを抱え、その炎を間一髪の所で躱した。

ドーランの炎の咆哮はそのまま研究所の扉を丸焦げにして突き破った。
直径2m弱の丸い穴が開いた研究所の正面。その開いた穴の縁は黒く焦げており、焼かれた匂いが辺りに充満していた。

<この姿じゃまともな攻撃も出来ぬか>

「まともに攻撃出来ないって……ドーラン、お前どんな攻撃出そうとしていたんだよ! 止めろよいきなり! ビックリするだろ!」

<突発的な行動はお互い様だ>

レイはこの時、「確かに」と強く納得した。

「……大丈夫でしたかヨハネ様」

「ええ、お陰で助かりました。伝説の古代黒龍……やはりかなり脅威ですね」

「確かに。古代黒龍の力は認めざる終えませんが、語り継がれた噂が本当であればあのドラゴンはまだ体がありません。もし抹殺するのであれば今がチャンスかと」

ポセイドンがヨハネに聞こえるぐらいの声でそう言った。
一瞬考える様な表情を見せたが、直ぐに元の不敵な笑顔に戻ったヨハネ。

「いえ。今はまだ様子見だけにしておきましょう。あのドラゴンがフェアリー・イヴの名に反応したという事は、やはり繋がりがあります。ここでレイ達を片付けるのは簡単ですが、“後の事”を考えて、奴らが何の目的で動いているのか把握するのが賢明です」

「かしこまりました。ではここら辺で一旦引き上げましょう」

「んー、少し待って下さい」

「――何をごちゃごちゃ話してやがる」

ヨハネとポセイドンが話していると、それをレイが遮った。

「ポセイドン、もう少し遊んでいきましょう。彼らが生きてられるのは僕達のお陰だとやはり分からせておいた方がいいです。ただ、決して殺しはしないで下さい。あくまでその実力差を分からせれば十分です」

「お安い御用です」

そう言うと、ポセイドンも再び魔力を高めて戦闘態勢に入った。

「やる気みたいだぜドーラン。しかもアイツ強いな……」

ポセイドンから感じる強い魔力。レイ達が戦ってきた相手の中でも群を抜いて強い。ポセイドンはそこから更に殺気を放つと、それを感じたランベル、ローラ、リエンナも反射的に身を構える体勢を取った。

「気をつけてリエンナ……アイツかなり強いわよ」

「ええ。その様ですね……」

四体一。
魔力を高めるポセイドンにレイ達も警戒を強める。
この緊迫した場で、ドーランが急に驚く事を口にした。

<やれやれ。向こうもやる気になってしまった様だな>

「ああ。でも遅かれ早かれ、いつかこういう日が来ることは分かっていたんだから問題無いだろ。思っていたより早かっただけの話さ」

<いや、問題大ありだ>

「何だよ、もうやり合う寸前なのに」

<まぁやるのは構わんが……お前達の実力ではまだ全然勝てぬぞ――>



「………………え??」


闘いの火蓋が切って落とされた――。
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