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第六章 ~ロックロスの序曲~

85 研究所

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~火の王国~

「――ってな訳で、取り敢えず次の入団試験は来月だから、その前に最後にクエスト行こうぜ」

「だから、最後かどうかまだ分からないじゃない」

「お前俺に落ちてほしいのか? あ! さては離れると聞いて寂しくなったんだろローラ」

「……」

笑い一切なし。
これでもかと冷酷な視線を向けるローラに、ランベルも「ハハハ」と苦笑いを返す事しか出来なかった。

「そうだな。ランベルが入団する前にもう一回クエスト行くか! 記念に」

どの道クエストを探しに来ていたレイ達は、ランベルの門出を祝うついでにクエストを探すのであった。

距離もそんなに遠くなく怪我等もしない様にと、余りランクの高くないDランクぐらいで探し、更に討伐系は避けた。

レイが徐に「コレでいいんじゃないか?」と出した一つのクエスト。それを確認したローラ達も頷き、無事クエストは決まったらしい。

「よし。じゃあ早速向かおうぜ」

「ここなら飛んで行けば直ぐね」

冒険者ギルドを出たレイ達は、クエストの依頼人がいる“研究所”へと向かった――。


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~火の王国・オペラタウン~

「――ここか」

王都フレイムから飛んで数分。オペラタウンという街に着いたレイ達。

「オペラタウンって、俺来るの始めてだな」

ランベルがそう言いながら物珍しそうに辺りを見ている。

「王都からそこまで離れていないから、そこそこ人もいるわねオペラタウンは。それに、商業が盛んだから色んなお店もあるわ。後でゆっくり買い物でもしましょうリエンナ」

「そうですね。楽しみです」

「早く依頼人の所行こうぜ」

レイがそう言い、クエストの依頼人がいると思われる研究所を目指した。

「研究所ってまた珍しいよな」

「ああ。何の研究しているんだろう? お化けとかかな」

「おい! 冗談でも言うんじゃないわよ」

余計な事を言うランベルに再びローラが起こった。
オペラタウンは先程ローラが言った通り、商業が盛んで色々な店が開いている。その為、人も勿論多いのだが、建物もまた多い。しかも割と密集しているせいで、道が入り組んでおり少しややこしい。

「どこだろうなこの研究所」

「人も店も密集しているから探しづらいな。誰かに聞いてみよう」

レイとランベルは近くのお店の人や通行人に研究所の場所を聞き、一行は何とか目的地である研究所に着くことが出来た。

「ふぅ……無事着いたな」

「辿り着いてみれば、“いかにも”って感じの建物だ」

レイ達の目の前にある研究所。そのが外観はまさしく研究所っぽい建物だった。全体は白色で、少し丸みを帯びた造り、何の研究をしているのか分からないが、煙突からは煙も上がり丸い窓も幾つか付いていた。

レイは、入り口と見られる正面にあった扉を数回叩き人を呼んだ。
ノックをした後に直ぐ中から声が聞こえ扉が開くと、これまた“如何にも研究してそうな人”が出迎えてくれた。

「はいはい! 何の御用ですか?」

年齢は二十代半ばぐらいだろうか。お洒落というか奇抜というか……変わった形の眼鏡を掛け、髪はアフロの様にモジャモジャ。スラっと伸びる背に長い手足。何かの研究をしていたのだろうか、手には不気味な色の液体が入ったグラスを持っており、膝辺りまである白い白衣を羽織っていた。

「クエストの依頼で来た、ハンターのレイです。依頼主の“Dr.ノムゲ”さんですか?」

「ああ~!博士が依頼したクエストの。すいません、私はDr.ノムゲの助手である“ジャック”と申します。博士は今ちょっと“出掛けて”おりまして……」

どうやら依頼主の博士は不在らしい。
助手のジャックが「どうぞ中に」と、レイ達を研究所の中へと招き入れてくれた。ジャックが言うのにはもう直ぐ博士が帰って来るとの事。

研究所の中は、研究や実験で使っている道具や機材で一杯だった。
だがそんな事よりも、さっきからレイ達はずっと“思っている”事があるのだが、それを中々言い出せずにいた。しかし、遂に限界がきたランベルが何の躊躇もなく口を開いた。

「――臭ぇなここ!」

そう。
何の匂いかは分からないが、ジャックが扉を開いて現れた瞬間からずっとこの強烈な臭いがしていたのだ。

「ちょっと、 失礼でしょアンタ!(確かにずっと思ってたけど……)」

「いや、流石にコレは臭過ぎる。まるでウ〇コだ」

――ガンッ!
ランベルの発言にローラの拳がすかさず襲い掛かった。だが、皆口にしないだけで、思いは全くランベルと同じであった。

「ハハハハ! いや~悪いね。ここにはお客さんなんて滅多に来ないし、タイミングが悪い事に丁度“実験中”だったんだよね」

バツが悪そうに笑いながら言うジャック。

「こんな臭ぇ実験って何してるんだ?」

「ランベル。アンタもう少し言葉気を付けなさいよ」

「いいよいいよ、彼の言う通りだし。これは今ね、まさに君の言う通り、“ウ〇コ”の実験さ!」

「いやウ〇コなのかよ!」

「ローラさん、そんなハッキリ言葉にしなくても……」

予想外のジャックの言葉に、思わずツッコミを入れてまったローラ。

「ゲぇ~、やっぱりな。 最悪だ!どうにかしてくれよこの臭い」

失礼かに思えたランベルの発言は正解ど真ん中だったらしい。
いつの間にかレイもローラもリエンナも……余りの臭いに鼻をつまんでいた。

それを見たジャックも慌てて動き出し、何やら機械のスイッチを押すや否やその機会も動き出し、次第に臭いが消えていった。
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