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第六章 ~ロックロスの序曲~
84 動き出した刺客
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~火の王国・ロックロス家~
実の息子であるレイ・ロックロスを追放。そして前代未聞である、アルカトラズ襲撃事件から約十ヵ月後――。
いつもと変わりのない日々。
ロックロス家の使用人や家来達は、城のあちこちで各々の仕事をこなしていた。
普段通りの一日。
そんな中、ある一人の家来が早歩きで歩いていた。
忙しなく城内を歩き続けていたその家来は、足を止めることなく最短距離で、キャバル王の元へと向かっていた。
「――失礼します」
その家来がキャバルのいる部屋へ着くや否や、慌ただしい様子で声を掛けた。
「どうした?」
「……」
部屋にはキャバルと“現”息子であるヨハネの姿が。
「極秘で調査を進めていた件に新たな動きがあった模様です」
「まだ生きていたか。忌々しい奴だ」
「“対象”であるレイ・ロックロスとその仲間……「奴にその名をつけるな。もうとっくにロックロス家の人間ではないのだからな」
報告をする家来に睨みを効かせるキャバル。その視線はとても冷酷であると同時に、“二度目は無い”とも物語っていた。
察した家来は直ちに訂正し、再び報告を続けた。
「し、失礼いたしましたッ! レ、レイを含めた彼等四人は、現在Bランクが二人、Cランクが二人。以前に目撃情報がありましたリバースオークションでも、会場付近で確認されたものの中には入れなかった模様。その後も調査班がずっと見張っていましたが、これといって不審な動きは見られませんでした。
しかし、どうやら仲間の一人が騎士団の入団試験を受けるとの事です。大した問題ではありませんが一応の報告となります。それから……」
ここまで淡々と報告を済ませた家来が少し口籠った。
「“当初”のヨハネ様の予想通り、どうやら彼等はリバースダンジョンを目指している様です。これといった動きが無いのは、リバースダンジョンの条件であるSランクを目指しているからだと思われます」
「成程な……。どこで情報を得たか知らんが、あのゴミが異空間を探し出そうとしているのは本当の様だヨハネ。お前の予想通りだ。流石だな」
「ありがとうございます父上」
「異空間なんて本当に存在するのか? 使ってる俺ですらそんなの知らないぞ。だが本当にそんなものが存在するのならば厄介だ。ガキ共より異空間の情報は何か得たのか?」
「いえ。それに関しましては進展がありません。リバースダンジョンが関係しているという事と、フェアリー・イヴが何かを知っていると言う情報しか集まっていないのです」
「全く。調査の奴らは何をやってるんだ。使えんな。ヨハネ、何かいい手はあるか?」
キャバルは笑いながら、溺愛するヨハネの意見を聞いた。
「そうですね。この約一年の行動から予測するに、やはり異空間を見つける為にリバースダンジョンを、そしてSランクを目指していると思います。ですが、そもそもSランク自体なるのが極めて難しいです。そんな事はハンター以外の一般人でも分かる事です。となれば、レイ達もそれ相応の実力がなければ当たり前にSランクになる事は出来ません。それよりも、全てを知っているであろうフェアリー・イヴに一度接触を試みるのが最善かと。
いきなりフェアリー・イブを捉えるのは難しいですが、いくら妖精王でも命あるもの終わりがあります。今のイヴの実力を知るのも重要ですし、最悪イヴが口を割らなくても、他の弱い妖精達を捉えて吐かせればいいだけです。何か知っているかもしれません。
そこで父上、一つご相談なのですが……」
「何だ? 何でも遠慮せずに言ってみろ」
「はい。ありがとうございます。それでは、最高位王家に仕える、“聖十三護衛王団”の指揮権を任せて頂けますでしょうか」
『聖十三護衛王団』
最高位王家に仕える実力者達。全部で十三人存在するウルエンド最後の門番的存在。その実力は当然強く、ハンターランクで表せば全員がSランク同等の強さを持つと言われている。
古より、何よりも王家に忠誠を誓い、命に代えてでも護衛するのが彼等、聖十三護衛王団の務めなのである。
「護衛王団か……成程な。良かろう。ヨハネ、お前の思うがまま好きにやってみよ」
「ありがとうございます父上。でしたら、幾ら我がロックロス家に逆らう者はいないといえ、護衛王団は他の最高位王家にも関わってきます。急に動くとなると、内密に進めているこの件が少なからず漏れる心配があります。なので今回はその中の一人だけ動かそうと思っております。確かめるまでもありませんが、レイ達の実力も一度見ておこうと思いますので」
「そうかそうか。まぁ何でも良い。兎に角お前のやりたい様にやれ! 次にこの世界を統べるのはお前の役目なのだからなヨハネよ!」
「ありがとうございます」
ヨハネの思惑によりレイ達に忍び寄る影。
自分に見向きもしなかったロックロス家が、思いもよらぬ形で自身に迫っている事に気付く筈もないレイと一行。
想像以上に手強いヨハネと護衛王団に、レイ達が壊滅的な危機に襲われるなど、この時はまだ予想だにしていなかった――。
~火の王国・ロックロス家~
実の息子であるレイ・ロックロスを追放。そして前代未聞である、アルカトラズ襲撃事件から約十ヵ月後――。
いつもと変わりのない日々。
ロックロス家の使用人や家来達は、城のあちこちで各々の仕事をこなしていた。
普段通りの一日。
そんな中、ある一人の家来が早歩きで歩いていた。
忙しなく城内を歩き続けていたその家来は、足を止めることなく最短距離で、キャバル王の元へと向かっていた。
「――失礼します」
その家来がキャバルのいる部屋へ着くや否や、慌ただしい様子で声を掛けた。
「どうした?」
「……」
部屋にはキャバルと“現”息子であるヨハネの姿が。
「極秘で調査を進めていた件に新たな動きがあった模様です」
「まだ生きていたか。忌々しい奴だ」
「“対象”であるレイ・ロックロスとその仲間……「奴にその名をつけるな。もうとっくにロックロス家の人間ではないのだからな」
報告をする家来に睨みを効かせるキャバル。その視線はとても冷酷であると同時に、“二度目は無い”とも物語っていた。
察した家来は直ちに訂正し、再び報告を続けた。
「し、失礼いたしましたッ! レ、レイを含めた彼等四人は、現在Bランクが二人、Cランクが二人。以前に目撃情報がありましたリバースオークションでも、会場付近で確認されたものの中には入れなかった模様。その後も調査班がずっと見張っていましたが、これといって不審な動きは見られませんでした。
しかし、どうやら仲間の一人が騎士団の入団試験を受けるとの事です。大した問題ではありませんが一応の報告となります。それから……」
ここまで淡々と報告を済ませた家来が少し口籠った。
「“当初”のヨハネ様の予想通り、どうやら彼等はリバースダンジョンを目指している様です。これといった動きが無いのは、リバースダンジョンの条件であるSランクを目指しているからだと思われます」
「成程な……。どこで情報を得たか知らんが、あのゴミが異空間を探し出そうとしているのは本当の様だヨハネ。お前の予想通りだ。流石だな」
「ありがとうございます父上」
「異空間なんて本当に存在するのか? 使ってる俺ですらそんなの知らないぞ。だが本当にそんなものが存在するのならば厄介だ。ガキ共より異空間の情報は何か得たのか?」
「いえ。それに関しましては進展がありません。リバースダンジョンが関係しているという事と、フェアリー・イヴが何かを知っていると言う情報しか集まっていないのです」
「全く。調査の奴らは何をやってるんだ。使えんな。ヨハネ、何かいい手はあるか?」
キャバルは笑いながら、溺愛するヨハネの意見を聞いた。
「そうですね。この約一年の行動から予測するに、やはり異空間を見つける為にリバースダンジョンを、そしてSランクを目指していると思います。ですが、そもそもSランク自体なるのが極めて難しいです。そんな事はハンター以外の一般人でも分かる事です。となれば、レイ達もそれ相応の実力がなければ当たり前にSランクになる事は出来ません。それよりも、全てを知っているであろうフェアリー・イヴに一度接触を試みるのが最善かと。
いきなりフェアリー・イブを捉えるのは難しいですが、いくら妖精王でも命あるもの終わりがあります。今のイヴの実力を知るのも重要ですし、最悪イヴが口を割らなくても、他の弱い妖精達を捉えて吐かせればいいだけです。何か知っているかもしれません。
そこで父上、一つご相談なのですが……」
「何だ? 何でも遠慮せずに言ってみろ」
「はい。ありがとうございます。それでは、最高位王家に仕える、“聖十三護衛王団”の指揮権を任せて頂けますでしょうか」
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最高位王家に仕える実力者達。全部で十三人存在するウルエンド最後の門番的存在。その実力は当然強く、ハンターランクで表せば全員がSランク同等の強さを持つと言われている。
古より、何よりも王家に忠誠を誓い、命に代えてでも護衛するのが彼等、聖十三護衛王団の務めなのである。
「護衛王団か……成程な。良かろう。ヨハネ、お前の思うがまま好きにやってみよ」
「ありがとうございます父上。でしたら、幾ら我がロックロス家に逆らう者はいないといえ、護衛王団は他の最高位王家にも関わってきます。急に動くとなると、内密に進めているこの件が少なからず漏れる心配があります。なので今回はその中の一人だけ動かそうと思っております。確かめるまでもありませんが、レイ達の実力も一度見ておこうと思いますので」
「そうかそうか。まぁ何でも良い。兎に角お前のやりたい様にやれ! 次にこの世界を統べるのはお前の役目なのだからなヨハネよ!」
「ありがとうございます」
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自分に見向きもしなかったロックロス家が、思いもよらぬ形で自身に迫っている事に気付く筈もないレイと一行。
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