上 下
85 / 112
第六章 ~ロックロスの序曲~

84 動き出した刺客

しおりを挟む
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
~火の王国・ロックロス家~


実の息子であるレイ・ロックロスを追放。そして前代未聞である、アルカトラズ襲撃事件から約十ヵ月後――。

いつもと変わりのない日々。
ロックロス家の使用人や家来達は、城のあちこちで各々の仕事をこなしていた。

普段通りの一日。

そんな中、ある一人の家来が早歩きで歩いていた。
忙しなく城内を歩き続けていたその家来は、足を止めることなく最短距離で、キャバル王の元へと向かっていた。

「――失礼します」

その家来がキャバルのいる部屋へ着くや否や、慌ただしい様子で声を掛けた。

「どうした?」

「……」

部屋にはキャバルと“現”息子であるヨハネの姿が。

「極秘で調査を進めていた件に新たな動きがあった模様です」

「まだ生きていたか。忌々しい奴だ」

「“対象”であるレイ・ロックロスとその仲間……「奴にその名をつけるな。もうとっくにロックロス家の人間ではないのだからな」

報告をする家来に睨みを効かせるキャバル。その視線はとても冷酷であると同時に、“二度目は無い”とも物語っていた。
察した家来は直ちに訂正し、再び報告を続けた。

「し、失礼いたしましたッ! レ、レイを含めた彼等四人は、現在Bランクが二人、Cランクが二人。以前に目撃情報がありましたリバースオークションでも、会場付近で確認されたものの中には入れなかった模様。その後も調査班がずっと見張っていましたが、これといって不審な動きは見られませんでした。
しかし、どうやら仲間の一人が騎士団の入団試験を受けるとの事です。大した問題ではありませんが一応の報告となります。それから……」

ここまで淡々と報告を済ませた家来が少し口籠った。

「“当初”のヨハネ様の予想通り、どうやら彼等はリバースダンジョンを目指している様です。これといった動きが無いのは、リバースダンジョンの条件であるSランクを目指しているからだと思われます」

「成程な……。どこで情報を得たか知らんが、あのゴミが異空間を探し出そうとしているのは本当の様だヨハネ。お前の予想通りだ。流石だな」

「ありがとうございます父上」

「異空間なんて本当に存在するのか? 使ってる俺ですらそんなの知らないぞ。だが本当にそんなものが存在するのならば厄介だ。ガキ共より異空間の情報は何か得たのか?」

「いえ。それに関しましては進展がありません。リバースダンジョンが関係しているという事と、フェアリー・イヴが何かを知っていると言う情報しか集まっていないのです」

「全く。調査の奴らは何をやってるんだ。使えんな。ヨハネ、何かいい手はあるか?」

キャバルは笑いながら、溺愛するヨハネの意見を聞いた。

「そうですね。この約一年の行動から予測するに、やはり異空間を見つける為にリバースダンジョンを、そしてSランクを目指していると思います。ですが、そもそもSランク自体なるのが極めて難しいです。そんな事はハンター以外の一般人でも分かる事です。となれば、レイ達もそれ相応の実力がなければ当たり前にSランクになる事は出来ません。それよりも、全てを知っているであろうフェアリー・イヴに一度接触を試みるのが最善かと。

いきなりフェアリー・イブを捉えるのは難しいですが、いくら妖精王でも命あるもの終わりがあります。今のイヴの実力を知るのも重要ですし、最悪イヴが口を割らなくても、他の弱い妖精達を捉えて吐かせればいいだけです。何か知っているかもしれません。
そこで父上、一つご相談なのですが……」

「何だ? 何でも遠慮せずに言ってみろ」

「はい。ありがとうございます。それでは、最高位王家に仕える、“聖十三護衛王団”の指揮権を任せて頂けますでしょうか」


『聖十三護衛王団』
最高位王家に仕える実力者達。全部で十三人存在するウルエンド最後の門番的存在。その実力は当然強く、ハンターランクで表せば全員がSランク同等の強さを持つと言われている。
古より、何よりも王家に忠誠を誓い、命に代えてでも護衛するのが彼等、聖十三護衛王団の務めなのである。


「護衛王団か……成程な。良かろう。ヨハネ、お前の思うがまま好きにやってみよ」

「ありがとうございます父上。でしたら、幾ら我がロックロス家に逆らう者はいないといえ、護衛王団は他の最高位王家にも関わってきます。急に動くとなると、内密に進めているこの件が少なからず漏れる心配があります。なので今回はその中の一人だけ動かそうと思っております。確かめるまでもありませんが、レイ達の実力も一度見ておこうと思いますので」

「そうかそうか。まぁ何でも良い。兎に角お前のやりたい様にやれ! 次にこの世界を統べるのはお前の役目なのだからなヨハネよ!」

「ありがとうございます」

ヨハネの思惑によりレイ達に忍び寄る影。
自分に見向きもしなかったロックロス家が、思いもよらぬ形で自身に迫っている事に気付く筈もないレイと一行。

想像以上に手強いヨハネと護衛王団に、レイ達が壊滅的な危機に襲われるなど、この時はまだ予想だにしていなかった――。
しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

私のスローライフはどこに消えた??  神様に異世界に勝手に連れて来られてたけど途中攫われてからがめんどくさっ!

魔悠璃
ファンタジー
タイトル変更しました。 なんか旅のお供が増え・・・。 一人でゆっくりと若返った身体で楽しく暮らそうとしていたのに・・・。 どんどん違う方向へ行っている主人公ユキヤ。 R県R市のR大学病院の個室 ベットの年配の女性はたくさんの管に繋がれて酸素吸入もされている。 ピッピッとなるのは機械音とすすり泣く声 私:[苦しい・・・息が出来ない・・・] 息子A「おふくろ頑張れ・・・」 息子B「おばあちゃん・・・」 息子B嫁「おばあちゃん・・お義母さんっ・・・」 孫3人「いやだぁ~」「おばぁ☆☆☆彡っぐ・・・」「おばあちゃ~ん泣」 ピーーーーー 医師「午後14時23分ご臨終です。」 私:[これでやっと楽になれる・・・。] 私:桐原悠稀椰64歳の生涯が終わってゆっくりと永遠の眠りにつけるはず?だったのに・・・!! なぜか異世界の女神様に召喚されたのに、 なぜか攫われて・・・ 色々な面倒に巻き込まれたり、巻き込んだり 事の発端は・・・お前だ!駄女神めぇ~!!!! R15は保険です。

無属性魔術師、最強パーティの一員でしたが去りました。

ぽてさら
ファンタジー
 ヴェルダレア帝国に所属する最強冒険者パーティ『永遠の色調《カラーズ・ネスト》』は強者が揃った世界的にも有名なパーティで、その名を知らぬ者はいないとも言われるほど。ある事情により心に傷を負ってしまった無属性魔術師エーヤ・クリアノートがそのパーティを去っておよそ三年。エーヤは【エリディアル王国】を拠点として暮らしていた。  それからダンジョン探索を避けていたが、ある日相棒である契約精霊リルからダンジョン探索を提案される。渋々ダンジョンを探索しているとたった一人で魔物を相手にしている美少女と出会う。『盾の守護者』だと名乗る少女にはある目的があって―――。  個の色を持たない「無」属性魔術師。されど「万能の力」と定義し無限の可能性を創造するその魔術は彼だけにしか扱えない。実力者でありながら凡人だと自称する青年は唯一無二の無属性の力と仲間の想いを胸に再び戦場へと身を投げ出す。  青年が扱うのは無属性魔術と『罪』の力。それらを用いて目指すのは『七大迷宮』の真の踏破。

邪神降臨~言い伝えの最凶の邪神が現れたので世界は終わり。え、その邪神俺なの…?~

きょろ
ファンタジー
村が魔物に襲われ、戦闘力“1”の主人公は最下級のゴブリンに殴られ死亡した。 しかし、地獄で最強の「氣」をマスターした彼は、地獄より現世へと復活。 地獄での十万年の修行は現世での僅か十秒程度。 晴れて伝説の“最凶の邪神”として復活した主人公は、唯一無二の「氣」の力で世界を収める――。

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

【悲報】人気ゲーム配信者、身に覚えのない大炎上で引退。~新たに探索者となり、ダンジョン配信して最速で成り上がります~

椿紅颯
ファンタジー
目標である登録者3万人の夢を叶えた葭谷和昌こと活動名【カズマ】。 しかし次の日、身に覚えのない大炎上を経験してしまい、SNSと活動アカウントが大量の通報の後に削除されてしまう。 タイミング良くアルバイトもやめてしまい、完全に収入が途絶えてしまったことから探索者になることを決める。 数日間が経過し、とある都市伝説を友人から聞いて実践することに。 すると、聞いていた内容とは異なるものの、レアドロップ&レアスキルを手に入れてしまう! 手に入れたものを活かすため、一度は去った配信業界へと戻ることを決める。 そんな矢先、ダンジョンで狩りをしていると少女達の危機的状況を助け、しかも一部始終が配信されていてバズってしまう。 無名にまで落ちてしまったが、一躍時の人となり、その少女らとパーティを組むことになった。 和昌は次々と偉業を成し遂げ、底辺から最速で成り上がっていく。

神から最強の武器をもらったのに無双出来ないんですが!

半袖高太郎
ファンタジー
神が死に絶えた世界。 人の世になった世界で誕生した「勇者」と「魔王」 勇者は果敢な冒険を! 魔王は力で覇を唱える! 仲間たちとの冒険! 大軍勢での侵略! 神秘的な世界! 美しき姫とのロマンス! 勇者と魔王は世界の端から互いを目指して突き進む! 勝利を! 愛を手に入れるため! ……なんて、簡単な話だったらどれだけよかっただろう。 ——これは世界を巻き込んだ愛する人の奪い合い。

クラス転移したからクラスの奴に復讐します

wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。 ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。 だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。 クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。 まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。 閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。 追伸、 雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。 気になった方は是非読んでみてください。

無限初回ログインボーナスを貰い続けて三年 ~辺境伯となり辺境領地生活~

桜井正宗
ファンタジー
 元恋人に騙され、捨てられたケイオス帝国出身の少年・アビスは絶望していた。資産を奪われ、何もかも失ったからだ。  仕方なく、冒険者を志すが道半ばで死にかける。そこで大聖女のローザと出会う。幼少の頃、彼女から『無限初回ログインボーナス』を授かっていた事実が発覚。アビスは、三年間もの間に多くのログインボーナスを受け取っていた。今まで気づかず生活を送っていたのだ。  気づけばSSS級の武具アイテムであふれかえっていた。最強となったアビスは、アイテムの受け取りを拒絶――!?

処理中です...