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第六章 ~ロックロスの序曲~

83 ランベルの申し出

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~火の王国~


「――もうすぐ“一年”か」

「早いわね」

レイ、ローラ、ランベル、リエンナの四人は、今日も冒険者ギルドへと足を運んでいた。
椅子に腰を掛けながら、レイ達は少しばかり思い出話に花を咲かせていた。

「四人で過ごす様になってもうそんなに経つのか」

「少し振り返っただけでも、色々思い出がありますね」

「そうね。色々あり過ぎて覚えていないわ」

レイ達がグニ―島で宝探しをした日から早くも半年以上が経った。
あれから、ズロースはお宝の金貨を売ってウニベル草の資金にしようとしたが、この際、リバースオークションに出品した方が高値が付くのではないかと皆で話し合った。

結果、ズロースのご先祖様が見守ってくれていたのだろうか、リバースオークションの取引は驚く程上手くいき、手に入れた金貨はレイ達が思ってた以上の額で取引された。
そして図らずも、ボスの情報通りウニベル草が出品され、噂通りの高額取引となったが、見事ズロースが手に入れた。

だが、手に入れるのはあくまで前段階。いくらウニベル草でも全ての病が治るかどうかは分からなかった。
一旦ズロースと別れたレイ達であったが、その日から数日後に届いたズロースの知らせで、四人は大声を出しながらとても喜んだらしい――。

「……取り敢えずさ、この先どうする? 未だにレイが探す異空間の情報はそれっきりない。予定通りリバースダンジョンのアイテムとやらを集めるしかないが、全員Sランクにはまだ程遠いな」

「着実に実績は重ねてきているけどね。そもそもSランクなんて一握りだから、こればっかりは急いでも仕方ないわ」

「確かにな……後どれぐらいかかるんだろう。別に急いでる訳じゃないからいいんだけど」

そんな事を皆で話し合っていると、ランベルが珍しく真面目な顔で話を始めた。

「実はその事なんだけどさ……」

「どうした?」

いつものランベルとは勝手が違い、何かバツが悪そうな顔をした後、その続きを話し始めた。

「少し前からちょっと考えていたことがあって……これは決定じゃなくて寧ろ皆の意見を聞きたいんだけど……」

「何? そんな言いにくい事なの? 早く用件を言いなさいよ」

「焦らすなよ。別に言いにくい事なんかねぇ。あのな、俺この間ハンターランクがBに上がっただろ? だからさ、まだ全員Sランクには時間が掛かるから、もし迷惑じゃなければ先に“騎士団入団試験”を受けたいと思ってるんだ」

「――!」

ランベルの話を聞いたレイ、ローラ、リエンナは一瞬驚いた。勿論、三人共ランベルの夢を知っている。
驚いたと言うのは、確かに今初めてランベルの口から聞かされた訳だが、急に聞かされたから驚いているのではなく、最早三人にとって“自分の事の様”にまで思っている話を、わざわざ躊躇って言ってきた事に対してだった。

しかも普段細かい事を気にしないランベルがだ。
もっと深刻で重大な悩みでもあるのかと、拍子抜けしたと言っても過言ではない。

一応ランベルなりの気遣いという事は三人共当然分かっている。
だからこそ三人は、何でそんな事で口ごもっていたんだという事に一瞬驚いていたのだ。
もっと他の所で気を効かせろよと。

「……まさか焦らしといてそれだけじゃないわよね?」

「それだけって何だよ! パーティ組んでるんだから俺一人じゃ決められないだろ!」

予想外のリアクションにランベルも気が抜けた。
さっきまでの雰囲気から一転、いつのランベルに戻った様だ。

「深刻そうな顔して話し出すから何事かと思えば。いいじゃない受けてくれば」

「そうですね。ランベルさんの夢への第一歩ですから。誰も文句はないですよ」

「へ? そんなあっさりなの? いや、いいなら別にそれはそれで嬉しいんだけどさ」

「反対してほしい訳?」

「違うって。ただ騎士団入ったら、“最初の一年”は騎士団の任務だけをこなさないといけないだろ?」

「あ、そう言えばそうだったわね」

今のランベルの発言で、ローラはあっと思い出したかの様に言った。

そう。
もし、騎士団入団試験合格し、晴れて騎士団員となった場合、ランベルの言った通り最初の一年は騎士団の任務しか行う事が出来ないのだ。

それ以降は個人の自由で、騎士団以外にパーティやクエストを行ってもいい決まりになっている。
しかし、当然メインは騎士団となる為、優先されるのは騎士団の任務やクエストとなるのだ。

珍しくランベルが気を遣うのも頷ける。
もしランベルが騎士団に入れば、少なからず制限が掛かかる事になり、一緒に行動出来ない場合もあり得るからだ。

改めて考え、「確かにね……」と少し考え出したローラだが、そんな事はお構いなしに、レイがランベルに言い放った。


「――受けて来いよランベル! 俺はお前の邪魔を絶対にしたくない。五年でも十年でも、俺は別に困らないからさ!」

そう笑顔で言ったレイ。その表情はまるで混じりがない、心からのレイの本音だった。
レイの言葉で決意が固まったのか、ランベルもスッキリた表情で返事を返した。

「分かった。じゃあちょっくら騎士団入団試験受けてくるぜ!」

「レイがそう言うなら行ってきなさいよ。そもそも受かるか分からないし」

「何だとローラお前!」

「フフフ。ランベルさんならきっと大丈夫ですよ」

いつもの様に冗談を交えながらも、ランベルは騎士団の入団試験を受ける事を決意した。
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