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第四章 ~幽霊屋敷(ゴーストハウス)編~
68 何気ない一日
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「―そうだ!そういえばあの子達誰なんだよレイ。しっかり説明して……って、あの子達何か体変じゃねぇか⁉ 大丈夫かお前ら!」
そう。
再びレイ達の前に現れたルークとネルは体が透け、徐々に消えかかっていたのだ。
「ルーク、ネル……」
レイ達は少し不安そうな表情でルーク達を見たが、それに反してルークとネルはとても嬉しそうな表情をしていた。
「お兄ちゃん達ありがとう!アイツが消えたお陰で全部思い出したよ」
「私もルークも、パパやママ達も、全部あの黒い影が犯人だったの。凄く前に……まだ私達がこの屋敷に引っ越してきたばかりの頃は普通だったんだよ。でもね、ある日ママが急に体の具合が悪くなって、そこから変な事ばかり起きる様になったの」
思い出したルークとネルは全てを話してくれた。
体調不良になったママは段々と様子が可笑しくなっていき、屋敷でもパパや他の兄妹達も黒い影を見るようになったと。
その後ママの体調は原因不明のまま治る事がなくずっと寝たきりになり、パパや他の兄妹……そしてルークとネルも同じようになっていったという―。
始めは屋敷に来ていた医者や関係者も、この屋敷を訪れた次の日から次々に身の回りで不幸や災難が起こり、噂が噂を呼んだ結果、いつの間にか誰も寄り付かなくなってしまったらしい。
助けが来ず、また呼ぶことも出来ず、ルーク達家族はそのままこの屋敷……グリムリーパーに囚われてしまったのだった―。
最後の力を振り絞りパパが色々調べた結果、このグリムリーパーという存在に辿り着いた為何とか逃げようとしたのだが、その時にはもう遅かった……。
逃げる程の体力も残っておらず、何とか子供達だけでも非難させようとしたパパであったが、グリムリーパーに逃げる事を感づかれ皆奴に捕まってしまったという。
ルークとネルの最後の記憶はそんなグリムリーパーから逃げているところだった―。
そして、ルークとネルが目を覚まし気か付いた時には数十年後のこの屋敷。
ルークとネル以外の家族の姿は無く、屋敷のあちこちに埃が溜まり壁や天井には蜘蛛の巣が張っていた。
目を覚ました時にはその最後の記憶だけが頭にあり、皆が何処へ行ってしまったかは分からない。
何度か屋敷に人が訪ねてくるも、誰もルークとネルに気付かなかった。声を出しても聞こえない。触れようとしても触れられない。
何年もこの屋敷を彷徨っていた時に、レイ達が現れた。
グリムリーパーが消滅し“死して尚、幻覚の中に囚われていた”ルークとネルの魂は、遂に家族の元へと旅立てる時がやって来たのだ。
話を聞いていたレイ達の目にはいつからか涙が―。
「……何で泣いてるのお兄ちゃん達?僕とネルはお兄ちゃん達のお陰でこれから家族に会えるんだよ!」
「そうそう!パパもママも、ネル達のお兄ちゃんとお姉ちゃんもネルとルークの事呼んでるから大丈夫!皆を見つけてくれてありがとう!」
涙と嗚咽が止まらない―。
事情が分からなかったレイやローラは勿論、ルークとネルの話を聞き全て理解したランベルとリエンナもただただ泣いていた。
辛かっただろう……寂しかっただろう……。
とても想像できるような事ではない。ましてや気持ちを理解してあげる事などきっと誰にも出来ない。
だが、ここでレイ達が出会ったのも何かの巡り合わせ―。
レイは鼻を啜りグッと涙を堪えた。
自分より幼いルークとネルは泣いていない。それどころかレイ達に感謝し、純真無垢な笑顔で見ている。
確かに起こった事は悲しいが、ルークとネルにとっては待ちわびた瞬間なのかも知れない―。
消えて行く小さな体に向かって、レイも笑顔で声を掛けた。
「……ルーク!ネル!これで家族に会えるんだろ?良かったな!」
「うん!ありがとう!」
「お兄ちゃん達に会えて良かった!」
「俺も……二人に会えて楽しかった。色々案内してくれてありがとな!」
「また遊ぼうね!」
「おう!またな!」
そう言った直後、ルークとネルの体は完全に消えていってしまった―。
薄暗かった幽霊屋敷の窓からは暖かい日差しが降り注ぐ。
雲一つない快晴。
レイはにっこりと笑い、窓の外を見上げた。
「皆会えたかな……」
<今頃会っているさきっとな>
そんなレイの問いかけにルークとネルが答えるかの様に……開けた窓から心地よい風が吹いてきた―。
「――さて。……それじゃあ帰ろうぜ皆!」
こうして、レイ達の何とも不思議な出来事は幕を閉じた。
いつもと変わらない一日。
いつもと変わらないクエスト。
だが、今日という日は少し特別で少し悲しくて、とても素敵な出会いがあった……そんな何気ない一日であった―。
そう。
再びレイ達の前に現れたルークとネルは体が透け、徐々に消えかかっていたのだ。
「ルーク、ネル……」
レイ達は少し不安そうな表情でルーク達を見たが、それに反してルークとネルはとても嬉しそうな表情をしていた。
「お兄ちゃん達ありがとう!アイツが消えたお陰で全部思い出したよ」
「私もルークも、パパやママ達も、全部あの黒い影が犯人だったの。凄く前に……まだ私達がこの屋敷に引っ越してきたばかりの頃は普通だったんだよ。でもね、ある日ママが急に体の具合が悪くなって、そこから変な事ばかり起きる様になったの」
思い出したルークとネルは全てを話してくれた。
体調不良になったママは段々と様子が可笑しくなっていき、屋敷でもパパや他の兄妹達も黒い影を見るようになったと。
その後ママの体調は原因不明のまま治る事がなくずっと寝たきりになり、パパや他の兄妹……そしてルークとネルも同じようになっていったという―。
始めは屋敷に来ていた医者や関係者も、この屋敷を訪れた次の日から次々に身の回りで不幸や災難が起こり、噂が噂を呼んだ結果、いつの間にか誰も寄り付かなくなってしまったらしい。
助けが来ず、また呼ぶことも出来ず、ルーク達家族はそのままこの屋敷……グリムリーパーに囚われてしまったのだった―。
最後の力を振り絞りパパが色々調べた結果、このグリムリーパーという存在に辿り着いた為何とか逃げようとしたのだが、その時にはもう遅かった……。
逃げる程の体力も残っておらず、何とか子供達だけでも非難させようとしたパパであったが、グリムリーパーに逃げる事を感づかれ皆奴に捕まってしまったという。
ルークとネルの最後の記憶はそんなグリムリーパーから逃げているところだった―。
そして、ルークとネルが目を覚まし気か付いた時には数十年後のこの屋敷。
ルークとネル以外の家族の姿は無く、屋敷のあちこちに埃が溜まり壁や天井には蜘蛛の巣が張っていた。
目を覚ました時にはその最後の記憶だけが頭にあり、皆が何処へ行ってしまったかは分からない。
何度か屋敷に人が訪ねてくるも、誰もルークとネルに気付かなかった。声を出しても聞こえない。触れようとしても触れられない。
何年もこの屋敷を彷徨っていた時に、レイ達が現れた。
グリムリーパーが消滅し“死して尚、幻覚の中に囚われていた”ルークとネルの魂は、遂に家族の元へと旅立てる時がやって来たのだ。
話を聞いていたレイ達の目にはいつからか涙が―。
「……何で泣いてるのお兄ちゃん達?僕とネルはお兄ちゃん達のお陰でこれから家族に会えるんだよ!」
「そうそう!パパもママも、ネル達のお兄ちゃんとお姉ちゃんもネルとルークの事呼んでるから大丈夫!皆を見つけてくれてありがとう!」
涙と嗚咽が止まらない―。
事情が分からなかったレイやローラは勿論、ルークとネルの話を聞き全て理解したランベルとリエンナもただただ泣いていた。
辛かっただろう……寂しかっただろう……。
とても想像できるような事ではない。ましてや気持ちを理解してあげる事などきっと誰にも出来ない。
だが、ここでレイ達が出会ったのも何かの巡り合わせ―。
レイは鼻を啜りグッと涙を堪えた。
自分より幼いルークとネルは泣いていない。それどころかレイ達に感謝し、純真無垢な笑顔で見ている。
確かに起こった事は悲しいが、ルークとネルにとっては待ちわびた瞬間なのかも知れない―。
消えて行く小さな体に向かって、レイも笑顔で声を掛けた。
「……ルーク!ネル!これで家族に会えるんだろ?良かったな!」
「うん!ありがとう!」
「お兄ちゃん達に会えて良かった!」
「俺も……二人に会えて楽しかった。色々案内してくれてありがとな!」
「また遊ぼうね!」
「おう!またな!」
そう言った直後、ルークとネルの体は完全に消えていってしまった―。
薄暗かった幽霊屋敷の窓からは暖かい日差しが降り注ぐ。
雲一つない快晴。
レイはにっこりと笑い、窓の外を見上げた。
「皆会えたかな……」
<今頃会っているさきっとな>
そんなレイの問いかけにルークとネルが答えるかの様に……開けた窓から心地よい風が吹いてきた―。
「――さて。……それじゃあ帰ろうぜ皆!」
こうして、レイ達の何とも不思議な出来事は幕を閉じた。
いつもと変わらない一日。
いつもと変わらないクエスト。
だが、今日という日は少し特別で少し悲しくて、とても素敵な出会いがあった……そんな何気ない一日であった―。
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