上 下
46 / 112
第二章 ~仲間~

45 団長の企み

しおりを挟む
数秒の沈黙―。

グッと堪えたリエンナが再び口を開く。

「―こちらリエンナ。お見苦しい所を聞かせてしまってすいません。引き続きさっきの団長さんを追いますね!」

明るい口調で言うリエンナ。
気を遣わせたくないという思いを察し、レイは「おう」と何もなかった様に一言だけ返した。

悩みや事情など人それぞれ。

レイ達にはレイ達の事情があり今に至る。
それはまたリエンナも然り。

何とかしてあげたいと思う人間は多いのかもしれないが、それだけでは解決できないことが殆どだ―。

引っ掛かる気持ちを抑え、レイ達はリエンナの目と鼻の先にいる団長に集中した。

中庭の警護と交代していた犯人と思われる団長。
確かな証拠がない為、どうにか方法を探すリエンナとレイ達だが、まさか単刀直入に聞く訳にもいかず手をこまねいている。

「……どうする?」

「ここからじゃ確かめようがないわね」

「大団長に告げ口でもするか?」

「手っ取り早いけど証拠がないからな……それに、あの二人だけなのかまだ他にいるのかも分からないし、無暗に動くのは危ない」

「そうね。向こうは私達をしっかり見ている筈だから、中に入れれば一番話が早いんだけどね……」

「レイ。王家の力でどうにかこうにかならないもんか?」

「無理だろ。ってゆうか、出来たとしてもそれだけは絶対に嫌だ。」

色々考えてはみるもののどれも決定打に欠ける案ばかり。
頭を目一杯働かせ「う~ん……」と皆で唸っていると、これまた思いがけない所から突破口が開かれた―。


<――ソイツで合っているぞ。森で出くわしたのは>

「「「――⁉⁉」」」

急に会話に入ってきたのはドーラン。
それもどういう訳か犯人を特定している。

「ドーラン!何でお前そんな事分かるんだよ」
<“魔力”が同じだ。人間は魔力の感知も出来ぬのか>

魔力を持つ者ならば皆当然のように魔力を感じられる。
だがそれは漠然とした、目の前にいる相手が自分より魔力が強いか弱いか……高いか低いかぐらいが分かる程度の話である。

ハンターランクが高い者の中には、この魔力感知能力に長けている者もいるが、感知したい対象が自身から離れれば離れる程その精度は落ちてしまう。

魔力感知が得意なSランクハンターでさえ、その範囲は自身を中心に最大でも半径数百メートル未満が限度。
それに対し、今レイ達とその団長とではゆうに一キロ以上は離れていた―。

「魔力感知ってゆうレベル超えてるわよそれ……」
「すげぇなドラゴンの力」
「へぇ~魔力感知なんて事が出来るのかぁ……って、おい!そんな事出来るならもっと早くやってくれよ!」
<自分でやらなければ意味がない。ちなみに、ちゃんと我の能力を扱えておれば水の王国に入った時点で居場所は分かっていたぞ>
「何ッ⁉ ドーランお前よぉ~……」

いくらでも文句を言う点はあったが、そもそもレイが力を扱えればというドーランの意見に一理あったし、そのおかげと言っていいのか分からないが、結果水の王国を観光出来たしリエンナとも出会えた。

トータルで見れば結果オーライだなと、レイは一人で頷き納得していた。

話を戻し、いとも簡単に犯人を見つけたレイ達はリエンナと話し合い、もうすぐお開きになる食事会の後で再度奴を追おうと決めた。


それから暫く経ち、予定通り食事会が終了―。
招かれた王家や関係者達も次々に城を後にし、お城では使用人や家来の者達が後片付けをしている。
護衛をしていた騎士団の者達も皆本日の任務を終え、大団長の命令でそれぞれ帰路についた。

夜遅くまで続いた食事会に、レイ達もいつの間にか寝てしまっていた。

リエンナの声で目を覚ましたローラがレイとランベルを起こし、城を出た団長の後を尾行する。

「私も行きたい」と言ったリエンナだが、元々今日お城に泊っていき明日帰る予定だったのだが、日中の事もあり部屋を抜け出すのが難しそうだとレイ達に伝えた。

空はもう真っ暗となり、月の灯りと道に灯る火だけがその暗闇を照らしている。
目的の団長も、最初は五、六人で帰っていたが、進むごとに他の騎士団員達もそれぞれ自分の家の方へと向かって別れていき、家に着く少し前には団長も一人になっていた。

数分歩くと、団長がある家の前で止まる。

数十メートル離れて尾行していたレイ達も建物の陰に隠れ一旦止まった。

「あそこがアイツの家か」

「そうみたい。ドーランの力で魔力感知も出来るし、これで居所も分かったわね。
もう遅いから明日改めて奴を調べッ……「――いるんだろ?」

「「「――⁉⁉」」」

団長の男が突如そう言った。

レイ達は驚き、建物の陰にいたが更に隠れる様にその場にしゃがみ込む。

周りには誰も人がいない。

無意識に呼吸が止まり、いつも以上に心臓の音が大きく聞こえる。

(やべ……バレたか……)

その場に流れる緊張。
団長が口を開いた数秒後、暗闇の中から一人の男が現れた。


「――こっちは問題なく進んだ。そっちはどうだ?」
「ああ。こっちも大丈夫だ」

そこに現れたのは、ポロン村にいたもう一人の男。
紋章は黒色だが、二人共やはり同じ甲冑を着ていた。

尾行がバレたのではないと分かり、一瞬安堵したのも束の間。
あの男達はまた何かを企んでいる様子であった。

人通りもなく、ましてや夜遅い時間帯ともあって、無駄な雑音が無く離れているレイ達にも会話が聞こえた。

「城内には王家の奴らが結構泊っていってるらしい」
「あれだけの人数を招けばな。遠方から来ている王家も多いだろ」
「ヒッヒッヒッ!城内にいきなりモンスターが“召喚”されたらビビるだろうな!」

笑いながら話す団長ともう一人の団員。
まさかと思いながらも、今の会話からすると男達は城にいる王家を襲う気らしい。

「――本気かッ……⁉ アイツらまさかこの間の魔法陣で王家を⁉」
「いや、アイツらならやりかねないわ……城が危ない。リエンナに直ぐ伝えなくちゃ……!」
「城に先回りしよう……って、レイがいねぇじゃん!まさか……」

ランベルの予感は的中。
一体いつの間に動いたのか分からないが、一緒に隠れていた筈のレイが奴らに向かって歩いていた。

「――救いようのねぇクソだったかやっぱ……」
「「――⁉⁉」」

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

無属性魔術師、最強パーティの一員でしたが去りました。

ぽてさら
ファンタジー
 ヴェルダレア帝国に所属する最強冒険者パーティ『永遠の色調《カラーズ・ネスト》』は強者が揃った世界的にも有名なパーティで、その名を知らぬ者はいないとも言われるほど。ある事情により心に傷を負ってしまった無属性魔術師エーヤ・クリアノートがそのパーティを去っておよそ三年。エーヤは【エリディアル王国】を拠点として暮らしていた。  それからダンジョン探索を避けていたが、ある日相棒である契約精霊リルからダンジョン探索を提案される。渋々ダンジョンを探索しているとたった一人で魔物を相手にしている美少女と出会う。『盾の守護者』だと名乗る少女にはある目的があって―――。  個の色を持たない「無」属性魔術師。されど「万能の力」と定義し無限の可能性を創造するその魔術は彼だけにしか扱えない。実力者でありながら凡人だと自称する青年は唯一無二の無属性の力と仲間の想いを胸に再び戦場へと身を投げ出す。  青年が扱うのは無属性魔術と『罪』の力。それらを用いて目指すのは『七大迷宮』の真の踏破。

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

転移した場所が【ふしぎな果実】で溢れていた件

月風レイ
ファンタジー
 普通の高校2年生の竹中春人は突如、異世界転移を果たした。    そして、異世界転移をした先は、入ることが禁断とされている場所、神の園というところだった。  そんな慣習も知りもしない、春人は神の園を生活圏として、必死に生きていく。  そこでしか成らない『ふしぎな果実』を空腹のあまり口にしてしまう。  そして、それは世界では幻と言われている祝福の果実であった。  食料がない春人はそんなことは知らず、ふしぎな果実を米のように常食として喰らう。  不思議な果実の恩恵によって、規格外に強くなっていくハルトの、異世界冒険大ファンタジー。  大修正中!今週中に修正終え更新していきます!

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

平凡すぎる、と追放された俺。実は大量スキル獲得可のチート能力『無限変化』の使い手でした。俺が抜けてパーティが瓦解したから今更戻れ?お断りです

たかたちひろ【令嬢節約ごはん23日発売】
ファンタジー
★ファンタジーカップ参加作品です。  応援していただけたら執筆の励みになります。 《俺、貸します!》 これはパーティーを追放された男が、その実力で上り詰め、唯一無二の『レンタル冒険者』として無双を極める話である。(新形式のざまぁもあるよ) ここから、直接ざまぁに入ります。スカッとしたい方は是非! 「君みたいな平均的な冒険者は不要だ」 この一言で、パーティーリーダーに追放を言い渡されたヨシュア。 しかしその実、彼は平均を装っていただけだった。 レベル35と見せかけているが、本当は350。 水属性魔法しか使えないと見せかけ、全属性魔法使い。 あまりに圧倒的な実力があったため、パーティーの中での力量バランスを考え、あえて影からのサポートに徹していたのだ。 それどころか攻撃力・防御力、メンバー関係の調整まで全て、彼が一手に担っていた。 リーダーのあまりに不足している実力を、ヨシュアのサポートにより埋めてきたのである。 その事実を伝えるも、リーダーには取り合ってもらえず。 あえなく、追放されてしまう。 しかし、それにより制限の消えたヨシュア。 一人で無双をしていたところ、その実力を美少女魔導士に見抜かれ、『レンタル冒険者』としてスカウトされる。 その内容は、パーティーや個人などに借りられていき、場面に応じた役割を果たすというものだった。 まさに、ヨシュアにとっての天職であった。 自分を正当に認めてくれ、力を発揮できる環境だ。 生まれつき与えられていたギフト【無限変化】による全武器、全スキルへの適性を活かして、様々な場所や状況に完璧な適応を見せるヨシュア。 目立ちたくないという思いとは裏腹に、引っ張りだこ。 元パーティーメンバーも彼のもとに帰ってきたいと言うなど、美少女たちに溺愛される。 そうしつつ、かつて前例のない、『レンタル』無双を開始するのであった。 一方、ヨシュアを追放したパーティーリーダーはと言えば、クエストの失敗、メンバーの離脱など、どんどん破滅へと追い込まれていく。 ヨシュアのスーパーサポートに頼りきっていたこと、その真の強さに気づき、戻ってこいと声をかけるが……。 そのときには、もう遅いのであった。

復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜

サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」 孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。 淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。 だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。 1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。 スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。 それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。 それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。 増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。 一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。 冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。 これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。

良家で才能溢れる新人が加入するので、お前は要らないと追放された後、偶然お金を落とした穴が実はガチャで全財産突っ込んだら最強になりました

ぽいづん
ファンタジー
ウェブ・ステイは剣士としてパーティに加入しそこそこ活躍する日々を過ごしていた。 そんなある日、パーティリーダーからいい話と悪い話があると言われ、いい話は新メンバー、剣士ワット・ファフナーの加入。悪い話は……ウェブ・ステイの追放だった…… 失意のウェブは気がつくと街外れをフラフラと歩き、石に躓いて転んだ。その拍子にポケットの中の銅貨1枚がコロコロと転がり、小さな穴に落ちていった。 その時、彼の目の前に銅貨3枚でガチャが引けます。という文字が現れたのだった。 ※小説家になろうにも投稿しています。

処理中です...