24 / 27
黒の捜査線
23 黒の直感・協奏曲
しおりを挟む
俺は無意識の内に動き出していた。
爆弾のある部屋を出て、皆が待つエレベーターの方へ。
今、俺が“思っている”事が勘違いじゃなかったとしたら――。
「……シン。 いたかもしれねぇ……」
「ん? 何だって?」
何とも言えない感覚に襲われていた俺は、上手く声を出せなかった様だ。俺自身、恐怖なのか高揚なのか分からない震えに襲われているから無理もない。
向かう歩みを止め、焦る気持ちを抑える。
俺はゆっくりと深呼吸をしてシンに告げた。
「いるじゃねぇかよ……。事件が起きてからずっと見ている奴が――。
俺ら警察と、奴らソサエティ以外にも……6年前も今も、共通してコレを見ている奴が他にもよ……!」
「どういう事だ……⁉」
シンはまだ俺の言っている意味が分かっていない様だ。そりゃそうか。そもそもまだコレが合ってるかも定かじゃない。仮にそうだったとしても、それは余りに信じられない出来事だ。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
<……アイツは俺達以上に“狂っている”からな!……>
ーーーーーーーーーーーーーーーー
奴らの言葉が頭を過る。
コレが真実なら、奴らの言う通り、本当に狂ってやがる。
俺のこの直感が……俺の“記憶”が正しければ……。
爆弾の製造者である最後の1人は――。
「シン。6年前にあのビルにいた……俺と取り残されえて人質となった、被害者達の身元を確認してくれ! 急げ!」
そうだったのか。
あの時も今も、ずっと残っているこの嫌な感覚の正体。
ソサエティを見つけて、奴らを捕まえれば消えるだろうと思っていたこの感覚。
全ての答えが分かった――。
あれから6年もかかってようやく“お前”に辿り着いたみたいだ。
ほら。
その証拠に、ずっとはまらなかったピースがようやくハマった様なこの感覚。ずっと残っていた不快な違和感が嘘みたいにスッキリした。
「ハァ……ハァ……ハァ……ハァ……」
爆弾の部屋からこのエレベーターまで、全く大した距離じゃないのに、俺はいつの間にか呼吸が荒くなっていた。
「どうしたんですか刑事さん」
「爆弾は⁉ 爆弾はどうなったんですか⁉」
「犯人は捕まったのか?」
目の前にいる5人の人達。皆が一斉に俺の方を見ている。1人はラフな格好をした大学生ぐらいの男の子。そしてその横に30前後の女性が1人と、杖をついた70代ぐらいのお婆さん。そしてスーツを着たサラリーマンと思われる男の人が2人。
「皆さん安心して下さい。爆弾は解除され、もう直ぐ外に待機している警察が助けに来てくれますので」
「本当に⁉ 良かったぁ。安心したわ」
「ふぅ~。全く、寿命が縮まったぜ」
「本当ですよ。爆弾なんて余りに現実味がない」
皆が口々に安堵を漏らす中、耳元でずっと待っていたシンの声が響いた。
「――あったぞ千歳! 6年前にお前と同じビルに取り残された被害者達の身元情報。今携帯に送ったから確認してくれ。急げ! 時間がないぞ!」
爆破まで、残り2分――。
いた。やっぱりそうだったか――。
シンから送られてきた被害者達の身分証。
ここにしっかり“映ってる”。
今俺の“目の前に”いるアンタの面が、6年前に記録された被害者の身元情報にはっきりと残っているぜ。
あの時から若干老け込んだ、テメェのその“面”がな――。
「婆さん……」
……………………カチャ……!
俺は銃を抜き、その銃口を婆さんの額にピタリと当てた。
「見つけたぜ……。爆弾製造者――」
爆弾のある部屋を出て、皆が待つエレベーターの方へ。
今、俺が“思っている”事が勘違いじゃなかったとしたら――。
「……シン。 いたかもしれねぇ……」
「ん? 何だって?」
何とも言えない感覚に襲われていた俺は、上手く声を出せなかった様だ。俺自身、恐怖なのか高揚なのか分からない震えに襲われているから無理もない。
向かう歩みを止め、焦る気持ちを抑える。
俺はゆっくりと深呼吸をしてシンに告げた。
「いるじゃねぇかよ……。事件が起きてからずっと見ている奴が――。
俺ら警察と、奴らソサエティ以外にも……6年前も今も、共通してコレを見ている奴が他にもよ……!」
「どういう事だ……⁉」
シンはまだ俺の言っている意味が分かっていない様だ。そりゃそうか。そもそもまだコレが合ってるかも定かじゃない。仮にそうだったとしても、それは余りに信じられない出来事だ。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
<……アイツは俺達以上に“狂っている”からな!……>
ーーーーーーーーーーーーーーーー
奴らの言葉が頭を過る。
コレが真実なら、奴らの言う通り、本当に狂ってやがる。
俺のこの直感が……俺の“記憶”が正しければ……。
爆弾の製造者である最後の1人は――。
「シン。6年前にあのビルにいた……俺と取り残されえて人質となった、被害者達の身元を確認してくれ! 急げ!」
そうだったのか。
あの時も今も、ずっと残っているこの嫌な感覚の正体。
ソサエティを見つけて、奴らを捕まえれば消えるだろうと思っていたこの感覚。
全ての答えが分かった――。
あれから6年もかかってようやく“お前”に辿り着いたみたいだ。
ほら。
その証拠に、ずっとはまらなかったピースがようやくハマった様なこの感覚。ずっと残っていた不快な違和感が嘘みたいにスッキリした。
「ハァ……ハァ……ハァ……ハァ……」
爆弾の部屋からこのエレベーターまで、全く大した距離じゃないのに、俺はいつの間にか呼吸が荒くなっていた。
「どうしたんですか刑事さん」
「爆弾は⁉ 爆弾はどうなったんですか⁉」
「犯人は捕まったのか?」
目の前にいる5人の人達。皆が一斉に俺の方を見ている。1人はラフな格好をした大学生ぐらいの男の子。そしてその横に30前後の女性が1人と、杖をついた70代ぐらいのお婆さん。そしてスーツを着たサラリーマンと思われる男の人が2人。
「皆さん安心して下さい。爆弾は解除され、もう直ぐ外に待機している警察が助けに来てくれますので」
「本当に⁉ 良かったぁ。安心したわ」
「ふぅ~。全く、寿命が縮まったぜ」
「本当ですよ。爆弾なんて余りに現実味がない」
皆が口々に安堵を漏らす中、耳元でずっと待っていたシンの声が響いた。
「――あったぞ千歳! 6年前にお前と同じビルに取り残された被害者達の身元情報。今携帯に送ったから確認してくれ。急げ! 時間がないぞ!」
爆破まで、残り2分――。
いた。やっぱりそうだったか――。
シンから送られてきた被害者達の身分証。
ここにしっかり“映ってる”。
今俺の“目の前に”いるアンタの面が、6年前に記録された被害者の身元情報にはっきりと残っているぜ。
あの時から若干老け込んだ、テメェのその“面”がな――。
「婆さん……」
……………………カチャ……!
俺は銃を抜き、その銃口を婆さんの額にピタリと当てた。
「見つけたぜ……。爆弾製造者――」
0
お気に入りに追加
40
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
マチコアイシテル
白河甚平@壺
ミステリー
行きつけのスナックへふらりと寄る大学生の豊(ゆたか)。
常連客の小児科の中田と子犬を抱きかかえた良太くんと話しをしていると
ママが帰ってきたのと同時に、滑り込むように男がドアから入りカウンターへと腰をかけに行った。
見るとその男はサラリーマン風で、胸のワイシャツから真っ赤な血をにじみ出していた。
スナックのママはその血まみれの男を恐れず近寄り、男に慰めの言葉をかける。
豊はママの身が心配になり二人に近づこうとするが、突然、胸が灼けるような痛みを感じ彼は床の上でのた打ち回る。
どうやら豊は血まみれの男と一心同体になってしまったらしい。
さっきまでカウンターにいた男はいつのまにやら消えてしまっていた・・・
孤島の洋館と死者の証言
葉羽
ミステリー
高校2年生の神藤葉羽は、学年トップの成績を誇る天才だが、恋愛には奥手な少年。彼の平穏な日常は、幼馴染の望月彩由美と過ごす時間によって色付けされていた。しかし、ある日、彼が大好きな推理小説のイベントに参加するため、二人は不気味な孤島にある古びた洋館に向かうことになる。
その洋館で、参加者の一人が不審死を遂げ、事件は急速に混沌と化す。葉羽は推理の腕を振るい、彩由美と共に事件の真相を追い求めるが、彼らは次第に精神的な恐怖に巻き込まれていく。死者の霊が語る過去の真実、参加者たちの隠された秘密、そして自らの心の中に潜む恐怖。果たして彼らは、事件の謎を解き明かし、無事にこの恐ろしい洋館から脱出できるのか?
ARIA(アリア)
残念パパいのっち
ミステリー
山内亮(やまうちとおる)は内見に出かけたアパートでAR越しに不思議な少女、西園寺雫(さいおんじしずく)と出会う。彼女は自分がAIでこのアパートに閉じ込められていると言うが……
パラダイス・ロスト
真波馨
ミステリー
架空都市K県でスーツケースに詰められた男の遺体が発見される。殺された男は、県警公安課のエスだった――K県警公安第三課に所属する公安警察官・新宮時也を主人公とした警察小説の第一作目。
※旧作『パラダイス・ロスト』を加筆修正した作品です。大幅な内容の変更はなく、一部設定が変更されています。旧作版は〈小説家になろう〉〈カクヨム〉にのみ掲載しています。
この欠け落ちた匣庭の中で 終章―Dream of miniature garden―
至堂文斗
ミステリー
ーーこれが、匣の中だったんだ。
二〇一八年の夏。廃墟となった満生台を訪れたのは二人の若者。
彼らもまた、かつてGHOSTの研究によって運命を弄ばれた者たちだった。
信号領域の研究が展開され、そして壊れたニュータウン。終焉を迎えた現実と、終焉を拒絶する仮想。
歪なる領域に足を踏み入れる二人は、果たして何か一つでも、その世界に救いを与えることが出来るだろうか。
幻想、幻影、エンケージ。
魂魄、領域、人類の進化。
802部隊、九命会、レッドアイ・オペレーション……。
さあ、あの光の先へと進んでいこう。たとえもう二度と時計の針が巻き戻らないとしても。
私たちの駆け抜けたあの日々は確かに満ち足りていたと、懐かしめるようになるはずだから。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる