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黒の捜査線

09 過去と始まり⑤

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 今日1番驚いたかも知れない。

 ほら。その証拠に驚き過ぎて声が出ねぇ。今なんて言ったコイツ。

 お互い大変な事に……?
 俺はランドタワーだ……?

 おいおい、嘘だろ。
 まさかもう1つ爆弾が仕掛けられたランドタワーにいるのって、お前なのか?

  一真――。

「おい……本気で言ってんのかそれ」
「何が?」
「お前本当にランドタワーにいるのかよ一真」
「ああ。正真正銘ランドタワーに閉じ込められたぜ。俺も合楽ビルディングにお前がいると聞いた時はマジでビビったけどな千歳。こんな状況なのに思わず笑いそうだったぜ。ハハハ」

 本当に笑ってるじゃねぇか。よく笑えるものだこの状況で。

「そっちはどうなんだ?」
「多分そっちと同じだよ。俺と何人かが取り残された。鍵は開かないし、ソサエティとかいう奴らが言う通り爆弾も仕掛けられていたしな」
「マジかよ……。って事はそっちにもあるのか、爆弾が」
「あるぜ。俺の目の前にな」

 信じられない事の連続。
 1つずつ現実を理解しようとしてるのに、また直ぐに次が出てくる。こんな災難が畳み掛けてくるかね普通。何か悪い事したか俺。
 
 ――プルルルルッ……プルルルルッ……。
 全く。今度は何だ。何回鳴るんだよ。
 再び鳴った電話は支給されている携帯。今度こそ本部からだった。
 
「はい。黒野です」
「本部長の服部だ。その後皆は無事かね?」
「はい。問題ありません」
「よし、分かった。くれぐれもパニックにならない様に落ち着いて対応してくれ。そして今、こちらでも話し合いを進めた結果、どうやら爆弾を解除する他方法が見当たらないという結論に至っている。奴らは本当に有言実行するだろう。こちらもどうにか君達と人質を助け出せる策を練っているが、時間に猶予も無い。我々も勿論救出に向けて動き出すが、どちらせよ爆弾の対応もしなくてはならない」

 電話越しでも本部の慌ただしさや緊張感が伝わってくる。爆弾解除ね。まさか実践でやる事になるとは。

「現在時刻は14:40――。
そこにいる黒野刑事と白石刑事! まだ若い君達にこんな事を言うのは酷だが、君達に人質の命が懸かっていると言っても過言ではない。勿論、爆弾解除に当たってはこちらから爆発物処理班が指示を出す。携帯の通話を切り替え、爆弾が見える位置に置いてくれ。

大丈夫。プレッシャーを掛ける様な事を言ってしまったが、全員が万全の対策で君達をバックアップしている。君達も他の人質も必ず救い出す! これからこの携帯は繋いだまま。爆発物処理班と共に爆弾を解除すると同時に、こちらの動きも全て伝える。色々手は打っているが今は兎に角爆弾に集中してくれ!

黒野刑事、白石刑事。君達の日頃の活躍は耳にしている。ここにいる皆が、君達なら出来ると信じている。
時間迫ってきている。直ぐに爆発物処理班の者と代わろう」

 ホント、とんでもない事になってるな。本部長との最初の会話がこんなのだとは思いもしなかったぜ。

「だってよ千歳」

 繋がっていたままの自分の携帯から一真が声を掛けてきた。

「本部も慌ただしそうだ。本部長も俺達を励ましてくれてるのかプレッシャー掛けてるのかよく分からないしな」
「そんな事言うなよ。聞こえるぞお前」
「皮肉の1つや2つ言わなきゃやってられないぞこの状況。爆弾解除なんてした事ないし」
「俺だってそうだよ。まぁ爆発物処理班の指示があるなら大丈夫だろ。マジで1人だったら即終了だけどな。ハハハ」
「お前よく笑えるよな本当に。神経疑うぜ」

 一真とそんな事を言い合っていると、本部から声が聞こえてきた。

「黒野刑事、白石刑事! 聞こえるか?」
「はい。聞こえます」
「私は爆発物処理班の山本だ。今からそこにある爆弾解除を担当する。早速だが、2人共まずは爆弾をこちらに見せてくれ」

 指示通りに俺は携帯の画面に爆弾が見える様映した。

「成程な……分かった、ありがとう。時間が無いから直ぐに取り掛からなくてはならない。近くにドライバーやニッパはあるか? 無ければ似たような物でもいい。何か細い棒状の物やハサミでもな。それと、両手を使う作業になるから、もし出来る事なら爆弾を映したまま上手く携帯を固定しておいてくれ」

 解除の道具に携帯固定ね……。幸いに道具は揃いそうな雰囲気だけど、1回上の人達に聞いてみよう。

「すいません。ちょっと他の皆さんに道具あるか聞いて直ぐに戻ります」
「同じく」

 本部では俺と一真の携帯画面を同時に見ているのだろう。音声もスピーカーになっているから少しズレて一真の声も聞こえた。

 俺は上で待っている人達に簡潔に事情を説明した。その話をすると、ここで働いている数人が動いてくれて、ドライバーやハサミを直ぐに持ってきてくれた。

 助かった。1人だったら探すだけで手間が掛かるからな。
 道具を手にした俺は直ぐに爆弾がある部屋へと戻り、近くにあったテーブルやら書類やら等で上手く携帯を固定した。

「こちら黒野です。ドライバーとハサミ準備出来ました。携帯も取り敢えず固定しましたが、これで大丈夫ですか?」
「ああ、しっかり映っている。大丈夫だ」
「こちら白石。私の方も無事道具が揃いました。ただ……」

 報告をしている一真の声が急に小さくなっていった。何かバツが悪そうな感じ。何かあったのかまさか。

「どうした白石刑事」
「あ、いや、あの……爆弾があるここの部屋はあまり使われていない様で、爆弾が置いてあるテーブル以外ほぼ何もないんです」
「そうか。なら携帯は固定しなくても大丈夫だ。解除しながらやっていこう。ただ逐一爆弾は映してくれ。いいな?」

 爆弾解除を担当してくれている山本さんからの言葉に、何故か一真から返事が返ってこなかった。
 だが数秒の沈黙の後、一真がまたバツが悪そうな声で話し始めた。

「それが――」

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