スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ

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86 極限の力

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「は……? 何してるのお前――」

 突然の事態に動きを止めたヴィル。何がどういう訳か分からない状態だが、何故か俺達の視線の先にはユリマを抱えた七聖天、“カル・ストデウス”の姿がそこにあった。

「お前は七聖天の……」
「まさかとは思うけどさ、もしやお前まで愚かな考えしてる訳じゃないよねカル」
「俺の行動が愚かかどうかは俺自身が決める。例えその相手が国王であってもな」

 ユリマを抱えたカルはヴィルにそう言い放った。更にカルは俺達から視線を逸らすと、エミリア達がいる方向に向かってこう叫んだ。

「おい! 早くユリマを預かれ! 戦いは終わっていないぞ!」

 俺達は全員カルの思いがけない行動に戸惑ったが、イヴが弱った魔力を振り絞って瞬時にユリマだけを魔法で移動させた。ユリマがイヴ達の元へ渡った事を確認した俺は再び直ぐにカルへと視線を戻していた。

「お前何で……」
「ジニ王国でお前達と戦った後、俺は自分が抱いていた疑問を払拭する為に王都で情報を集めていた。そして遂に辿り着いたのさ。
俺が国王から受けた命は全て偽りであり、邪神として追っていたお前達の行動が真実であるとな。
勿論仲間のつもりはないが、ここからはお前達に加勢させてもらう――」

 驚きの余り直ぐには言葉が出なかった。だけど今カルが言った事が全てだ。

「ユリマの事は礼を言うよ。ありがとな。でも後の事はお前の好きにしてくれ。悪いが俺も周りに構っている程余裕がある訳じゃないからな」
「そのつもりだ。お前達の戦いに邪魔が入らない様、周りの団員達は俺が相手をしといてやろう」

 それだけ言うと、カルは本当に俺達の周りの団員達を相手に動き出した。

「ったく、どいつもこいつも使えない無能だね。しかも無能だけならまだしもことごとく俺の邪魔しちゃって。まぁいっか……兄さん殺したらアイツらも殺すし。さぁ、今度こそ始めようか!」
「お前の思い通りにはさせないぞヴィル!」

 ――ガキィィィィンッ!!
 こうして、遂に俺とヴィルの剣が激しい火花を散らしながら衝突した。

「良いよ良いよ兄さん! フィンスターの時はクソ弱かったからね! 一気にゾクゾクしてきちゃった」
「ヘラヘラしてられるのも今の内だ。俺はお前に勝つ」

 超波動、気の流れ、そして双樹剣セフィロト。
 俺は自分の持てる力を全開放してヴィルと剣を交えた。

 たった一撃で伝わってくるヴィルの強さ。速度、威力、重さ、圧力。全てが今まで出会った敵の中で1番だ。でもあの時よりも俺だって強くなっている。負ける訳にはいかない。

 ――ガキィン、ガキィン、ガキィン、ガキィィンッ!
 俺達は互いに容赦なく剣を振り合う。剣と剣が衝突する度に空気が震え、剣を振る度にヴィルから伝わる殺意がより冷酷に禍々しくなっていく。

「面白い! 面白いよ! ハハハハハッ!」
「ホントに狂ってやがるな」

 ふざけた態度とは裏腹に力は確か。一瞬でも隙を突かれたら間違いなく殺られる。

 ――ガキィン、ガキィン、ガキィン、ガキィィンッ!
「ぐッ……!」
『焦るなよグリム。奴も強いが主も強くなっている。焦らず確実に隙を狙うのだ』

 ――ガキィン、ガキィン、ガキィン、ガキィィンッ!
 怒涛の攻防が終わらない。僅か数分にも満たない時間にも関わらずまるで永遠かの如くに感じる。しかも心なしかヴィルの攻撃が……。

「あれ、ちょっと“遅れ出してるよ”。大丈夫?」
「ふざけんじゃねぇ……!」

 そう。剣を振る度にヴィルの攻撃の鋭さと威力が増している。気のせいではなかった。

「隙あり」

 ――シュバン!
「ッ……!?」

 ヴィルの一太刀が初めて俺に入った。斬られた脇腹からは血飛沫が舞ったが、反射的に身を躱した事によって傷は浅かった。

「くッ、危なかった」
「安心した。上手く避けてくれて。折角楽しくなってきたところなのにこれで終わったら詰まらないからね!」
『大丈夫かグリム』
「ああ、問題ない」
『奴の力がどんどん強まっているな。いや、正確にはアビスの力が』

 やはりそうだったか。最初よりかなり力が強まっているよな。

『マズいな。このままだとあのヴィルという子自体が危険である。アビスの強大な力に飲み込まれてしまうぞ』
「マジかよ。って、ちょっと待った。もしかしてアビスは“それ”を狙って……?」
『可能性は大いにある。アビスが復活する事は分かっていたが、奴がどうやって復活するかまでは我らにも分からなかったからな』
「だったら尚更早く倒さないといけないな。ドラドムート、もう“アレ”で勝負を決めよう――」
『どうやらそれしかない様だ。もしかすると彼を倒せばアビスの復活も防げるかもしれぬ。だが気を付けろグリム。まだ主はあの力をコントロールし切れていぬからな』

 分かってる。
 だから勝負はこの一瞬で決める――。

 俺が超波動を更に高めると、それに呼応する様にドラドムートも魔力を高め出す。そして次の瞬間、俺とドラドムートの力が混じり合い神々しい光が生まれると、俺の力は今までよりも遥か上をいく極限状態に達した。

「へぇ、あの落ちこぼれの兄さんにまだこんな力が残っていたなんて! これはフィンスターで殺しそびれた甲斐があったよ! ハハハハハ!」
「話す暇はない。これで終わりだヴィル――」
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