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第四章 王国大防衛戦線
第六話 躊躇
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「うわ、マジで来てるよ……引くわあ……」
俺は村に本当にやってきた王子と騎士団を隣の部屋から覗き穴越しに観察しながら呟く。
この小さめの城『スライムキャッスル』の大広間の隣には広間を見渡せる覗き穴がある。俺はそこから出るタイミングを伺っていた。
「明らかにピリピリしてんじゃん。あそこに行かなきゃいけないのかよ」
確かにスライム達には全力でもてなせと命じた。
でもこれは明らかにやりすぎだ。これだけ力を見せつければ威嚇行為ととらわれてもおかしくないぞ。
「はあ、とっとと行きなさいよ。あんまり待たせるとどんどん印象が悪くなるわよ」
「うるせえやい、お前は同じ立場になったことがないからそんなことが言えんだよ」
うじうじする俺に辛辣な言葉をかけてくるクリスに俺はそう言い返す。
しかしクリスの言うことはもっともだ。
本当に来てしまった以上、もう逃げることはできない。なぜ彼らが来たのかを聞き出すためにも俺が直接出向くしかない。
「安心しろよキクチ。もし戦いになったらあたしが全員ぶっ飛ばしてやるよ!」
「それが怖いんだよ! お前は絶対出てくんなよ!?」
物騒なことを提案してくる雷子に俺はキツく釘を刺しておく。
はあ、なんでこいつらは俺のこととなると力任せになるのだろうか。
まあ実際今来ている人数くらいだったら簡単に武力制圧できるだろう。
しかし王子を手にかけたとあっては王国を敵に回すことになる。いくら王子がお忍びで来ているとしてもさすがにその身に何かあったらバレるだろうからな。
ていうかバレるかどうか以前に人道に背くような真似はしたくない。スライム達の教育上悪いしクリスやロバート、エイル達に嫌われたくないしな。
「ちっ、それにしてもあいつが王子だったとはな。あの時から俺に目をつけていたと言うわけか」
以前俺が王国にいた時に話しかけてきた人物。
フロイと名乗った男がなんと王子だった。覗き穴からその顔を見るまでまさか奴が王子だとは思いもしなかった。
「いったいフロイさんは何が狙いなんでしょうか?」
エイルは不思議そうに尋ねてくる。
「前に会った時あいつは俺がどの陣営につくか気にしていた。もしかしたら俺の力を王国のものにしようとしているのかもな」
それなら辻褄が合う。
王子が自ら来たのは自分の下につかせるためってワケだ。
「え、キクチさんはこの村を出てしまわれるのですか……?」
エイルはそう言うと今にも泣き出しそうな顔で俺を見てくる。
マジかよ!? 急いで誤解を解かなくては!
「い、いやいや! そんなつもりはないって! この村を出て行くことは絶対にないから! な?」
「ぐすっ、ほんと、ですか?」
「ああ! 約束する!」
俺の必死の説得の甲斐あってエイルは泣き止んでくれる。
ふう、焦った。女性の涙には勝てんぜ。
「はあ、しょうがない。そろそろ行くか」
俺は気を取り直し大広間に向かう決意を固める。
これいじょうここにいてまたエイルに泣かれてはたまらん。
だったらまだ王子達の相手をする方が心臓に優しい。
「頑張ってください! 私応援しています!」
「ああ、ありがとうな」
俺は先程までの涙はどこえやら無邪気に応援してくるエイルに礼を言うと足取り重く
俺は村に本当にやってきた王子と騎士団を隣の部屋から覗き穴越しに観察しながら呟く。
この小さめの城『スライムキャッスル』の大広間の隣には広間を見渡せる覗き穴がある。俺はそこから出るタイミングを伺っていた。
「明らかにピリピリしてんじゃん。あそこに行かなきゃいけないのかよ」
確かにスライム達には全力でもてなせと命じた。
でもこれは明らかにやりすぎだ。これだけ力を見せつければ威嚇行為ととらわれてもおかしくないぞ。
「はあ、とっとと行きなさいよ。あんまり待たせるとどんどん印象が悪くなるわよ」
「うるせえやい、お前は同じ立場になったことがないからそんなことが言えんだよ」
うじうじする俺に辛辣な言葉をかけてくるクリスに俺はそう言い返す。
しかしクリスの言うことはもっともだ。
本当に来てしまった以上、もう逃げることはできない。なぜ彼らが来たのかを聞き出すためにも俺が直接出向くしかない。
「安心しろよキクチ。もし戦いになったらあたしが全員ぶっ飛ばしてやるよ!」
「それが怖いんだよ! お前は絶対出てくんなよ!?」
物騒なことを提案してくる雷子に俺はキツく釘を刺しておく。
はあ、なんでこいつらは俺のこととなると力任せになるのだろうか。
まあ実際今来ている人数くらいだったら簡単に武力制圧できるだろう。
しかし王子を手にかけたとあっては王国を敵に回すことになる。いくら王子がお忍びで来ているとしてもさすがにその身に何かあったらバレるだろうからな。
ていうかバレるかどうか以前に人道に背くような真似はしたくない。スライム達の教育上悪いしクリスやロバート、エイル達に嫌われたくないしな。
「ちっ、それにしてもあいつが王子だったとはな。あの時から俺に目をつけていたと言うわけか」
以前俺が王国にいた時に話しかけてきた人物。
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「いったいフロイさんは何が狙いなんでしょうか?」
エイルは不思議そうに尋ねてくる。
「前に会った時あいつは俺がどの陣営につくか気にしていた。もしかしたら俺の力を王国のものにしようとしているのかもな」
それなら辻褄が合う。
王子が自ら来たのは自分の下につかせるためってワケだ。
「え、キクチさんはこの村を出てしまわれるのですか……?」
エイルはそう言うと今にも泣き出しそうな顔で俺を見てくる。
マジかよ!? 急いで誤解を解かなくては!
「い、いやいや! そんなつもりはないって! この村を出て行くことは絶対にないから! な?」
「ぐすっ、ほんと、ですか?」
「ああ! 約束する!」
俺の必死の説得の甲斐あってエイルは泣き止んでくれる。
ふう、焦った。女性の涙には勝てんぜ。
「はあ、しょうがない。そろそろ行くか」
俺は気を取り直し大広間に向かう決意を固める。
これいじょうここにいてまたエイルに泣かれてはたまらん。
だったらまだ王子達の相手をする方が心臓に優しい。
「頑張ってください! 私応援しています!」
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