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第七章【鬼の国】

第百六話 黒曜国へ

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 船を降りる6日間、毎日エリオネルに襲われた。2日に一回はどうやら、すごく我慢していたらしい。

「あー!やっと船降りれる!!」

「マリヤは久しぶりだよね」

 そうです。それにしても、エリオネル、顔ツヤッツヤしてんな。
 じとーっと横目で眺めると、エリオネルは嬉しそうに笑顔を向けてきた。

「毎日はムリだよ、俺」

「わかってるよ」

 エリオネルはただただ嬉しそうに微笑んでいる。わかってるならいいけど。

 ここはもう黒曜国だ。俺には見慣れた黒髪だらけで、少し地球を思い出してしまった。
 顔平たい族なのも似ているらしい。
 どうやら、船には馬車を丸ごと積んでいたらしく、船から出てきて腰が抜けるほど驚いた。通りで船がデカいわけだ。


 船を降りて荷物を降ろすのを見ていると、中学生くらいの子が走ってきて、俺にぶつかる。

「いたた。大丈夫?」

 その子は、目が大きくてすごい美少年だった。額に角がある。
 まん丸に開いた目が、大きすぎて溢れ落ちそうだ。

 抱き留めたときに、俺の胸に添えられた両手がギュッと強く握られている。

「本当に大丈夫?」

 声がやっと聞こえたのか、少年が真っ赤になった。可愛くてクスクス笑うと、彼はずいっと顔を近づけてくる。
 あ、と思う間もなく唇が触れた。

 わあ、ぷるぷる。

「何してる」

 近くに居たエリオネルが少年の首根っこを掴んだ。

「何するんだ!」

 少年がバタバタしながら叫んでいるが、何するんだって言うのは俺のセリフだと思う。

「いきなりキスするのは駄目だと思うよ」

「あっ、……ごめん」

 シュンと反省したように眉を下げた少年は、エリオネルに首根っこを掴まれているので、子猫みたいで可愛い。
 大丈夫だと判断したのか、エリオネルが少年から手を離した。

「どうしてキスしたの?」

「あ、あの、あんまり綺麗で、気づいたらして、た。……ごめん」

 しどろもどろになりながら、顔を真っ赤にしている。
 真っ赤になった顔をそのままにぎゅっと両手を握られた。

「結婚して!!」

 けっこん?

 ぽかん、としているとエリオネルが横から抱きしめてきて、少年から俺を隠した。

「私の婚約者だ。他の者とは結婚しない」

「あっ、そうだったんだ。あれ?でも、聖者じゃないの?」

 少年は大きな瞳で俺の目を覗き込んでくる。

「聖者でも、結婚は私とだけだ」

「聖配には権利なくない?」

 せいはいって何。

「マリヤ」

「俺がエリオネル以外とは結婚しないって決めてるんだ、ごめんね」

「でも、気が変わることだってあるよね」

 ニコッと笑った少年に頭が痛くなった。顔は可愛いんだけどな。

 少年を迎えに来た人がエリオネルの知り合いとかで、行く先も同じだったようで、いつもの馬車に少年、嘉伯かはくくんがむりやり乗り込んできた。

「ねぇ、マリヤ。膝の上乗る?」

「乗らないよ」

「ちぇっ、ちょっとくらい良いじゃん」

 偉く生意気な嘉伯くんに目眩を覚えながら、エリオネルの隣の座席に座る。
 エリオネルが手に手を重ねてきて、不安になってるのがわかった。

「大丈夫だよ、エリオネル」

 ちゅ、と頬にキスするとエリオネルの顔が赤くなる。

「いいなー、俺にもして!」

「しないってば」

「じゃあ、俺がする」

 ちゅ、と頬に嘉伯くんが突撃してきた。強引だな、この子。
 俺を挟んでエリオネルが嘉伯くんを睨んでいるが、嘉伯くんの方は気にしていないみたたいで、ニコニコ俺を見ている。

 ほんとに頭が痛い。

 黒曜国の首都、煌華こうかに着いた。煌華は港から近いみたい。

 中国と日本を合わせたような建物が見事で、黒い壁によって重厚感がある。瓦屋根も黒く、円形になっている所が所々あった。

「すごい、綺麗」

「本当だー」

 嘉伯くんが俺の顔を見ながら言う。

「恥ずかしくない?」

「ぜんぜーん。マリヤ、本当に綺麗だよ」

「嘉伯くんっていくつなの?」

「年?13だよ」

「あ、三つしか変わらないんだ」

 エリオネルは20で四つ違うし、嘉伯くんの方が近いって不思議な感じ。

「そーだよ」

 ニッと笑った嘉伯くんの顔が、何故だか大人っぽく見えた。
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