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第六章【獣人の国】

第九十六話 愛してる

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 アリアムさんについて行く。エリオネルの部屋の隣だった。

「よくわかりましたね、俺が王宮に居るって」

 王宮に居るってわかってなかったら、あんなにスムーズに救出されるなんて無理だ。

「あれだけ派手に襲撃すれば、黒幕が誰かはわかりますよ」

 アリアムさんが皮肉ってる。

「それで、俺のためにエリオネルが無茶したんですか?」

「一応、バネルとウェイドも居ましたよ」

 全然気づかなかった。置いて来たってこと?

「エリオネル様が無茶することはわかってましたが、お止めできず、申し訳ありません」

「アリアムさんのせいじゃないから、謝らないでください」

「マリヤ様、御身はご無事ですか?」

「あ、大丈夫です。もうちょっと居たら危なかったかもしれないけど」

「はー」

 アリアムさんが、心底安心したというようにため息をついた。

「エリオネル様の勘は、外れていなかったのですね。マリヤ様がご無事で安心しました」

 キスは沢山されたけど、無事ってことでいいんだよね?

「マリヤ様?」

「あの、キスはされたんですけど、ヤられてないから無事っていう認識で大丈夫ですよね?」

「多分……、エリオネル様に詳しくお話ししていただけますか?」

「わかりました」

「エリオネル様は、マリヤ様がどうなってもお変わりないと思いますよ」

「そうですかね、そうだといいんですけど」

 アリアムさんに言われて、俺もなんとなくそんな気がした。

「アリアムさん、エリオネルの傷ってユリアーノさんが治してくれたんですか?」

「1か月前の傷ですか?そうです」

「また、後で確認しますけど、ユリアーノさんにもお礼しなくちゃな」

「………」

 アリアムさんが変な顔してこちらを見ている。どういう感情?

「アリアムさん、やっぱりエリオネルが気になるので、俺戻りますね」

「はい、近くにいらしてあげてください」

 隣の部屋に戻る。部屋は狭いけどベッドは広かった。

 寝ているエリオネルを見る。本当に、エリオネルの元に帰って来たのだと思うと、また涙が出てきた。

「エリオネル……」

 エリオネルの隣に寝転んで、ぎゅっと抱きつく。ああ、本当にエリオネルだ……

 エリオネルの匂いと感触に安心してしまったのか、気づいたら寝ていた。




 ぬるぬるとした感触で目が覚める。これって、キスされてる?
 自分の居る場所がわからなくて、混乱した。

 あ、待って、エリオネルじゃない?肩を触って確認する。エリオネルだ。

 緊張した体から力が抜ける。エリオネルにキスされてると思うと嬉しくて涙が出てきた。涙腺緩すぎて嫌になる。

「マリヤ?嫌だった?」

「嫌なわけない!いっぱいして、エリオネル」

 エリオネルの首に腕を回すと、彼からのキスが激しくなった。

 消毒するように口の中いっぱい舐られる。それが焦ったくて、エリオネルの舌に舌を絡めた。

 気持ちいい……

 好きな人とするキスってこんなに違うんだ。

「は、ぁ……」

「マリヤ、会いたかった」

「俺も、ずっとエリオネルに会いたかった」

「今も私だけ?」

「うん、エリオネルだけだよ」

 ぽたっと、頬に水滴が落ちる。え?俺?

 目の前を見ると、エリオネルが泣いていた。

「エリオネル?」

「安心したら涙が……」

 エリオネルが愛おしすぎて胸が痛い。


「エリオネル、愛してる」


「マリヤ?」

「地球に帰らなくてもいい、結婚しよう」

 ちゅ、と触れるだけのキスをエリオネルにした。

「まだ、夢見てる?」

 エリオネルの顔が、くしゃっと歪む。

「夢じゃないよ、愛してる」

「私も、私も愛してるよ、マリヤ」

 エリオネルの涙腺も決壊したみたいだった。二人で泣きながら抱き合う。

 しばらくして、落ち着いたのかエリオネルが俺から離れた。

「ごめん、泣いちゃって」

「俺も泣いちゃったし」

 ふふ、と二人で笑い合う。1か月も離れていたのに、ピッタリと嵌ったピースのように側に居るのが当たり前だと思った。
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