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第五章【機械都市】

第七十三話 第二王子

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「キリッシュさん、お仕事とか大丈夫なんですか?」

「ん?大丈夫。一応片付けてきたし、優秀な部下置いてきたから」

 俺の前の席で昼食を食べながら、キリッシュさんは何でもないことのように言う。王子だからか、二人とも食べるのが綺麗だ。
 俺の隣の席を奪い合っていたのが嘘のような優雅さだ。因みにエリオネルは、キリッシュさんの隣で普通の顔をしている。やっぱり怒ってるかな?

「どんなお仕事してるんですか?」

「領地運営とか、店舗経営だよ」

「忙しそうですけど……」

「エリオネルも一緒なはずだけど。でも、旅に出てるだろ?」

「エリオネル、領地持ってたの?」

「そうだよ。兄さんの所の様には栄えてないけど」

「旅が終わったら、行ってみたいな」

 エリオネルが嬉しそうに微笑む。それに何だかドキドキしてしまって、下を向いた。
 ちらっと上向くと、まだエリオネルは微笑んでて、その笑顔が優しすぎてドキドキが止まらない。

「え、と、キリッシュさんは第一王子ですか?第二王子?」

「第二王子だ」

「それじゃあ、上にもう一人居るんですね」

「そうだ。第一王子でなくてガッカリしたか?」

「何でですか?」

 意味がわらなくて、普通に聞き返すと、キリッシュさんが優しく笑った。その笑い方がエリオネルに似ててドキリとする。

「良いなあ、やっぱりマリヤが欲しい」

 欲しいと言われて顔が赤くなった。パタパタと顔を扇いでいると、じーっとエリオネルが俺を見つめているのに気がつく。

「や、あの、これは、違くて」

「可愛いな、マリヤは。俺で赤くなってくれたの?」

 ひーっ、やめて、エリオネルの視線が痛いから!
 恋人の前で他の人の言葉に赤くなるとか、絶対ダメなやつ!

 エリオネルは、席から立つとツカツカ俺の方に歩いてきた。

「ダメだって!エリオネル!やだ!」

 また、人の前でキスとかしようとする!ぐっと、近づいてきたエリオネルの口を抑えると、彼は眉を顰めて怪訝そうな顔をした。
 俺の手を取ると、はーっと大きなため息を吐く。それに胸がきゅうっと痛くなって、苦しくなった。

(何でそんな態度とるの……)

「くっ……」

 エリオネルは呻くと、そのままテントから出て行ってしまった。

「マリヤ?大丈夫か?」

「キリッシュさん……」

 初めてあんな態度取られて、涙がポロポロ出る。

「あ、違っ」

 泣きたいわけじゃないのに、涙が止まらない。止めようとすればするほど、涙が溢れた。

「マリヤ、泣いてもいいんだよ」

 いつの間にか近くにきたキリッシュさんに抱きしめられる。優しい言葉と態度に、余計に泣けてきた。

「う、ぅ……あぁ」

「大丈夫、大丈夫だよ」

 エリオネルは帰ってこなくて、俺はキリッシュさんに涙が止まるまで頭を撫でてもらった。




 エリオネルに避けられたまま3日経った。

 話しかけても上の空でどこかに居なくなるし、夜はエリオネルとキリッシュさん二人で寝て、俺はアキトとリチアさんと寝た。
 まさかエリオネルの天幕から追い出されるとは思わなくて、すごくショックだった。

 アキトとリチアさんはめっちゃ喜んでくれて、二人の間で寝たから夜は寂しさが紛れた。
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