上 下
31 / 147
第二章【旅立ち】

第三十話 魔法

しおりを挟む
 リチアさんは、なぜかキラキラした目で俺を見ていて、対照的にベントさんは化け物でも見るような目で俺を見ていた。

 とりあえず終わったみたいだから、台の上から降りる。
 ベントさんに避けられたのが地味にショックだった。

 しばらくすると、エリオネルと神父さまが帰ってくる。こちらもまたニコニコしているエリオネルと対照的にげっそりとした神父さまが印象的だった。

「ハッキリしたことは言えませんので、差し控えさせていただきますね。ハッキリした測定結果をお望みでしたら、王城での測定しかないでしょう」

「はい!」

 質問があったので、手を上げる。

「何かありましたか?」

「光った石がいっぱいあったのですが、光ったらその属性使えるってことでいいですか?」

 神父さまはなぜかエリオネルの方を見て、エリオネルが頷く。

「そうです。どれが光ったのか、見えなかったので本当にハッキリしたことが言えず、申し訳ないです」

 目の前にあった青と緑と黄色の宝石が光ったのは確実だった。たくさん属性あるって話はあまり聞かなかったけど、皆の反応を見るに珍しいことなんだろう。

「マリヤ、ハッキリした結果にならなくてごめんね」

「いや、エリオネルのせいじゃないし。青と緑と黄色は見えたから、また色々教えて」

「わかった、また教えるね」

 そのあとは、身分証を貰い、登録を済ませた。
 身分証は借りていた指輪型ではなく、シルバーのネックレスだった。表にはマリヤと彫られていて裏には小さい文字で色々書いてある。マリヤという文字も、こちらの文字で書かれており、不思議な感じがした。
 登録は紙での記入だった。俺のはエリオネルが、リチアさんのはベントさんが代筆してくれる。

 リチアさんはまだやることがあるとかで、エリオネルと俺は先に私邸に帰ってきた。


「エリオネル、結局俺の主属性は何だったの?」

「わからなかったみたいだよ、王城で測ればわかるみたいだけど、流石に一般人が城で測らせてもらうのは難しいかな」

「王城って、お城か!?あー、それは無理っぽい」

 そもそもが入れなさそう。

「青と緑と黄色って何の属性だった?」

「水と風と金属性だよ。大まかな分類だと水は治癒、風は移動、金は加工に長けてて、その他にも属性によってできることが色々あるよ」

「水属性治癒なの!?水を使って攻撃とかするのかと思ってた」

「そういう使い方をする人も多いけど、勉強して治癒術を使う人も多いかな」

「へぇー」

「前やった顕現けんげん試しにやってみようか?」

「《顕現》?」

 俺が言葉を発すると、ポワポワと周りが輝き始めた。

 え!?これ、魔法使えたんじゃない!?

 色々な色が淡く光ると、すぐに消えた。前見た魚みたいなのは居なかった。

「マリヤ、、」

 エリオネルは俺に向かって呆然と呟くと、目をギラっとさせた。見たことのない表情に背中がゾクゾクする。

「何今の?」

「精霊だよ。魔法を使う時に助けてくれる存在」

 さっきの表情が嘘のように、エリオネルは優しい顔に戻った。

「あ、じゃあ、前に見た水の精霊と同じやつ?」

「あれは清流だから中級の精霊が現れたんだよ。マリヤも清流でやれば出てくるんじゃないかな?」

「そうなんだ。呪文?みたいなの要らないんだね」

「普通は必要なんだけど、マリヤは特別みたいだね。前にこうやって手を出して、水球って言ってみようか?」

 エリオネルは胸の高さで手を差し出して、手のひらを天井に向けた。真似をして前に手を差し出す。

「《水球》」

 たぷん、と拳大の水が手のひら10cmほど上に現れた。

「エリオネル!できたよ!すごい!」

 俺が興奮していると、エリオネルは優しい笑顔で、本当にすごいと言ってくれた。そのあとは色々試すことになり、私邸の裏庭に来た。

 わかったのは、文脈に言葉が入っていると魔法は発動されず、言葉のみで発すると魔法が発動されるようだった。例えば、顕現するなどはダメで、《顕現》のみ言葉にするといけた。
 また、水球のように下級魔法であればほとんど失敗せずに発動したが、中級以上の難しい魔法や、使い方の難しい魔法は発動しなかった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

モブに転生したはずが、推しに熱烈に愛されています

奈織
BL
腐男子だった僕は、大好きだったBLゲームの世界に転生した。 生まれ変わったのは『王子ルートの悪役令嬢の取り巻き、の婚約者』 ゲームでは名前すら登場しない、明らかなモブである。 顔も地味な僕が主人公たちに関わることはないだろうと思ってたのに、なぜか推しだった公爵子息から熱烈に愛されてしまって…? 自分は地味モブだと思い込んでる上品お色気お兄さん(攻)×クーデレで隠れМな武闘派後輩(受)のお話。 ※エロは後半です ※ムーンライトノベルにも掲載しています

俺は成人してるんだが!?~長命種たちが赤子扱いしてくるが本当に勘弁してほしい~

アイミノ
BL
ブラック企業に務める社畜である鹿野は、ある日突然異世界転移してしまう。転移した先は森のなか、食べる物もなく空腹で途方に暮れているところをエルフの青年に助けられる。 これは長命種ばかりの異世界で、主人公が行く先々「まだ赤子じゃないか!」と言われるのがお決まりになる、少し変わった異世界物語です。 ※BLですがR指定のエッチなシーンはありません、ただ主人公が過剰なくらい可愛がられ、尚且つ主人公や他の登場人物にもカップリングが含まれるため、念の為R15としました。 初投稿ですので至らぬ点が多かったら申し訳ないです。 投稿頻度は亀並です。

風紀“副”委員長はギリギリモブです

柚実
BL
名家の子息ばかりが集まる全寮制の男子校、鳳凰学園。 俺、佐倉伊織はその学園で風紀“副”委員長をしている。 そう、“副”だ。あくまでも“副”。 だから、ここが王道学園だろうがなんだろうが俺はモブでしかない────はずなのに! BL王道学園に入ってしまった男子高校生がモブであろうとしているのに、主要キャラ達から逃げられない話。

腐男子、転生したら最強冒険者に溺愛されてる

リョンコ
BL
僕は、カースト底辺の嫌われ者。 趣味は読書にゲーム、それと最近嵌ってるのがBL。 所謂腐男子ってヤツだ。 自分がゲイな訳じゃない。 ただ、美麗な絵や 物語の切ない描写が好きなだけだ。 そんな僕が、まさか異世界に…… しかも、女の人が1割しかいない世界に... そしてあんなに愛されるなんて、 誰が予想出来ますか!? <冒険者×主人公> 異世界転生して冒険者やりながらたまにイチャイチャしてます。 後半、ファンタジー要素強めです。 色んな神様が登場します。 ※主人公はチートです。 ※BL作品です。女の人は出て来ません。 ※R-18はちょこちょこ有るかも? ※★ガッツリ性描写有りかな! ※☆ソフト性描写。 ※不定期更新です! ※人物紹介にイラストを掲載しました。 ※なろう小説でも投稿しています。

宰相閣下の執愛は、平民の俺だけに向いている

飛鷹
BL
旧題:平民のはずの俺が、規格外の獣人に絡め取られて番になるまでの話 アホな貴族の両親から生まれた『俺』。色々あって、俺の身分は平民だけど、まぁそんな人生も悪くない。 無事に成長して、仕事に就くこともできたのに。 ここ最近、夢に魘されている。もう一ヶ月もの間、毎晩毎晩………。 朝起きたときには忘れてしまっている夢に疲弊している平民『レイ』と、彼を手に入れたくてウズウズしている獣人のお話。 連載の形にしていますが、攻め視点もUPするためなので、多分全2〜3話で完結予定です。 ※6/20追記。 少しレイの過去と気持ちを追加したくて、『連載中』に戻しました。 今迄のお話で完結はしています。なので以降はレイの心情深堀の形となりますので、章を分けて表示します。 1話目はちょっと暗めですが………。 宜しかったらお付き合い下さいませ。 多分、10話前後で終わる予定。軽く読めるように、私としては1話ずつを短めにしております。 ストックが切れるまで、毎日更新予定です。

なんちゃってチートな悪役令息〜イケメン達から逃げ切りたい〜

koko
BL
目を開けるとそこは、紛れもなく異世界でした! ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 前世は、ファッションデザイナーを目指し、専門学校に通っている大学生、僕こと瀬名泉澄。目を開けるとそこは…なんと男同士でも結婚できちゃう異世界でした!しかもシュウェーデル国という国の貴族とやらでとっても偉いウェルトン公爵家の次男です!名前もウェルトン・デューイ・デ・メリア・ラファエルというとっても長い名前に⁉︎ ん?この名前、どっかで聞いたことあるよーな、、あッッーーー⁉︎⁉︎この名前!僕が前世で暇潰しに読んでたBL小説の悪役令息の名前だ!!!ヤバいッッッこのままじゃ前世より短い生涯を終える事になってしまう_:(´ཀ`」 ∠):前世知識チートで短命の元凶イケメン達から逃げ切り、今度こそ長生きしたいと思います!! ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初投稿です。温かい目で見守ってくれると助かります。設定ゆるゆるの予感w誤字脱字あったら是非教えてください!頑張って直します! ⚠︎R18です。R18場面は*で事前にお知らせします。18歳以下の方、苦手な方は自衛お願いします!

不遇な神社の息子は、異世界で溺愛される

雨月 良夜
BL
実家が神社の男子高校生、蘆屋美影(あしやみかげ)。両親が亡くなり、叔父夫婦に引き取られ不遇な生活を送っていた。 叔父に襲われそうになって神社の宝物庫に逃げ込んだ美影は、そのまま眠ってしまう。目を覚ますと、精霊王と名乗る男が話しかけてきた。 神社に封印されていた邪神が、俺のせいで異世界に逃げ込んだ。封印できるのは正当な血を引いた自分だけ。 異世界にトリップした男子高校生が、邪神を封印する旅に出る話です。 騎士団長(執着)×男子高校生(健気受け) シリアスな展開が多めです。 R18ぽい話には※マークをつけております。

社畜サラリーマンの優雅な性奴隷生活

BL
異世界トリップした先は、人間の数が異様に少なく絶滅寸前の世界でした。 草臥れた社畜サラリーマンが性奴隷としてご主人様に可愛がられたり嬲られたり虐められたりする日々の記録です。 露骨な性描写あるのでご注意ください。

処理中です...