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第二章【旅立ち】

第二十六話 バングル

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「いいから頼んだ物出してくれるかな?」

「あ、そうだった。はい、これだろ?」

 エリオネルの出した手のひらに、フレッドさんが手のひらサイズの箱を置く。

「マリヤ、必要だから着けてくれる?」

 そう言って、今度はその箱を開けて俺の方に向けた。中にはシルバーのバングルが入っていた。

「必要なの?」

「声の送受信と、居場所がわかる機能があるから、着けてくれるとありがたいかな」

 へー、そんな便利機能があるんだ。スマホみたいなもんかな。この世界で迷子になったら困りすぎるし、むしろこちらがありがたい。
 受け取って着けると、何だか慣れなくてバングルを訳もなくいじってしまう。

「そこについている魔法石を押すと、私のイヤリングに声が届くようになっているから」

 シンプルなデザインのバングルには、緑色の石がはまっていた。
 この石かな?ポチッと押してバングルを口元に持ってくる。

「エリオネル?」

 バッと顔を背けたエリオネルは、何かを我慢するように拳をギュッと握った。背けた耳が真っ赤になっている。

「おーおー」

 フレッドさんが冷やかすような声を上げた。

「あ、これ、近かった?ごめん、エリオネル」

「いや、大丈夫」

 やっぱりバングル口元に持って行きすぎたんだ。いきなり大きな声で名前呼ばれたら、そりゃくすぐったいよな。
 エリオネルには悪いことをしてしまった。

「忙しいから俺は行くぞー」

 フレッドさんはそう言いながら、後ろ手に手を振ってフロアから出ていった。

「マリヤ、私たちも私邸に戻ろうか」

 エリオネルの言葉に別に反論のない俺は頷く。あ、そういえば、私邸に行ったら久しぶりに1人で寝れるんじゃないか!?
 エリオネルと寝るの嫌じゃないけど、朝になると絶対腕の中に居るから心臓に悪いんだよな。

 おはよう、と至近距離で微笑まれるのは、全身が心臓になってしまったように体にも悪かった。


 私邸に行く間も、色々道案内してくれながら歩く。エリオネルは本当に街のことを色々知っていて、手を繋いでるのも忘れて楽しんだ。

「マリヤ、もっと繋いでいたんだけど、そろそろ私邸に着くから」

 と手を繋いでるのを見せられるまで忘れていたほどだ。
 ごめん、と謝り慌てて手を離す。

「私はあのままでも良かったのだけど」

 本気か冗談かわからない笑顔で、エリオネルが言ったので、軽く脇腹を殴った。エリオネルはハハッと嬉しそうに笑っていて、そんな姿に胸がキュッとなる。
 最近、体がおかしい。今までになったことがない反応ばかりで戸惑う。


 エリオネルの私邸は、思ったよりお屋敷という感じではなかった。6階建の、他よりお庭広めかなくらいの建物で、それでも周辺の建物に比べたら随分と大きい。
 表の庭は花がたくさん咲いていて、手入れが大変そうだった。

 カランカランと玄関ベルを鳴らすと、ラブラドさんが出迎えてくれた。
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