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第二章【旅立ち】

第二十五話 フレッド

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「マリヤ、王都は人が多いから、手を繋いでもいいかな?」

 いきなりエリオネルがそんなことを言い出すものだから、びっくりしてしまった。男同士で?

 いや、できたら繋ぎたくないけど、どう見ても人でごった返してて、迷子にならならい自信がない。

「わ、わかった」

 繋いでみたら、案外気持ち悪くなかった。そういえばこの世界は同性婚もあるからだろうか、変な目で見られることはあまりなかったと思う。

 エリオネルがすごく上機嫌なのが気になるけど、お店に入ったら手は離してくれたし、手を繋ぐのは本当に迷子防止らしかった。

「エリオネルは、王都のことよく知ってるんだね」

「ああ、結構来たことがあるから」

「そうなんだ、色々教えてな」

 手を繋いで改めて思ったが、エリオネルめちゃくちゃ背が高い。180は超えてるんじゃなかろうか?
 俺がそんなに高くないのもあるけど、、

 いいなー、こんな整った顔で長身で優しいとか。完璧かよ。

「マリヤ、知り合いの店に寄ってもいい?」

「うん、全然いいよ」

 エリオネルの知り合いの店とやらは、案外近くにあって、それは魔道具屋だった。
 エリアシスとは比べ物にならないほど大きくて高級そうな店だ。

「ジルコン様、ようこそいらっしゃいました。本日はどのようなご用件で?」

「紙とペン貸してくれるかな?」

 エリオネルは借りたペンで、ささっと何か書くと店員さんに渡した。

「少々お待ちくださいませ」

 店員さんは少し目を丸くしていたが、さっと奥に引っ込んだ。

「マリヤは、何か欲しい物ない?」

「んー、何があるかわからないから要らない。でも、ちょっと見てもいい?」

 店員さんを待つ間、お店の商品を眺める。王都だけあって、本当に沢山の商品が並んである。

 見たことのある物も並んでいるが、初めて見る商品が沢山あった。

 全体的にキャンプ用品や、家で使う物が多いように感じる。キャンプ用品は冒険者用だったりするのだろうか?以前見た集水機は売れ筋のようで、在庫が後ろに並んでいた。

 高い商品で、小結界という商品を見つけた。

「エリオネル、小結界ってどんな道具?」

「ああ、小さな虫や魔物が入ってこないようにする道具だよ。野営や、部屋の中で寝る時に使うかな」

 へえー、虫嫌いの人はぜひ欲しいアイテムだな。俺は別にあまり気にしないタイプだから大丈夫だけど。

 その後も、これはあれはと色々質問したけど、嫌な顔一つせず答えてくれた。


「エ リ オ ネ ル!」

 いきなりエリオネルの背後から、ガバッと肩に手を組んできた人がいて、ビックリしてしまった。

「フレッド、気持ち悪いから離して」

 エリオネルは心底嫌そうな顔をして腕を外す。フレッドと呼ばれた男は、エリオネルに負けない長身で、オレンジ色の髪をしたいかにもチャラ男だった。

「ふーん、へー」

 と言いながら、俺のことを頭からつま先までジロジロ見る。失礼すぎない?

「やめろ」

 エリオネルが怒気を含んだ声でそう言った。肩がビクリと跳ねる。

「違うよ、マリヤに言ったんじゃないよ」

 優しい声で頭を撫でられる。エリオネル怒ったりできたんだ、という方にビックリして意識が彼方へ行ってしまっていた。
 何とかうんと頷くと、エリオネルはバッと失礼な人の方に振り向いた。

「ちょっとこっちへ来て」

 二人は俺から離れた所に行ってしまう。エリオネルが何か怒って、そのあと諦めたようにため息をついたのが見えた。
 知り合いって言ってたし、友だちかな?

 二人はギリギリ聞こえない距離で何かを話して、終わったのか戻って来た。

「マリヤ、こちらは私の知り合いのフレッド」

「えー!親友じゃん!!」

 面倒くさそうな顔をしたエリオネルに、そんな顔もめちゃくちゃカッコいいな、と的外れなことを考える。
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