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第二章【旅立ち】

第二十三話 王都へ

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 それから、ココノ村の人たちにお別れを行って、王都に向かった。
 最初に村に来たときの悲壮感はなく、みんな笑って見送ってくれた。

 馬車の中で、エリオネルは字を教えてくれた。すぐには読めないけど、頑張って練習しようと思う。

 何気ない会話も挟みながら、勉強しているとガタッと馬車が止まった。いきなり止まるなんて初めてだ。

「マリヤ、動かないで」

「うん」

「ウオオオオオーーー!!!」

 野太い叫び声と共に剣を弾く金属音が聞こえて来た。

 今、バーナーみたいな音聞こえたけど、魔法かな?!

「大丈夫だよ、野盗だと思うけど、100人居ても倒せるから」

 エリオネルの言葉通り、激しかった音はすぐに呻き声だけになった。

「終わった?」

 我慢できなくて、窓を覗くと、野盗の頭と体がサヨナラしていた。

 初めて見た死体に一気に具合が悪くなる。

「マリヤ!大丈夫?」

 エリオネルが隣で背中をさすってくれる。

「エリオネル様、鎮圧ちんあつしました。残りは捕縛ほばくして衛兵へ引き渡します」

「そうしてくれ」

 役に立たないどころか、足を引っ張る形になって非常に申し訳ない。

「初めてなら仕方ないよ」

 と言ってくれる、エリオネルの優しさが辛い。


 王都に着くまでには、それから二日かかった。

 野盗は10人ほど捕まっていて、配慮してくれたのか、俺の近くに来ることはなかった。

 遠目で見た限り全体的に汚れていて、服は古着をビリビリにした感じだった。3、40代に見えたけど、顔が黒ずんでいてよくわからない。

 野宿ばかりだったけど、寝起きはエリオネルのベッド付き天幕だったので、全然問題なかった。


 王都が近づいてくると、行き交う馬車も増え、道が広くなっていった。

 大きな城壁がぐるりと囲み、尖塔せんとうや建物が上から顔を出していた。視界に収まりきらない大きさにビックリする。

 城壁自体見るのが初めてかもしれない。大きな円柱の塔が二つ立っていて、その間に大きな門がある。
 門は左右に開閉するタイプで、今は開け放してあるようだ。

 見える限りでは門番が5人居て、その内3人で荷物や人をチェックして、終わったら門をくぐるらしい。入るグループをチェックしている門番が3人居るから、内側の王都から出てくるグループをチェックしている門番が内側に3人居るかもしれない。

 残りの2人は、門の左右で立っていて、甲冑を着ている。チェック待ちはかなり居て、門にたどり着くまでにすごく時間がかかりそうだ。

 と言っても、俺たちのような大人数の一行は居ないみたいだった。それでも10以上居るグループをチェックするのは大変な作業だろう。


 俺たちもグループの後ろに付くのかと思いきや、俺の乗って居る馬車は長い行列をスルーして、門から出てくるグループを右から追い越していく。因みに入り待ちのグループは左側に並んでいた。

「え!?追い越してるけど!?」

「ああ、大丈夫だよ。私たちだけ先に入るんだ」

 アリアムさんの馬が先行して行く。アリアムさんと、この馬車の御者ぎょしゃの二人、エリオネルと俺だけが行く形になる。

 俺、身分証も何も持ってないのに?!

「はい、マリヤ」

「え?何?」

「身分証だよ。王都に入ってから、きちんとした物を作るけど、それまで持ってて」

 出した両手には、小さな指輪がコロンと転がった。カードとかじゃないんだ。

 銀色で、人差し指にピッタリ入る。何か文字が書かれているが、小さくて全然読めない。
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