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第一章【出会い】
第十一話 邂逅
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そっと、目を開けると、振り下ろそうとしていた人の鞭を受け止める人が居た。
「やり過ぎだな」
逆光で顔が見えないが、止めてくれたみたい。
黒髪の子から体を離すと、絶望したような表情でガタガタ震えていた。
「どうしたの?」
「ごめんなさい、ごめんなさいごめんなさい」
背中には、鞭で打たれたであろう複数の傷があり、そこから血が出ている。こんな酷いこと、この国では普通なの?
「何なんだ!お前ら!!コイツは俺の物だぞ!」
「解っている。その奴隷を引き取りたい。金貨200枚支払おう」
やっぱり、奴隷なんだ……
「200枚って……亜人が買えるじゃねぇか……」
「奴隷には衣食住を与えた方がよく働く。人を使う人間ならば、有用に使った方がいい」
黒髪の子に、俺が着ていた上着を着せると、立ち上がって助けてくれた人を見た。
「ありがとうございました……」
目を合わせた瞬間、時が止まったかと思った。
不思議な藍色の髪と紫色の瞳……
スラリと伸びた手足と、身なりのよい格好。王子様という言葉がピッタリだった。
この人がご主人様なら、悪いようにはしないだろう。
「貴方のような人は初めてだ……」
じっと見つめられて言葉をかけられ、心臓が跳ねる。
いや、待って心臓どうした?
「マリヤ!」
ビオルナさんとアイシャさんが走ってきた。
「まさか、間に入るなんて!私がちゃんと説明していれば……」
「説明されてても助けに来てたと思う」
二人が驚きの表情を見せる。だって、あれはさすがに酷すぎると思うんだ。
「マジか……」
ビオルナさんの呟きに苦笑する。
「ごめんね、二人とも」
「私は、この子を手当てしてきます。また、後ほど」
俺の肩をポンとして、王子様は去っていった。
後ほどって何だ?初対面で、こんなに人が居るのに、不可能じゃね?
「私こそ、すまない……護衛失格だな」
「いやー、あれは自分から厄介に飛び込んで行ったので、無効ということで」
周りを見てみると、フードを被った人達の左足に枷がはめてあった。
でも、着ている物も、体格も黒髪の子とは雲泥の差だった。それに、あの子は両手両足に枷がしてあった。
「どうしてあんな……」
「黒髪は、魔族が持っている闇属性を持っていて、力が強すぎてコントロールが難しいんです。それこそ、富裕層でなければ育てられないくらいに……」
「え?じゃあ、俺ヤバいんじゃ……」
「マリヤさんは、黒髪なのに闇属性を全く感じないらしいので、大丈夫だと思います」
「そうなんですか?」
「はい、神父さまが言っていたので、間違いはないかと。闇魔法探知の魔道具でも引っかかってないですし」
「魔道具?!教会にそんなんあったんですか?」
「ありましたよ。教会の玄関についてます」
それで、国に引き渡さなかったのかな?ということは、闇魔法は使えないってこと?響きからして、あまり使いたくないけど。
「へぇ、この国は教会にそんなものがついてるのか」
「多分この国でも珍しいと思います。中級以上の魔道具はすごく高くて、専門性があるので」
中級以上ということは、初級なら探せばあるのかな?
「そうだ!魔道具とか、ポーションとか見に行ってみたいんですけど、お祭りの間って開いてますかね?」
「開いてますよ。かき入れ時ですからね」
「私も他国の、見てみたいな」
あると知ったら、やっぱり見てみたいよね。魔道具ってどんなんだろう。
魔道具は高いってことだったけど、ポーションはどのくらいなんだろう?
「私も行ったことなくて、今日は色々行ってみましょう」
アイシャさん、買い物めちゃめちゃ早いなっていつも思ってたけど、ウインドウショッピングとかしなさそうだもんな。
この街に住んでて、俺より多分年上なのにお祭り来たことないとか……
あ、目から汗が……
「やり過ぎだな」
逆光で顔が見えないが、止めてくれたみたい。
黒髪の子から体を離すと、絶望したような表情でガタガタ震えていた。
「どうしたの?」
「ごめんなさい、ごめんなさいごめんなさい」
背中には、鞭で打たれたであろう複数の傷があり、そこから血が出ている。こんな酷いこと、この国では普通なの?
「何なんだ!お前ら!!コイツは俺の物だぞ!」
「解っている。その奴隷を引き取りたい。金貨200枚支払おう」
やっぱり、奴隷なんだ……
「200枚って……亜人が買えるじゃねぇか……」
「奴隷には衣食住を与えた方がよく働く。人を使う人間ならば、有用に使った方がいい」
黒髪の子に、俺が着ていた上着を着せると、立ち上がって助けてくれた人を見た。
「ありがとうございました……」
目を合わせた瞬間、時が止まったかと思った。
不思議な藍色の髪と紫色の瞳……
スラリと伸びた手足と、身なりのよい格好。王子様という言葉がピッタリだった。
この人がご主人様なら、悪いようにはしないだろう。
「貴方のような人は初めてだ……」
じっと見つめられて言葉をかけられ、心臓が跳ねる。
いや、待って心臓どうした?
「マリヤ!」
ビオルナさんとアイシャさんが走ってきた。
「まさか、間に入るなんて!私がちゃんと説明していれば……」
「説明されてても助けに来てたと思う」
二人が驚きの表情を見せる。だって、あれはさすがに酷すぎると思うんだ。
「マジか……」
ビオルナさんの呟きに苦笑する。
「ごめんね、二人とも」
「私は、この子を手当てしてきます。また、後ほど」
俺の肩をポンとして、王子様は去っていった。
後ほどって何だ?初対面で、こんなに人が居るのに、不可能じゃね?
「私こそ、すまない……護衛失格だな」
「いやー、あれは自分から厄介に飛び込んで行ったので、無効ということで」
周りを見てみると、フードを被った人達の左足に枷がはめてあった。
でも、着ている物も、体格も黒髪の子とは雲泥の差だった。それに、あの子は両手両足に枷がしてあった。
「どうしてあんな……」
「黒髪は、魔族が持っている闇属性を持っていて、力が強すぎてコントロールが難しいんです。それこそ、富裕層でなければ育てられないくらいに……」
「え?じゃあ、俺ヤバいんじゃ……」
「マリヤさんは、黒髪なのに闇属性を全く感じないらしいので、大丈夫だと思います」
「そうなんですか?」
「はい、神父さまが言っていたので、間違いはないかと。闇魔法探知の魔道具でも引っかかってないですし」
「魔道具?!教会にそんなんあったんですか?」
「ありましたよ。教会の玄関についてます」
それで、国に引き渡さなかったのかな?ということは、闇魔法は使えないってこと?響きからして、あまり使いたくないけど。
「へぇ、この国は教会にそんなものがついてるのか」
「多分この国でも珍しいと思います。中級以上の魔道具はすごく高くて、専門性があるので」
中級以上ということは、初級なら探せばあるのかな?
「そうだ!魔道具とか、ポーションとか見に行ってみたいんですけど、お祭りの間って開いてますかね?」
「開いてますよ。かき入れ時ですからね」
「私も他国の、見てみたいな」
あると知ったら、やっぱり見てみたいよね。魔道具ってどんなんだろう。
魔道具は高いってことだったけど、ポーションはどのくらいなんだろう?
「私も行ったことなくて、今日は色々行ってみましょう」
アイシャさん、買い物めちゃめちゃ早いなっていつも思ってたけど、ウインドウショッピングとかしなさそうだもんな。
この街に住んでて、俺より多分年上なのにお祭り来たことないとか……
あ、目から汗が……
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