7 / 147
第一章【出会い】
第六話 初めてのポーション
しおりを挟む
神父さまによると、一行が来るのは明々後日以降になるそうで、明後日開かれるお祭りにアイシャさんと行くことになった。
神父さまは教会を長く離れられないらしく、アイシャさんもお祭りに行くのは初めてなんだそうだ。
「楽しみですね!行ったことなくて、気になってたんです!」
あの後、アイシャさんはいつも以上に普通に接してくれた。
少し寂しさを感じるのは、身勝手だろうか……
「どういったお祭りなんですか?」
「イシス様をお祭りする、豊穣のお祭りで、ここエリアシスでは一番大きなお祭りなんですよ」
「へぇー」
この国はどうやら複数の神様が居て、その神様たちと生活が密接に繋がっているらしい。
教会での暮らしは、特に魔法など使ったりせず、少し不便なこともあるが、思ったよりも快適だった。
電気が無い生活に慣れるのに少しかかったが、水道もあるし、別段問題はない。
「あの、マリヤさん……、お祭りで何かあるといけないので、髪の色を変えるポーションを飲んでいただけませんか?!」
一気にそう言ったアイシャさんは、ものすごく申し訳なさそうにしている。
「はい、そういうのがあるならぜひ」
アイシャさんと神父さまは、俺が黒髪だと知っても捕まえたり何かしようとはしなかった。
ここまでお世話になっておいて、今さら信用しないもないと思うし。
「ごめんなさい……、でも、どうしてだかお祭りに行けば解ると思いますので……」
「?」
黒髪を教会が捕まえるという話が本当なら、捕まえてない神父さまたちにご迷惑がかかるだろうし、当然だと思う。
でも、お祭りで何が解るんだろ?
俺の小さな疑問は、祭り当日最悪な形で解けることになる。
この世界の人じゃない俺がポーション、薬みたいな物を飲むことに一抹の不安が残る。
食べ物で異変はないから、大丈夫だと思うけど……
スマホのカメラで見ながら飲もう!多分、電池は持つはず。
スマホの起動音に何故だかすごい焦りながら、内カメラで自分を映した。
「よし!」
ぐいっとポーションを煽り、画面を凝視する。
髪のてっぺんから異変が現れる。
ヤバい、まじで変わり始めた……
青というか、水色のような色に変わっていく髪。浸食するように変わっていく様は、本当に異世界に居るんだという実感になった。
前髪を摘まんで、直接見てみると、陽に輝いてキラキラした水色だった。
「お、終わりました」
ドアの前で待ってくれていたアイシャさんに声をかける。
「わー!準属性、水なんですね!マリヤさん!」
「準属性……?」
「主属性が自分が一番持っている魔法の属性で、準属性が二番目の属性です。あのポーションは、準属性の色が発現するようになっていて、自分の準属性を調べるために使ったりもするんですよ」
「え……ということは、俺……魔法使えるんですか?」
「使えると思いますよ!」
マジかよ……
「アイシャさんは、何属性なんですか?」
「私は、土です……」
「それって、どんな魔法が使えるんですか?」
「私の場合は、植物との相性が良くて、上手に……育て……られ、るとか……」
「ほう、今のお仕事にすごく向いてますね!」
ここ数日で、自給自足といかないまでも、この教会ではたくさんの野菜を育てていることがわかった。
その仕事は、ほとんどアイシャさんが担っている。
神父さまは毎日のように教会に来る患者さんを治癒しているようだった。神父さまは、ここでは医者のような役割なのだと思う。病院が無いって言っていたし。
アイシャさんは、神父さまのサポートや窓口などをしながら、野菜を育てている。
どう見ても働きすぎだと思うのだが、本人は自分が役立たずだと思っているらしく、たまに自信なさげな表情を浮かべていた。
「や、あの……野菜は趣味なので……」
「え、趣味であの量育ててるんですか!?
あれ?でも、神父さまも仕事って言ってましたよ」
普通の農家くらいの野菜あったけど……
「神父さまはお優しいから……」
「いやいやいや!優しさじゃなくて、立派な仕事ですよ!」
「でも……育てるしか能がないので……」
「えー!神父さまのサポートまでしてるのに、アイシャさん自信なさすぎですって!逆に働きすぎですよ」
初めてそんなことを言われたというように、アイシャさんが顔をあげた。
「お世辞でも嬉しいです」
にっこり笑うアイシャさんに、何だかすごく悲しくなった。
「国民のほとんどが、私のような魔法が使えます。それどころか、火や水など準属性があるのが当たり前なのです」
「へぇ」
「私は、単属性の……」
アイシャさんは悲しそうな顔をして、黙ってしまった。
「この世界は大変なんですね。前に居た世界では、アイシャさんは完全に働きすぎです」
「マリヤさん……」
ニッコリ微笑むと、やっとアイシャさんが笑ってくれた。
「神父さまも、完全に働きすぎですけどね」
「そうなんです!しかも、私が来るまで一人でお仕事されてたんですよ!」
「ふぁ……!?じゃあ、余計にアイシャさんが居てよかったですね」
アイシャさんは、また驚いた顔になると、ポロポロと涙をこぼし始めた。
焦った俺は、シャツで涙をふいてあげながら、ゆっくり話を聞いた。
神父さまは教会を長く離れられないらしく、アイシャさんもお祭りに行くのは初めてなんだそうだ。
「楽しみですね!行ったことなくて、気になってたんです!」
あの後、アイシャさんはいつも以上に普通に接してくれた。
少し寂しさを感じるのは、身勝手だろうか……
「どういったお祭りなんですか?」
「イシス様をお祭りする、豊穣のお祭りで、ここエリアシスでは一番大きなお祭りなんですよ」
「へぇー」
この国はどうやら複数の神様が居て、その神様たちと生活が密接に繋がっているらしい。
教会での暮らしは、特に魔法など使ったりせず、少し不便なこともあるが、思ったよりも快適だった。
電気が無い生活に慣れるのに少しかかったが、水道もあるし、別段問題はない。
「あの、マリヤさん……、お祭りで何かあるといけないので、髪の色を変えるポーションを飲んでいただけませんか?!」
一気にそう言ったアイシャさんは、ものすごく申し訳なさそうにしている。
「はい、そういうのがあるならぜひ」
アイシャさんと神父さまは、俺が黒髪だと知っても捕まえたり何かしようとはしなかった。
ここまでお世話になっておいて、今さら信用しないもないと思うし。
「ごめんなさい……、でも、どうしてだかお祭りに行けば解ると思いますので……」
「?」
黒髪を教会が捕まえるという話が本当なら、捕まえてない神父さまたちにご迷惑がかかるだろうし、当然だと思う。
でも、お祭りで何が解るんだろ?
俺の小さな疑問は、祭り当日最悪な形で解けることになる。
この世界の人じゃない俺がポーション、薬みたいな物を飲むことに一抹の不安が残る。
食べ物で異変はないから、大丈夫だと思うけど……
スマホのカメラで見ながら飲もう!多分、電池は持つはず。
スマホの起動音に何故だかすごい焦りながら、内カメラで自分を映した。
「よし!」
ぐいっとポーションを煽り、画面を凝視する。
髪のてっぺんから異変が現れる。
ヤバい、まじで変わり始めた……
青というか、水色のような色に変わっていく髪。浸食するように変わっていく様は、本当に異世界に居るんだという実感になった。
前髪を摘まんで、直接見てみると、陽に輝いてキラキラした水色だった。
「お、終わりました」
ドアの前で待ってくれていたアイシャさんに声をかける。
「わー!準属性、水なんですね!マリヤさん!」
「準属性……?」
「主属性が自分が一番持っている魔法の属性で、準属性が二番目の属性です。あのポーションは、準属性の色が発現するようになっていて、自分の準属性を調べるために使ったりもするんですよ」
「え……ということは、俺……魔法使えるんですか?」
「使えると思いますよ!」
マジかよ……
「アイシャさんは、何属性なんですか?」
「私は、土です……」
「それって、どんな魔法が使えるんですか?」
「私の場合は、植物との相性が良くて、上手に……育て……られ、るとか……」
「ほう、今のお仕事にすごく向いてますね!」
ここ数日で、自給自足といかないまでも、この教会ではたくさんの野菜を育てていることがわかった。
その仕事は、ほとんどアイシャさんが担っている。
神父さまは毎日のように教会に来る患者さんを治癒しているようだった。神父さまは、ここでは医者のような役割なのだと思う。病院が無いって言っていたし。
アイシャさんは、神父さまのサポートや窓口などをしながら、野菜を育てている。
どう見ても働きすぎだと思うのだが、本人は自分が役立たずだと思っているらしく、たまに自信なさげな表情を浮かべていた。
「や、あの……野菜は趣味なので……」
「え、趣味であの量育ててるんですか!?
あれ?でも、神父さまも仕事って言ってましたよ」
普通の農家くらいの野菜あったけど……
「神父さまはお優しいから……」
「いやいやいや!優しさじゃなくて、立派な仕事ですよ!」
「でも……育てるしか能がないので……」
「えー!神父さまのサポートまでしてるのに、アイシャさん自信なさすぎですって!逆に働きすぎですよ」
初めてそんなことを言われたというように、アイシャさんが顔をあげた。
「お世辞でも嬉しいです」
にっこり笑うアイシャさんに、何だかすごく悲しくなった。
「国民のほとんどが、私のような魔法が使えます。それどころか、火や水など準属性があるのが当たり前なのです」
「へぇ」
「私は、単属性の……」
アイシャさんは悲しそうな顔をして、黙ってしまった。
「この世界は大変なんですね。前に居た世界では、アイシャさんは完全に働きすぎです」
「マリヤさん……」
ニッコリ微笑むと、やっとアイシャさんが笑ってくれた。
「神父さまも、完全に働きすぎですけどね」
「そうなんです!しかも、私が来るまで一人でお仕事されてたんですよ!」
「ふぁ……!?じゃあ、余計にアイシャさんが居てよかったですね」
アイシャさんは、また驚いた顔になると、ポロポロと涙をこぼし始めた。
焦った俺は、シャツで涙をふいてあげながら、ゆっくり話を聞いた。
1
お気に入りに追加
180
あなたにおすすめの小説
大好きなBLゲームの世界に転生したので、最推しの隣に居座り続けます。 〜名も無き君への献身〜
7ズ
BL
異世界BLゲーム『救済のマリアージュ』。通称:Qマリには、普通のBLゲームには無い闇堕ちルートと言うものが存在していた。
攻略対象の為に手を汚す事さえ厭わない主人公闇堕ちルートは、闇の腐女子の心を掴み、大ヒットした。
そして、そのゲームにハートを打ち抜かれた光の腐女子の中にも闇堕ちルートに最推しを持つ者が居た。
しかし、大規模なファンコミュニティであっても彼女の推しについて好意的に話す者は居ない。
彼女の推しは、攻略対象の養父。ろくでなしで飲んだくれ。表ルートでは事故で命を落とし、闇堕ちルートで主人公によって殺されてしまう。
どのルートでも死の運命が確約されている名も無きキャラクターへ異常な執着と愛情をたった一人で注いでいる孤独な彼女。
ある日、眠りから目覚めたら、彼女はQマリの世界へ幼い少年の姿で転生してしまった。
異常な執着と愛情を現実へと持ち出した彼女は、最推しである養父の設定に秘められた真実を知る事となった。
果たして彼女は、死の運命から彼を救い出す事が出来るのか──?
ーーーーーーーーーーーー
狂気的なまでに一途な男(in腐女子)×名無しの訳あり飲兵衛
【完結】魔王様は勇者激推し!
福の島
BL
魔国のいちばん高い城、その一番奥に鎮座するのは孤高の魔王…ではなく限りなく優しいホワイト社長だった。
日本から転生し、魔王になった社畜は天性のオタクで魔王の力というチート持ち。
この世界でも誰か推せないかなぁとか思っていると…
…居た、勇者だ!!!
元虐められっ子イケメン勇者×少し抜けてるオタク魔王
男性妊娠はおまけ❶から
またおまけ含めて1万字前後です。
雪狐 氷の王子は番の黒豹騎士に溺愛される
Noah
BL
【祝・書籍化!!!】令和3年5月11日(木)
読者の皆様のおかげです。ありがとうございます!!
黒猫を庇って派手に死んだら、白いふわもこに転生していた。
死を望むほど過酷な奴隷からスタートの異世界生活。
闇オークションで競り落とされてから獣人の国の王族の養子に。
そこから都合良く幸せになれるはずも無く、様々な問題がショタ(のちに美青年)に降り注ぐ。
BLよりもファンタジー色の方が濃くなってしまいましたが、最後に何とかBLできました(?)…
連載は令和2年12月13日(日)に完結致しました。
拙い部分の目立つ作品ですが、楽しんで頂けたなら幸いです。
Noah
召喚先は腕の中〜異世界の花嫁〜【完結】
クリム
BL
僕は毒を飲まされ死の淵にいた。思い出すのは優雅なのに野性味のある獣人の血を引くジーンとの出会い。
「私は君を召喚したことを後悔していない。君はどうだい、アキラ?」
実年齢二十歳、製薬会社勤務している僕は、特殊な体質を持つが故発育不全で、十歳程度の姿形のままだ。
ある日僕は、製薬会社に侵入した男ジーンに異世界へ連れて行かれてしまう。僕はジーンに魅了され、ジーンの為にそばにいることに決めた。
天然主人公視点一人称と、それ以外の神視点三人称が、部分的にあります。スパダリ要素です。全体に甘々ですが、主人公への気の毒な程の残酷シーンあります。
このお話は、拙著
『巨人族の花嫁』
『婚約破棄王子は魔獣の子を孕む』
の続作になります。
主人公の一人ジーンは『巨人族の花嫁』主人公タークの高齢出産の果ての子供になります。
重要な世界観として男女共に平等に子を成すため、宿り木に赤ん坊の実がなります。しかし、一部の王国のみ腹実として、男女平等に出産することも可能です。そんなこんなをご理解いただいた上、お楽しみください。
★なろう完結後、指摘を受けた部分を変更しました。変更に伴い、若干の内容変化が伴います。こちらではpc作品を削除し、新たにこちらで再構成したものをアップしていきます。
Switch!〜僕とイケメンな地獄の裁判官様の溺愛異世界冒険記〜
天咲 琴葉
BL
幼い頃から精霊や神々の姿が見えていた悠理。
彼は美しい神社で、家族や仲間達に愛され、幸せに暮らしていた。
しかし、ある日、『燃える様な真紅の瞳』をした男と出逢ったことで、彼の運命は大きく変化していく。
幾重にも襲い掛かる運命の荒波の果て、悠理は一度解けてしまった絆を結び直せるのか――。
運命に翻弄されても尚、出逢い続ける――宿命と絆の和風ファンタジー。
光る穴に落ちたら、そこは異世界でした。
みぃ
BL
自宅マンションへ帰る途中の道に淡い光を見つけ、なに? と確かめるために近づいてみると気付けば落ちていて、ぽん、と異世界に放り出された大学生が、年下の騎士に拾われる話。
生活脳力のある主人公が、生活能力のない年下騎士の抜けてるとこや、美しく格好いいのにかわいいってなんだ!? とギャップにもだえながら、ゆるく仲良く暮らしていきます。
何もかも、ふわふわゆるゆる。ですが、描写はなくても主人公は受け、騎士は攻めです。
エロゲ世界のモブに転生したオレの一生のお願い!
たまむし
BL
大学受験に失敗して引きこもりニートになっていた湯島秋央は、二階の自室から転落して死んだ……はずが、直前までプレイしていたR18ゲームの世界に転移してしまった!
せっかくの異世界なのに、アキオは主人公のイケメン騎士でもヒロインでもなく、ゲーム序盤で退場するモブになっていて、いきなり投獄されてしまう。
失意の中、アキオは自分の身体から大事なもの(ち●ちん)がなくなっていることに気付く。
「オレは大事なものを取り戻して、エロゲの世界で女の子とエッチなことをする!」
アキオは固い決意を胸に、獄中で知り合った男と協力して牢を抜け出し、冒険の旅に出る。
でも、なぜかお色気イベントは全部男相手に発生するし、モブのはずが世界の命運を変えるアイテムを手にしてしまう。
ちん●んと世界、男と女、どっちを選ぶ? どうする、アキオ!?
完結済み番外編、連載中続編があります。「ファタリタ物語」でタグ検索していただければ出てきますので、そちらもどうぞ!
※同一内容をムーンライトノベルズにも投稿しています※
pixivリクエストボックスでイメージイラストを依頼して描いていただきました。
https://www.pixiv.net/artworks/105819552
異世界日帰りごはん【料理で王国の胃袋を掴みます!】
ちっき
ファンタジー
異世界に行った所で政治改革やら出来るわけでもなくチートも俺TUEEEE!も無く暇な時に異世界ぷらぷら遊びに行く日常にちょっとだけ楽しみが増える程度のスパイスを振りかけて。そんな気分でおでかけしてるのに王国でドタパタと、スパイスってそれ何万スコヴィルですか!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる