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クローディア嬢の場合〜婚約破棄失敗編〜

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皆さんは修道院という場所をご存知だろうか?
よくラノベなどで婚約破棄をされたら修道院に行くしか道がないなどと表現されるアレである。
一般的にキリスト教の修道士、修道女が一定の戒律に基づき清貧、貞潔、服従の誓いを立て
それぞれに共同生活を送る場所がそれである。
修道士、修道女は共に生涯独身であることが求められるため、異性との接触を無くすべく修道院から出ることなく生涯を過ごすのだという。
つまりはそれさえ守れていれば、三食昼寝付きの悠々自適なニート生活が満喫できる素晴らしい場所なのだ。
え?昼寝はついてない?残念………。
侵入者対策として警備まで万全なので、当然自宅警備の必要もない。
"淑女の嗜み"以外手持ちの武器がない貴族のご令嬢が、仕事に着けるわけでもなく嫁の貰い手もなく辿り着く場所なのだ。
よって娯楽はないが、仕事を強要されることもない。
なにより男がいない最高の場所。
何故こんな話をするかって?
それはね……………。 



私はラノベのテッパンネタである、まさかの異世界転生をした。
これが私事ではなく他人事なら笑えたのだが、選りに選って可愛い我が身だ。
笑えるわけがない。
そしてまるでそうであることが当然かのように、テッパンの悪役令嬢に生まれ変わった。
そもそも乙女ゲームなんて人為的に作られた仮想世界に生まれるなんて非常識な異常事態、二次元の文書だから許されるのだ。
現実で起こっていい事象では決してない。
いやいやそんな馬鹿なと頬をつねりつつ、
何度も世界観を確かめてみたものの、私の知る乙女ゲームの登場人物3D版達が身辺を固めていたものだから、疑う余地もほぼほぼ無いってモノだろう。
案の定私の政略婚の婚約者が決まり、他の悪役令嬢達も次々と攻略対象者と婚約が決まっていき、後はゲーム開始を待つばかりとなったのだった。
そこで私は遂に悟りを開いたのだ。
二次元男子をこよなく愛する喪女だった私には、愛せもしないリアルガチ男子のために婚約破棄を免れるための努力はできないだろう、と。
しかしゲームの世界といえど貴族社会の在り方は忠実に再現されており、私は貴族のご令嬢の務めとしての政略結婚は果たさなければならなかった。
自ら喪女と自負するだけあって当然男性とお付き合いしたことはないし、寧ろ2Dの美しい男子だけを愛でたい私としては御免被りたい事態だ。
そこで"逃げちゃダメだ!"などと頑張らず、あっさり現実逃避した私を豆腐メンタルだと笑い飛ばすがいい。
私は幸運にも今世の家族には跡取りの兄はいるし、政略結婚の駒に相応しい美人の妹もいる。
ならば私一人くらいお家の役に立てず、婚約破棄されても大丈夫なのではなかろうか?
そう思ったのだ。
こうして私は"そうだ、修道院にいこう"と思いたったのだった。
そこで話は冒頭へと戻る。


私にはマティアス様という婚約者がいる。
私は彼と婚約破棄をするためにヒロインを虐める予定だったのだが、これまたテッパンの展開でヒロインも転生者だったのだ。
なんともイタい感じのヒロインちゃん(名前をミリア様と言う)だったのだが、彼女は奇遇にもマティアス様ルートをご希望だったので喜んで協力してあげることにした。
お互いの利害が一致していたため、争うことなく平和的に互いの役を演じきることができた。
そしていざ婚約破棄の大舞台を迎えようとした当日、一つ大きな問題が発生した。
マティアス様がヒロインを選ばずに、まさかの婚約続行を希望してきたのだ。
………何故だ?


「マティアス様、貴方はミリア様がお好きなのでしょう?何故私との婚約を継続しようとお思いになったんですの?」
訳が分からなかったので直球で聞いてみた。
すると
「クローディア、俺はミリア嬢とは何でもないと何度も言っているだろう?そして俺は一貴族としてお家同士の結びつきに必要な務めはきちんと果たすつもりだ。愛だの恋だの浮ついた気持ちは一切不要だ」
とクールに言い切った。
そうだった。
彼はクーデレ属性の攻略対象者だった。
私は婚約者だが恋愛対象ではないため、彼がデレた顔など見たことないが。
ゲームのような略奪愛はやはり現実的ではないのかしら?
いや、実際は略奪愛ではないのだけれど。
こうなったら意地でも婚約破棄してやろうと思ってしまうのは、人のサガか己のサガかは定かではない。


「あーーん、もう!なんでマティアス様は攻略できなかったのー!?」
「サッパリ分からないわ。そもそも選択肢イベントを完璧にこなしたはずなのに、スチルが全く回収できなかったのも解せないわ。好感度ゲージが目に見えないのは不便ね」
今日はミリア様とお茶会と称したプチコスプレパーティーをしている。
前世基準で考えるとドレスは普通にコスプレなので貴族令嬢の私たちには今更感がハンパないのだが、ゴスロリ風味増し増しで猫耳尻尾を足したことで気分を盛り上げることに成功したのだ。
因みにミリア様は白ゴス・ウサ耳である。
今や運命共同体となった私達は、月に2~3回程度こうやってストレス発散がてら作戦会議をしている。
「もう時間がないわ、ミリア様。所詮はマティアス様も男、色仕掛けで陥落させるのはどうかしら?」
「うーーん……、でもマティアス様がデレるのって飼い猫のクロの前だけなんですよねぇ。色仕掛けしたところで白い目で見られそうっていうかー、玉砕しそう?」
「そんなこと言わないで頑張ってくださいまし!私の夢のニート生活がかかってるのよ!?あぁほら、マティアス様が猫好きなら、私の猫耳カチューシャ付けてみるのはどう?」
「えーー?でもぉ、金髪の私より、黒髪のクローディア様の方が黒猫耳お似合いですよぉ?」
「私が似合っても意味ないじゃない。あぁ、もうどうしたら………」
こうやってあーでもないこーでもないと実りのない会話でお茶会は数時間が経ち、流石にお開きにしなければならない時間となってしまった。
ミリア様をお見送りした後お茶会をしていた中庭のテラスに戻ると、何故かマティアス様がいて、通常では考えられないほど和かに私に話しかけてきた。
「やぁ、クローディア。今日は君に菓子を買ってきたんだ。一緒に食べないかい?」
…………………誰だコイツ?
マティアス様の姿はしているが、中の人が別人すぎてワロス。
私の目の錯覚でなければ、蕩けるような笑顔で語りかけている。
………………まさか………、これがデレなのか?
ヤツに一体何があった?
「それはそうと、君達は面白いことをしているんだね」
ん?何のことだ?
「最初に見たときは衝撃的だったが、こうして間近で見るとなんとも…………」
ハッ!!
そういや猫耳取ってない!!
しかもゴスロリ風味のフリル増し増しドレスだった!!!
「………………ちょっと着替えてまいります」
「いや、是非そのままで」
「殿方にお見せする姿では「俺がいいと言ってるんだからいいじゃないか」……………」
コイツ……………、猫フェチか………?
それともフリフリフェチ?
いや、しかしこれはお得情報だ。
ミリア様に横流しして早速色仕掛けの作戦を立てないと。
俄然やる気が出てきたので早急にミリア様に手紙を書きたいのだが、何故かマティアス様が行く手を阻んでいる。
「あの、通してくださいません?」
「クローディア、俺達はこれから夫婦になるのだから、もっと親睦を深めないか?」
「結構です。この際ぶっちゃけますが、私、婚約破棄したいんです。貴方に嫌われたいんです。深めたいのは親睦ではなく溝なんです」
マティアス様はさすがに予想外だったのか一瞬だけ目を丸めたが、さすがのクールさですぐに冷静さを取り戻した。
「それはどうして?」
「え?それは私が修道院に行きたいからですわ!」
「何故?」
「三食昼寝付きでかつ仕事をしなくていいからです」
「妻になれば大体そんな生活だろう?」
「家を切り盛りしなければならないじゃないですか。使用人を纏め上げる能力も必要ですし、他のご婦人を屋敷に招いて情報収集のための茶会もしなければなりません」
「茶会などたいした手間でもないだろう?」
「馬鹿言っちゃいけません。茶会はお客様が屋敷に入った瞬間から戦端の幕が切って落とされるのです。家具や調度品のセンスが問われ、茶葉や菓子の品質を品定めされ、主催者としての会話術の良し悪しまで評価の対象になるのです。寧ろ膨大な手間をかけて茶会は行われるのです」
「………そうか、悪かった。その辺は優秀な家令がいるから、使用人の統括の件も含めて善処しよう。それならいいか?」
「あと最大の理由は、私が殿方が苦手だからですわ」
「………苦手なのか?俺が、ではなく、男性が?」
「はい、貴方様個人ではなく男性全般です」
どうだ、これなら善処のしようがなかろうて。
個人に恨みを買わないようオブラートに包みつつ、自己主張もキッチリさせてもらうことを忘れない。
私は全力で修道院行きを勝ち取ると決めたのだ。
是非とも結婚を諦めてほしい。
「…………しかし、君が鞭打ちや断食の修行を望んでいるとは知らなかったよ」
「………………………………………………え?」
鞭?断食?ナニソレオイシイノ?
「修道院では欲に負けない精神を身につけるために、身体に鞭を打ったり断食をしたりするんだけど……知らなかったのか?」
き、聞いてない!!
現代社会でそんな時代遅れな修行なんて………ってここは異世界だった!
前世の知識として昔の修道院では確かにそんな修行もあったらしいと聞いたことはあるが、現在の修道院ではそこまで厳しい生活ではないと聞いていた。
まさか貴族社会が主流の世界は、その厳しかった時代に該当するのだろうか?
あまりの予想との食い違いに戦々恐々としていると、マティアス様がそれはそれは神々しい微笑みで私にこう提案してきた。
「とりあえず俺の要望を一つだけ叶えてくれれば、君に無理強いはしないし、三食昼寝付きの生活も保証しよう。どうする?婚約破棄をする?それとも…………」
私は前世の両親に教えられたことがある。

タダより怖いものなどない、と。



「さぁ、おいでクロ」
目の前には蕩ける微笑みでデレているマティアス様。
あれから結局婚約破棄に失敗?というか挫折をし、私はマティアス様と結婚をした。
マティアス様は約束通り三食昼寝付きの悠々自適なニート生活をさせてくれ、概ね文句のつけようがない結婚生活を送れている。
ただ一つのことを除いて。
「に、ニャー………」
マティアス様の要望の予想は大体ついていた。
いや、寧ろそれしかないだろうと分かり切っていた。
現在黒のフリル増し増しベビードールを纏い、これまた黒の猫耳尻尾を着用している私。
ただでさえ夜のお勤めは羞恥心半端ないのに、とんだ変態プレイを要求されて羞恥心は倍増どころかゲージを振り切る勢いだ。
私はミリア様も猫耳が似合うと主張したのだが、マティアス様には拘りがあって黒猫がいいのだそうで………。
何故ヒロインを黒髪にしなかった、運営!!
確かに金髪に黒耳は毛並み的に変だ。
だからって………だからって!!!!
「ほら、可愛がってあげるから、早くおいで」
ヤツのクーデレ設定はどこ行った!?
空の彼方か!?
コスプレパーティー発覚の夜以降、彼には私が黒猫にしか見えなくなってしまったらしく、デレた顔しか見せなくなった。
デレはたまに見せるからグッとくるのだ。
万年デレではクーデレ設定の魅力も半減ってものだろう。
私があまりの羞恥心に動けずプルプル震えていると、何を勘違いしたのか自ら側に寄ってきてこう申した。
「焦らしてるのか?そうやってツンツンしているのも気まぐれな猫らしくて可愛いな。意地でも懐かせたくなる………」
ギャーーーー!!やめれ!!!


なんだかんだ言っても、甘く淫らな変態プレイがあっても。
私をとても大事にしてくれるマティアス様との結婚は幸せと言ってもいいのかもしれないと、最近少しだけ思うようになったのだった。










※※※

修道院では歴史的に本当に鞭打ちや断食の修行をしていた時代もあったそうです。
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