23 / 27
いざ、決戦の場へ
しおりを挟む
馬車は豪奢な屋敷が多く並ぶ貴族の住居区を抜け、町外れの少し寂れた印象を受ける一軒の屋敷の前で停車する。
アンナの問題は一先ず置いといて、今は目先のことに集中せねば。
ミシェルは無事なんだろうか?
一刻も早く無事を確認したい。
私はある作戦を決行するために、一度公爵家によってもらい変装をしてきている。
正直成功するかどうかは分からない。
ナターシャ様が協力を申し出てくれたので、遠慮なくお願いした。
「ほう、これは見事ですね。」
「そうでしょう?
職人が丹精込めて作った一点物ですのよ。」
「こちらを侯爵様にお渡しすればよろしいのですか?」
「ええ、侯爵様はアンティーク人形の収集家でしたわね?
以前その話を伺ったときに、侯爵様にお譲りする約束をいたしましたの。
きっとお気に召されるかと思いますわ。」
「賜りました。
侯爵様もさぞお喜びになられるでしょう。」
通った!
なんの疑いもなく人形の贈答品で通った!
以前王宮での夜会で着たドレスを身に纏い、人形のフリして潜入することにしたのだ。
夜会ではそんな馬鹿なと半信半疑だったが、門番の彼はすっかり騙されてくれたのだから、私の人形っぷりはなかなか完璧なのかもしれない。
こんな事に役立つ日がくるとは思ってもみなかったが……。
馬車の中で現場に向かいながら、ナターシャ様が侯爵についていろいろ情報を提供してくれた。
さすが一流のご令嬢だけあって情報通だったのだが、侯爵がアンティーク人形の収集家だと聞いて閃いたのだ。
ジーク様とカイザー様には猛反対されたがここは譲れない。
ジーク様はため息を一つつくと、条件を出してきた。
「貴女の熱意は伝わりました。
ですが条件として、俺を荷物持ちの使用人として付けてください。
貴女をみすみす危険に晒すわけにはいかない。」
キュン……。
だから不謹慎だって!
「そ、それなら俺が…」
「お前は大柄で目つきが悪いから警戒される。」
身もふたもない指摘に、カイザー様がションボリなさってる。
戦いに行けないのがそんなにショックだなんて、血の気が多い方なのかな?
結局カイザー様には、侯爵家の周囲を包囲するための、騎士団の陣頭指揮をとってもらうことになった。
ジーク様が使用人扱いなのは大変申し訳ないが、1人で立ち回るのにも不安がある。
ならば有難くお言葉に甘えるべきだ。
一刻の猶予もない。
正面突破をしてもミシェルの命を盾にとられたら元も子もない。
他に名案も浮かばない。
上手くいく保証もないが、僅かでも可能性があるならそれに賭けるしかないと思う。
今日は父が訪れているため、来客は全て追い返されてるようだ。
だが贈答品なら中に入れる。
侯爵が人形コレクターであることを熟知している使用人なら、迷わず通してくれると踏んだのだ。
ジーク様を通すかは一か八かの賭けだったが、取り扱いが繊細だからと押し切って付いてきてもらうことに成功した。
門番の青年は、使用人が侯爵に許可をもらいに行っている待ち時間に、ジッとクリスティナを見つめる。
「最近のアンティークドールは精巧に出来てんだなぁ。」
ば、バレる!?
ヤバい……背中から変な汗出てきた……。
「なかなか俺好みな顔立ちだなぁ……。」
ギャッ!へ、変な事しないよね!?
「あと少し胸がデカければ言うことないのになぁ……。」
……事件が片付いたらシバいていいよね?
クリスティナの放つ殺気に、ジークは苦笑いを漏らす。
ジークが「追々自分がその胸を育ててやらねば」と、けしからん事を考えていたことなど彼女は知らない。
アンナの問題は一先ず置いといて、今は目先のことに集中せねば。
ミシェルは無事なんだろうか?
一刻も早く無事を確認したい。
私はある作戦を決行するために、一度公爵家によってもらい変装をしてきている。
正直成功するかどうかは分からない。
ナターシャ様が協力を申し出てくれたので、遠慮なくお願いした。
「ほう、これは見事ですね。」
「そうでしょう?
職人が丹精込めて作った一点物ですのよ。」
「こちらを侯爵様にお渡しすればよろしいのですか?」
「ええ、侯爵様はアンティーク人形の収集家でしたわね?
以前その話を伺ったときに、侯爵様にお譲りする約束をいたしましたの。
きっとお気に召されるかと思いますわ。」
「賜りました。
侯爵様もさぞお喜びになられるでしょう。」
通った!
なんの疑いもなく人形の贈答品で通った!
以前王宮での夜会で着たドレスを身に纏い、人形のフリして潜入することにしたのだ。
夜会ではそんな馬鹿なと半信半疑だったが、門番の彼はすっかり騙されてくれたのだから、私の人形っぷりはなかなか完璧なのかもしれない。
こんな事に役立つ日がくるとは思ってもみなかったが……。
馬車の中で現場に向かいながら、ナターシャ様が侯爵についていろいろ情報を提供してくれた。
さすが一流のご令嬢だけあって情報通だったのだが、侯爵がアンティーク人形の収集家だと聞いて閃いたのだ。
ジーク様とカイザー様には猛反対されたがここは譲れない。
ジーク様はため息を一つつくと、条件を出してきた。
「貴女の熱意は伝わりました。
ですが条件として、俺を荷物持ちの使用人として付けてください。
貴女をみすみす危険に晒すわけにはいかない。」
キュン……。
だから不謹慎だって!
「そ、それなら俺が…」
「お前は大柄で目つきが悪いから警戒される。」
身もふたもない指摘に、カイザー様がションボリなさってる。
戦いに行けないのがそんなにショックだなんて、血の気が多い方なのかな?
結局カイザー様には、侯爵家の周囲を包囲するための、騎士団の陣頭指揮をとってもらうことになった。
ジーク様が使用人扱いなのは大変申し訳ないが、1人で立ち回るのにも不安がある。
ならば有難くお言葉に甘えるべきだ。
一刻の猶予もない。
正面突破をしてもミシェルの命を盾にとられたら元も子もない。
他に名案も浮かばない。
上手くいく保証もないが、僅かでも可能性があるならそれに賭けるしかないと思う。
今日は父が訪れているため、来客は全て追い返されてるようだ。
だが贈答品なら中に入れる。
侯爵が人形コレクターであることを熟知している使用人なら、迷わず通してくれると踏んだのだ。
ジーク様を通すかは一か八かの賭けだったが、取り扱いが繊細だからと押し切って付いてきてもらうことに成功した。
門番の青年は、使用人が侯爵に許可をもらいに行っている待ち時間に、ジッとクリスティナを見つめる。
「最近のアンティークドールは精巧に出来てんだなぁ。」
ば、バレる!?
ヤバい……背中から変な汗出てきた……。
「なかなか俺好みな顔立ちだなぁ……。」
ギャッ!へ、変な事しないよね!?
「あと少し胸がデカければ言うことないのになぁ……。」
……事件が片付いたらシバいていいよね?
クリスティナの放つ殺気に、ジークは苦笑いを漏らす。
ジークが「追々自分がその胸を育ててやらねば」と、けしからん事を考えていたことなど彼女は知らない。
33
お気に入りに追加
4,782
あなたにおすすめの小説
【完結】もう一度やり直したいんです〜すれ違い契約夫婦は異国で再スタートする〜
四片霞彩
恋愛
「貴女の残りの命を私に下さい。貴女の命を有益に使います」
度重なる上司からのパワーハラスメントに耐え切れなくなった日向小春(ひなたこはる)が橋の上から身投げしようとした時、止めてくれたのは弁護士の若佐楓(わかさかえで)だった。
事情を知った楓に会社を訴えるように勧められるが、裁判費用が無い事を理由に小春は裁判を断り、再び身を投げようとする。
しかし追いかけてきた楓に再度止められると、裁判を無償で引き受ける条件として、契約結婚を提案されたのだった。
楓は所属している事務所の所長から、孫娘との結婚を勧められて困っており、 それを断る為にも、一時的に結婚してくれる相手が必要であった。
その代わり、もし小春が相手役を引き受けてくれるなら、裁判に必要な費用を貰わずに、無償で引き受けるとも。
ただ死ぬくらいなら、最後くらい、誰かの役に立ってから死のうと考えた小春は、楓と契約結婚をする事になったのだった。
その後、楓の結婚は回避するが、小春が会社を訴えた裁判は敗訴し、退職を余儀なくされた。
敗訴した事をきっかけに、裁判を引き受けてくれた楓との仲がすれ違うようになり、やがて国際弁護士になる為、楓は一人でニューヨークに旅立ったのだった。
それから、3年が経ったある日。
日本にいた小春の元に、突然楓から離婚届が送られてくる。
「私は若佐先生の事を何も知らない」
このまま離婚していいのか悩んだ小春は、荷物をまとめると、ニューヨーク行きの飛行機に乗る。
目的を果たした後も、契約結婚を解消しなかった楓の真意を知る為にもーー。
❄︎
※他サイトにも掲載しています。
政略結婚だけど溺愛されてます
紗夏
恋愛
隣国との同盟の証として、その国の王太子の元に嫁ぐことになったソフィア。
結婚して1年経っても未だ形ばかりの妻だ。
ソフィアは彼を愛しているのに…。
夫のセオドアはソフィアを大事にはしても、愛してはくれない。
だがこの結婚にはソフィアも知らない事情があって…?!
不器用夫婦のすれ違いストーリーです。
国王陛下、私のことは忘れて幸せになって下さい。
ひかり芽衣
恋愛
同じ年で幼馴染のシュイルツとアンウェイは、小さい頃から将来は国王・王妃となり国を治め、国民の幸せを守り続ける誓いを立て教育を受けて来た。
即位後、穏やかな生活を送っていた2人だったが、婚姻5年が経っても子宝に恵まれなかった。
そこで、跡継ぎを作る為に側室を迎え入れることとなるが、この側室ができた人間だったのだ。
国の未来と皆の幸せを願い、王妃は身を引くことを決意する。
⭐︎2人の恋の行く末をどうぞ一緒に見守って下さいませ⭐︎
※初執筆&投稿で拙い点があるとは思いますが頑張ります!
婚約者にフラれたので、復讐しようと思います
紗夏
恋愛
御園咲良28才
同期の彼氏と結婚まであと3か月――
幸せだと思っていたのに、ある日突然、私の幸せは音を立てて崩れた
婚約者の宮本透にフラれたのだ、それも完膚なきまでに
同じオフィスの後輩に寝取られた挙句、デキ婚なんて絶対許さない
これから、彼とあの女に復讐してやろうと思います
けれど…復讐ってどうやればいいんだろう
悪役令嬢はお断りです
あみにあ
恋愛
あの日、初めて王子を見た瞬間、私は全てを思い出した。
この世界が前世で大好きだった小説と類似している事実を————。
その小説は王子と侍女との切ない恋物語。
そして私はというと……小説に登場する悪役令嬢だった。
侍女に執拗な虐めを繰り返し、最後は断罪されてしまう哀れな令嬢。
このまま進めば断罪コースは確定。
寒い牢屋で孤独に過ごすなんて、そんなの嫌だ。
何とかしないと。
でもせっかく大好きだった小説のストーリー……王子から離れ見られないのは悲しい。
そう思い飛び出した言葉が、王子の護衛騎士へ志願することだった。
剣も持ったことのない温室育ちの令嬢が
女の騎士がいないこの世界で、初の女騎士になるべく奮闘していきます。
そんな小説の世界に転生した令嬢の恋物語。
●表紙イラスト:San+様(Twitterアカウント@San_plus_)
●毎日21時更新(サクサク進みます)
●全四部構成:133話完結+おまけ(2021年4月2日 21時完結)
(第一章16話完結/第二章44話完結/第三章78話完結/第四章133話で完結)。
【完結】公女が死んだ、その後のこと
杜野秋人
恋愛
【第17回恋愛小説大賞 奨励賞受賞しました!】
「お母様……」
冷たく薄暗く、不潔で不快な地下の罪人牢で、彼女は独り、亡き母に語りかける。その掌の中には、ひと粒の小さな白い錠剤。
古ぼけた簡易寝台に座り、彼女はそのままゆっくりと、覚悟を決めたように横たわる。
「言いつけを、守ります」
最期にそう呟いて、彼女は震える手で錠剤を口に含み、そのまま飲み下した。
こうして、第二王子ボアネルジェスの婚約者でありカストリア公爵家の次期女公爵でもある公女オフィーリアは、獄中にて自ら命を断った。
そして彼女の死後、その影響はマケダニア王国の王宮内外の至るところで噴出した。
「ええい、公務が回らん!オフィーリアは何をやっている!?」
「殿下は何を仰せか!すでに公女は儚くなられたでしょうが!」
「くっ……、な、ならば蘇生させ」
「あれから何日経つとお思いで!?お気は確かか!」
「何故だ!何故この私が裁かれねばならん!」
「そうよ!お父様も私も何も悪くないわ!悪いのは全部お義姉さまよ!」
「…………申し開きがあるのなら、今ここではなく取り調べと裁判の場で存分に申すがよいわ。⸺連れて行け」
「まっ、待て!話を」
「嫌ぁ〜!」
「今さら何しに戻ってきたかね先々代様。わしらはもう、公女さま以外にお仕えする気も従う気もないんじゃがな?」
「なっ……貴様!領主たる儂の言うことが聞けんと」
「領主だったのは亡くなった女公さまとその娘の公女さまじゃ。あの方らはあんたと違って、わしら領民を第一に考えて下さった。あんたと違ってな!」
「くっ……!」
「なっ、譲位せよだと!?」
「本国の決定にございます。これ以上の混迷は連邦友邦にまで悪影響を与えかねないと。⸺潔く観念なさいませ。さあ、ご署名を」
「おのれ、謀りおったか!」
「…………父上が悪いのですよ。あの時止めてさえいれば、彼女は死なずに済んだのに」
◆人が亡くなる描写、及びベッドシーンがあるのでR15で。生々しい表現は避けています。
◆公女が亡くなってからが本番。なので最初の方、恋愛要素はほぼありません。最後はちゃんとジャンル:恋愛です。
◆ドアマットヒロインを書こうとしたはずが。どうしてこうなった?
◆作中の演出として自死のシーンがありますが、決して推奨し助長するものではありません。早まっちゃう前に然るべき窓口に一言相談を。
◆作者の作品は特に断りなき場合、基本的に同一の世界観に基づいています。が、他作品とリンクする予定は特にありません。本作単品でお楽しみ頂けます。
◆この作品は小説家になろうでも公開します。
◆24/2/17、HOTランキング女性向け1位!?1位は初ですありがとうございます!
旦那様は大変忙しいお方なのです
あねもね
恋愛
レオナルド・サルヴェール侯爵と政略結婚することになった私、リゼット・クレージュ。
しかし、その当人が結婚式に現れません。
侍従長が言うことには「旦那様は大変忙しいお方なのです」
呆気にとられたものの、こらえつつ、いざ侯爵家で生活することになっても、お目にかかれない。
相変わらず侍従長のお言葉は「旦那様は大変忙しいお方なのです」のみ。
我慢の限界が――来ました。
そちらがその気ならこちらにも考えがあります。
さあ。腕が鳴りますよ!
※視点がころころ変わります。
※※2021年10月1日、HOTランキング1位となりました。お読みいただいている皆様方、誠にありがとうございます。
嘘つきな唇〜もう貴方のことは必要ありません〜
みおな
恋愛
伯爵令嬢のジュエルは、王太子であるシリウスから求婚され、王太子妃になるべく日々努力していた。
そんなある日、ジュエルはシリウスが一人の女性と抱き合っているのを見てしまう。
その日以来、何度も何度も彼女との逢瀬を重ねるシリウス。
そんなに彼女が好きなのなら、彼女を王太子妃にすれば良い。
ジュエルが何度そう言っても、シリウスは「彼女は友人だよ」と繰り返すばかり。
堂々と嘘をつくシリウスにジュエルは・・・
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる