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天然フラグクラッシャー

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「クリスティナ様ーーー!!」
ハッと我に帰りジーク様にようやく降ろしてもらい、捕らえられていた屋敷を出たところでナターシャ様がダイブしてきた。
なになに?どうしたの!?
「ナターシャ、いったいどう…」
「お兄様、これからスターイン侯爵家に向かうのでしょう?
こちらの馬車で私達も向かいますので、クリスティナ様をお貸しくださいませ!」
「おい!」
言うが早いか、そのまま馬車の中に引きずり込まれた。

「私のせいではありませんのよ?」
んん?何が?
「とりあえず落ち着いてください。
何があったのか順序立てて話してください。」
「今回のイベントは私が企てたイベントではないのです!」
「あぁ、乙女ゲームの事ですか?」
ナターシャ様は一息つくと事のあらましを語り始めた。
つまりはこうだ。
ゲームでのナターシャ様は正しく悪役なので、ヒロイン(背中がムズムズする)を陥れるためにスターイン侯爵に誘拐を示唆するらしい。
上手くいけばヒロイン(ムズムズ…)を亡き者にでき、それが失敗してもツヴァイ公爵家が多大な負債を抱え没落し、王太子であるカイン様の婚約者候補から外れると目論んだからだ。
だがゲーム内では黒幕としてナターシャ様が関わっていたことが明るみになり、ナターシャ様は罪に問われ、断罪される流れとなる。
現実での私はカイン様ルートを選んでないので、ナターシャ様も出番はなく、安心しきっていたところに今回の誘拐事件がおきた。
当然ナターシャ様には寝耳に水の出来事だったので、慌てて釈明に駆けつけたのだそうだ。
「へー、なんだか昼ドラみたいな展開ですね。」
「乙女ゲームが昼ドラ……。」
「そうだ!あらすじをご存知なら、その侯爵をとっ捕まえる方法があるのではないですか?」
「残念だけど詳細は丸ごとカットだったのよね。
製作スタッフの手抜きかしら?」
まさかの手抜き!
現実は甘くない……。
「攻略対象別にライバルとのイベントがあるから、気をつけなければいけませんわね。」
「………そういえば気になったんですけど、ほかの攻略者の方々にもライバルは登場するんですか?」
「ええ、カイザー様にはブラコンの義理の妹が。
お兄様には婚約者の男爵令嬢がライバルになりますわね。」
「えぇ!!ジーク様には婚約者様がいらっしゃるのですか!?」
あぁ、短い初恋だった……。
ズキズキ痛む胸を押さえていると、ナターシャ様はこう申した。
「それがどういうわけか件の男爵令嬢が現れませんでしたの。
だからお兄様はいまだにフリーですわ。
ゲームでは行儀見習いとしてスペンサー家で侍女になり、器量のいい男爵令嬢をお父様が気に入り婚約するはずたったのですわ。」
あ、ありがとう!!
そのご令嬢には申し訳ないが、争いごとが苦手な私としてはジーク様を巡って戦いたくない。
むしろ婚約者なのだから、争ったらそれは略奪じゃないか。
物語だからドラマチックに盛り上がるのだろうが、現実でやったら常識外れもいいとこだ。
どこにいるか分からないご令嬢に心の中で感謝し、密かにホッと胸を撫で下ろした。
「男爵にそれとなく探りを入れてみたのだけど、10歳の頃から侍女として働いてる貴族の家から帰ってこないんですって、アンナ男爵令嬢。」

…………………んんん???

「い、今なんと……?」
「え?アンナ男爵令嬢がどうかしまして?」

驚愕の事実だ。
男爵家は身分的に低いので、男爵令嬢は行儀見習いとして王宮や高位貴族の侍女として働く事が多い。
そしてアンナは間違いなく男爵令嬢だ。
まさかアンナがジーク様の婚約者(予定)だったなんて……。
そういやアンナが我が家での行儀見習いを終える頃から虐待が始まったんだっけ。
私は実家に戻るように言ったのだけど、私がちゃんと幸せになるまで居座ってやるとアンナは豪語していた。
た、多分あのアンナで間違いない。

優しく器量よく美人で推定Dカップのアンナがライバルとか、まるで勝てる気がしない……。
隣に並べばジーク様のお相手として、申し分ないくらいお似合いだろう……。(涙目)
だが物語の内容は大幅に変わってしまった。
アンナの幸せな未来を潰してしまったかもしれないと考えると、申し訳なさが勝って素直に喜べない複雑な心境になったのだった。
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