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第九章 邂逅のとき

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「炎の女神、レダを母に海神、レオニスを父に持つ、わたしがアレス。エルダ伯父上から子供たちの話は聞いていて、一度逢いたいと思っていたんだ」

「「「子供たち•・・.」」」

 三人がぽかんと呟いて、この疑問には精霊が答えた。

「レダさまから聞いただけですけれど、エルダさまは地上に残された神族のことを、特に長の家系の人々のことは、ご自分の子供だとおっしゃっているそうです」

「風神エルダが?」

「ふうん。ボクらのことも忘れたわけじゃなかったんだね。これだけ血が離れると身内だと認めていないんじゃないかって思っていたけど」

 呆気らかんと口にするリオネスを見て、アレスが小さく笑った。

「なに? ボクの顔になにかついてる?」

「いや。エルダ伯父上に似ているなと思って」

「へえ。意外。ボクが一番似てるんだ?」

 そこまで言ってからリオネスも笑った。

 ぶっきまでの険悪なムードはどこへやらという雰囲気だったが、それでも忘れたわけではいらしい。

 エルシアが改めてアレスに声を投げた。

「ところでアレス?」

 神族としては直接、女神と海神を両親に持つアレスの方が血は濃いし、立場だって上なのだが、エルシアも歴史あるエルダ神族の長として譲るつもりはなかった。

 対等に話しかけられて、アレスが彼を見る。

 だが、怒っているようには見えない。

 意味を掴みかねるような、不思議そうな顔だった。

「今までに力を使った経験は?」

 唐突な問いに驚いた顔をしてから、アレスはちょっと首を傾げた。

 なにか悩んでいるようである。

 アレスの子供みたいな一面を知っているだけに、亜樹は気が気じゃなかった。

「三回、いや。四回だったかな。いや。五回のような気も」

「どっちなの? それ?」

 さすがにリオネスも呆れている。

 自分のことなのにあやふやなアレスに。

「どう…...だっただろう? ファラ?」

 何故そこで精霊に確認を取るかと、亜樹も怒鳴りそうになった。

 自分のことだろうと。

 すべての者の感想だったらしく、神族絡みなら無関係とばかりに、無視していた一樹まで呆れたような顔をしていた。

 本当は食始の神々が絡んでいるなら、一樹も無関係ではないのだが、それを明らかにできない以上、今は知らないフリをするしかなかったから。

「今のを計算に入れると七回よ。この半年で。覚えてよ、お願いだから」

 なんだか精霊まで情けなさそうである。

 これで歳相応の格好をしていたら、亜樹も子供のことだからと庇えるのだが、なまじ姿だけは一人前だから困る。

 亜樹よりデカイくせして、なんだ?

 この頼りなさは。

 それからアレスの立場を自分に置き換えてみて、初めて亜樹は理解した。

 エルシアたちが力のコントロールに重きを置く意味を。

 確かに無意識とはいえ、さっきみたいな事態を何度も起こしたら、それはもうすでに立派な武器だ。

 亜樹にもあんな力があるのなら、コントロールはできた方がいい。

 でなければアレスの二の舞である。

 今はエルシアたちが相手だったから、アレスの攻撃もなんとか凌いだが、普通はそうはいかないだろうから。
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