58 / 130
第九章 邂逅のとき
(8)
しおりを挟む
「炎の女神、レダを母に海神、レオニスを父に持つ、わたしがアレス。エルダ伯父上から子供たちの話は聞いていて、一度逢いたいと思っていたんだ」
「「「子供たち•・・.」」」
三人がぽかんと呟いて、この疑問には精霊が答えた。
「レダさまから聞いただけですけれど、エルダさまは地上に残された神族のことを、特に長の家系の人々のことは、ご自分の子供だとおっしゃっているそうです」
「風神エルダが?」
「ふうん。ボクらのことも忘れたわけじゃなかったんだね。これだけ血が離れると身内だと認めていないんじゃないかって思っていたけど」
呆気らかんと口にするリオネスを見て、アレスが小さく笑った。
「なに? ボクの顔になにかついてる?」
「いや。エルダ伯父上に似ているなと思って」
「へえ。意外。ボクが一番似てるんだ?」
そこまで言ってからリオネスも笑った。
ぶっきまでの険悪なムードはどこへやらという雰囲気だったが、それでも忘れたわけではいらしい。
エルシアが改めてアレスに声を投げた。
「ところでアレス?」
神族としては直接、女神と海神を両親に持つアレスの方が血は濃いし、立場だって上なのだが、エルシアも歴史あるエルダ神族の長として譲るつもりはなかった。
対等に話しかけられて、アレスが彼を見る。
だが、怒っているようには見えない。
意味を掴みかねるような、不思議そうな顔だった。
「今までに力を使った経験は?」
唐突な問いに驚いた顔をしてから、アレスはちょっと首を傾げた。
なにか悩んでいるようである。
アレスの子供みたいな一面を知っているだけに、亜樹は気が気じゃなかった。
「三回、いや。四回だったかな。いや。五回のような気も」
「どっちなの? それ?」
さすがにリオネスも呆れている。
自分のことなのにあやふやなアレスに。
「どう…...だっただろう? ファラ?」
何故そこで精霊に確認を取るかと、亜樹も怒鳴りそうになった。
自分のことだろうと。
すべての者の感想だったらしく、神族絡みなら無関係とばかりに、無視していた一樹まで呆れたような顔をしていた。
本当は食始の神々が絡んでいるなら、一樹も無関係ではないのだが、それを明らかにできない以上、今は知らないフリをするしかなかったから。
「今のを計算に入れると七回よ。この半年で。覚えてよ、お願いだから」
なんだか精霊まで情けなさそうである。
これで歳相応の格好をしていたら、亜樹も子供のことだからと庇えるのだが、なまじ姿だけは一人前だから困る。
亜樹よりデカイくせして、なんだ?
この頼りなさは。
それからアレスの立場を自分に置き換えてみて、初めて亜樹は理解した。
エルシアたちが力のコントロールに重きを置く意味を。
確かに無意識とはいえ、さっきみたいな事態を何度も起こしたら、それはもうすでに立派な武器だ。
亜樹にもあんな力があるのなら、コントロールはできた方がいい。
でなければアレスの二の舞である。
今はエルシアたちが相手だったから、アレスの攻撃もなんとか凌いだが、普通はそうはいかないだろうから。
「「「子供たち•・・.」」」
三人がぽかんと呟いて、この疑問には精霊が答えた。
「レダさまから聞いただけですけれど、エルダさまは地上に残された神族のことを、特に長の家系の人々のことは、ご自分の子供だとおっしゃっているそうです」
「風神エルダが?」
「ふうん。ボクらのことも忘れたわけじゃなかったんだね。これだけ血が離れると身内だと認めていないんじゃないかって思っていたけど」
呆気らかんと口にするリオネスを見て、アレスが小さく笑った。
「なに? ボクの顔になにかついてる?」
「いや。エルダ伯父上に似ているなと思って」
「へえ。意外。ボクが一番似てるんだ?」
そこまで言ってからリオネスも笑った。
ぶっきまでの険悪なムードはどこへやらという雰囲気だったが、それでも忘れたわけではいらしい。
エルシアが改めてアレスに声を投げた。
「ところでアレス?」
神族としては直接、女神と海神を両親に持つアレスの方が血は濃いし、立場だって上なのだが、エルシアも歴史あるエルダ神族の長として譲るつもりはなかった。
対等に話しかけられて、アレスが彼を見る。
だが、怒っているようには見えない。
意味を掴みかねるような、不思議そうな顔だった。
「今までに力を使った経験は?」
唐突な問いに驚いた顔をしてから、アレスはちょっと首を傾げた。
なにか悩んでいるようである。
アレスの子供みたいな一面を知っているだけに、亜樹は気が気じゃなかった。
「三回、いや。四回だったかな。いや。五回のような気も」
「どっちなの? それ?」
さすがにリオネスも呆れている。
自分のことなのにあやふやなアレスに。
「どう…...だっただろう? ファラ?」
何故そこで精霊に確認を取るかと、亜樹も怒鳴りそうになった。
自分のことだろうと。
すべての者の感想だったらしく、神族絡みなら無関係とばかりに、無視していた一樹まで呆れたような顔をしていた。
本当は食始の神々が絡んでいるなら、一樹も無関係ではないのだが、それを明らかにできない以上、今は知らないフリをするしかなかったから。
「今のを計算に入れると七回よ。この半年で。覚えてよ、お願いだから」
なんだか精霊まで情けなさそうである。
これで歳相応の格好をしていたら、亜樹も子供のことだからと庇えるのだが、なまじ姿だけは一人前だから困る。
亜樹よりデカイくせして、なんだ?
この頼りなさは。
それからアレスの立場を自分に置き換えてみて、初めて亜樹は理解した。
エルシアたちが力のコントロールに重きを置く意味を。
確かに無意識とはいえ、さっきみたいな事態を何度も起こしたら、それはもうすでに立派な武器だ。
亜樹にもあんな力があるのなら、コントロールはできた方がいい。
でなければアレスの二の舞である。
今はエルシアたちが相手だったから、アレスの攻撃もなんとか凌いだが、普通はそうはいかないだろうから。
0
お気に入りに追加
231
あなたにおすすめの小説
溺愛お義兄様を卒業しようと思ったら、、、
ShoTaro
BL
僕・テオドールは、6歳の時にロックス公爵家に引き取られた。
そこから始まった兄・レオナルドの溺愛。
元々貴族ではなく、ただの庶子であるテオドールは、15歳となり、成人まで残すところ一年。独り立ちする計画を立てていた。
兄からの卒業。
レオナルドはそんなことを許すはずもなく、、
全4話で1日1話更新します。
R-18も多少入りますが、最後の1話のみです。
俺が総受けって何かの間違いですよね?
彩ノ華
BL
生まれた時から体が弱く病院生活を送っていた俺。
17歳で死んだ俺だが女神様のおかげで男同志が恋愛をするのが普通だという世界に転生した。
ここで俺は青春と愛情を感じてみたい!
ひっそりと平和な日常を送ります。
待って!俺ってモブだよね…??
女神様が言ってた話では…
このゲームってヒロインが総受けにされるんでしょっ!?
俺ヒロインじゃないから!ヒロインあっちだよ!俺モブだから…!!
平和に日常を過ごさせて〜〜〜!!!(泣)
女神様…俺が総受けって何かの間違いですよね?
モブ(無自覚ヒロイン)がみんなから総愛されるお話です。
【父親視点】悪役令息の弟に転生した俺は今まで愛を知らなかった悪役令息をとことん甘やかします!
匿名希望ショタ
BL
悪役令息の弟に転生した俺は今まで愛を知らなかった悪役令息をとことん甘やかします!の父親視点です。
本編を読んでない方はそちらをご覧になってからの方より楽しめるようになっています。
侯爵令息セドリックの憂鬱な日
めちゅう
BL
第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける———
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。
悪役令息に憑依したけど、別に処刑されても構いません
ちあ
BL
元受験生の俺は、「愛と光の魔法」というBLゲームの悪役令息シアン・シュドレーに憑依(?)してしまう。彼は、主人公殺人未遂で処刑される運命。
俺はそんな運命に立ち向かうでもなく、なるようになる精神で死を待つことを決める。
舞台は、魔法学園。
悪役としての務めを放棄し静かに余生を過ごしたい俺だが、謎の隣国の特待生イブリン・ヴァレントに気に入られる。
なんだかんだでゲームのシナリオに巻き込まれる俺は何度もイブリンに救われ…?
※旧タイトル『愛と死ね』
婚約破棄と言われても・・・
相沢京
BL
「ルークお前とは婚約破棄する!」
と、学園の卒業パーティーで男爵に絡まれた。
しかも、シャルルという奴を嫉んで虐めたとか、記憶にないんだけど・・
よくある婚約破棄の話ですが、楽しんで頂けたら嬉しいです。
***********************************************
誹謗中傷のコメントは却下させていただきます。
目が覚めたら囲まれてました
るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。
燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。
そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。
チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。
不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で!
独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる