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序章
予期しない異世界への召喚
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失いたくない。
ずっとそう思っていた。
相手より自分の方が、きっと何倍もそう思っている。
ずっとそう信じてきた。
でも、今はもうわからない。
どちらが強くそう思っていたかなんて。
ただ今思うのは、
(おいて逝きたくなかった)
(おいて逝かれたくなかった)
ただそればかり。
もしもう一度出逢えるなら、そのときはもう離れない。
離さない。
ふたりを引き裂く運命なら、そんなものいらないっ!!
運命にだって抗ってみせる。
再び共に生きるために。
そう思っていたのに……。
「いない。この世界のどこにもいない。おまえがいないなら、生きていく意味がない!!」
全身全霊で泣き叫んだ。魂が慟哭した。
死んでもいい。
生きていても意味がない。
そう自暴自棄に陥ろうとしたとき、不意に目の前に幻影が浮かんだ。
それは懐かしい愛する人のようでもあり、全然知らない人にもみえた。
それでも永い時を一緒に生きてきた自分だからわかる。
あれは「彼」だ。
『こっちだよ。オレはこっちだよ』
そう言って手招きする人の背後に青く美しい星が浮かび上がる。
そうして思い出した。
自分が転生したのは、そもそもこの世界ではなかったと。
本来、転生できないはずの自分が転生できたのは、おそらく「彼」の影響。
不可能を可能にした「彼」との繋がりは深い。
だったら「彼」が転生したのも、たぶんこの世界ではなく異世界だ。
「思い出した。おれは時空の迷子になって、偶然この世界に戻ってきたんだ」
だから、離ればなれになった。
そう気づいた瞬間、力を放っていた。
自分が転生した世界に戻るために。
愛してくれた人々。
こちらで築いてきた関係。
すべてを放棄して。
これが長く辛い旅の始まり。
育ってきた常識の違う世界に戻っても、待っているのは苦労だけ。
ましてやはぐれてしまった半身を見つけ出すことなんて不可能に近い。
それでも近くにいたかった。
同じ世界の空気を吸っていたい。
そんな願いに突き動かされて。
このときは思いもしなかった。
自分が後にした世界に今度は「彼」の方が迷い込んでしまうなんて……。
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