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第五章 ラスターシャの王子

心優しき妖魔の王

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「ここから出る方法は知らない。」

マメ太はそう言った。

「いや、おしえてよ。」

「分からないんだって。」

「なんでだよ。」

マメ太は、今の状態から本来の姿を取り戻す為に奥に進んだらしい。自分に必要な魔力の源泉があると直感が言っていたそうだ。

「要はマメ太は僕たちを利用したというわけだね。」

「まぁ、うん。」

「いざというときは非常食っと。」

シュウメイはメモメモっ、と手に何かを書くような仕草を見せた。

「いやいやっ、大丈夫。絶対出られる。いやー。実を言うとなんか見覚えがあるんだよなー。」

マメ太が焦る。

「嘘付け非常食。」

「マメ太だよっ。」 

「魔王だよっ。覚えとけよっ。ほんとに。」

カシャ。

足元から不気味な音が聞こえる。

は?

シュウメイ?

「やばい。なんかトラップ引いたかも。」

ゴゴゴゴ。

奥の方から何かが迫ってくる音が聞こえる。

なんだ?

巨大な鉄球が迫ってくる。

「はぁ?」

「逃げるぞー。」

マメ太が真っ先に走り出す。

それに続いて全力で走る。

道を覆う大きさの鉄球。そして一本道のため隠れる場所すらない。鉄球に押しつぶされて死ぬのか。

その時。

「ユア。強化のエンチャントって人体にもできる?」

走りながら叫ぶシュウメイ。

「できるよ。」

「あの鉄球を壊す。」

最大限の強化よろしく。

シュウメイは立ち止まって振り返る。

自分もシュウメイの後ろにつく。

肩に触れる。

目を閉じる。

「おー。さすがっ。なんか力が何倍にもなってる感じ。よっしゃ。」

自分が離れるとすぐにシュウメイは踏み込み。

鉄球に突撃する。

一閃。

僕の目の前で、鉄球は真っ二つになった。

「ふー。」

嫌な汗をかいた。

「ほー。やるねー。」

ちょこちょこと歩いてこちらによってくるマメ太。

「お前、ほんとに魔王か?」

シュウメイがマメ太に顔を近づける。

「知らないからな。魔王に対してそんな態度とって、本来の姿に戻ったら覚えとけよっ。」

「はいはい」

頭をポンポンとする。

「あれ?シュウメイ。大丈夫になった?」

はっ。

シュウメイは慌てて離れる。

「しゃべるから油断した。近づくなよ。」

「近づいたのはオマエダロ。」

マメ太がつぶやいた。

「ふー。ちょっと休憩。」

シュウメイが座り込む。

「そうだね。」

「おまえ。もう疲れたのか?」

マメ太がシュウメイを煽る。

「化け物とは違うの。」

「なんだとぉっ。」

もはや二人の、一人と一匹の喧嘩が微笑ましく思えてきた。

ってあれ。

体がふらついた。

ちょっと疲れちゃった、かも。

ドサッ。



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