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9章
8話 プラーナ過多症
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「ふぅ……」
下半身が軽いのに体が重い。
バルコニーから見上げると、人工太陽の眩しさに目が眩む。
人工太陽の明るさからすると、今は昼過ぎくらいかな。昨晩は、はしゃぎすぎた。
初夜への期待が強い真弘を焦らして焦らしてトロトロにして、脳が焼き切れるギリギリの性感強化を使って鳴かせて泣かせた。
真弘がダウンしたら、氷雨さんが自分の番とばかりにタックルしてきたので、身を任せてみた。
たまには攻められるのもいいけど、やっぱり攻める方が好きだ。
攻守交代してからは早かった。
前二人の醜態にビビって逃げようとした海歌をあーちゃんと一緒に捕まえて、ちょっと強引に攻めたら、男性経験豊富だからと余裕ぶってた割に、ちょっと可哀想なくらい雑魚だった。
たぶん、やりすぎた。ごめん。
トロ顔で迫るベナール村の五人は……いつもの緊縛エロフコースだ。割愛する。
お待ちかねのあーちゃんは、ここまでにヘロヘロになっていて、性感強化を使う前に優しく丁寧に攻めてあげたら、乙女がしてはいけないアへ顔になってしまった。
ここで性感強化を使ってしまうと後遺症が残ってしまうかもしれないので、使わずに抱こうとしたら、さっき捕まった腹いせなのか、ゾンビのような海歌が「やっちゃえ」と圧強めで言うので、やっちゃいました。
たぶん、今日一日はまともに動けないと思う。後遺症が残らないよう祈る。神様に? あーちゃんも神様だったような……うん、考えるのをやめよう。
とりあえず、ユリアーナに祈っておく。
遠くから子供たちのはしゃぐ声が聞こえる。
そういえば、リーゼが産んだ息子は、ラルスと名付けられたそうだ。
年末に産まれたのだけど、生まれつき体が弱いらしく、死産になりかけた所を神々の力でなんとか命を繋いでいる。
「後で様子を見に行くか」
主治医の縁が言うには、完治はするが、あと一月はかかるそうだ。
先天性の病気が数ヶ月という短期間で治るというのがよくわからないけれど、縁が言うのだから間違いはないのだろう。よくわからないけど。
*
朝昼を纏めた食事をして、病院にしている建物へ向かう。
うちでは〈治癒魔法〉を使える人が多いから、病院は必要ないんだけど、主に出産のために使われている建物だ。
と言っても、まだ御影さんとリーゼしか入院してないんだけどね。
その御影さんは母子ともに問題なく退院して、今はリーゼとその息子のラルスが入院中だ。
……の、はずなんだけど……人の気配が……あ、いた。二階の奥の方にいた。
物がなにもないエントランスを抜けて、一番近い階段で二階へ。
誰もいない病院はホラー感が強い。廊下の明かりは弱く薄暗いし、自分の足音がやけに響く。
気配を頼りに一番奥の扉をノックすると、か細い返事がする。
扉を開けて部屋に入ると、明るい部屋の中央に、ガラスの壁に囲まれた小さなベッドが一つ。
ガラスの壁のこちら側に置かれた椅子に座るリーゼが、軽い会釈をする。
顔色が悪い。ちゃんと食べて寝ているのだろうか。綺麗な黒髪も今は艶がないし、狼耳も悲し気に垂れている。頬も少し痩けていて、眠れていないのだろう、目に隈ができている。不健康そうなのに御影さん並みの大きな胸は目立つ。うっかりすると凝視してしまいそうだ。
「具合は?」
「治療は順調です」
「違う。リーゼの具合だ」
「私、ですか?」
「ラルスは、縁が大丈夫と言ったんだから大丈夫だ」
「そう、ですね」
普段のリーゼなら察してくれただろう。
「リーゼ。ラルスは俺が見ておくから、食事して少し休んできな」
「でも……」
弱々しく垂れた狼耳を撫でる。
「俺じゃ頼りないのはわかるけど……」
そう言って、滅多に使わない手鏡をポケットから出してリーゼを映す。
「今のリーゼよりは頼りになれそうだよ」
ラルスが心配で鏡を見る余裕もなかったのだろう。言われて初めて窶れた自分の姿を認識したリーゼは、少し恥ずかしそうに「少し休ませていただきます」と言って病室を出ていった。
リーゼが座っていた椅子に腰を下ろし、ガラス越しにラルスの寝顔を見る。
このガラスは魔力を遮断するらしい。僕の〈支援魔法〉を阻むためだ。
僕の無意識に垂れ流す成長チートが、病気の原因にまで影響を及ぼす可能性があるので、このガラスで防いでいる。
ベッドの上のラルスは、いろんな機械に繋がれている。そのモニター画面には、よくわからないが数値が流れていた。
「プラーナ過多症、だっけ」
縁が診断した結果、獣人種に時々見られる症状であることがわかった。
ちなみに、病名がなかったので縁が命名した。
「まさか、僕のアホみたいなプラーナが原因とはね」
僕のアホみたいなプラーナ量を受け継いでしまった狼人族のラルスは、肉体の魔力への適正の低さから、自分のプラーナが自分の体に負担となっている。らしい。
ユリアーナたちのプラーナ量が僕の成長チートで急激に増えても大丈夫だったのは、成人済みだからだとか。
肉体の成長が早い獣人種であれば、個人差はあれど、耐え得る肉体ができている。
まあ、例外はあったらしいけど。
その例外も情報不足で調査中だ。
というのも、このプラーナ過多症という病気は、今まで「体の弱い子が生まれたなぁ」くらいで済まされていたのだ。死に至るような重い病気ではない。ラルスのように、命に関わるほどのプラーナを持って生まれた獣人種は、過去に存在しないのではないだろうか。
「けど、僕の子供なら、なる可能性がある」
ラルスの呼吸は正常なようで、規則正しく胸が上下している。
ユリアーナ、マーヤ、ロジーネ姉さんの三人が産んだ子供たちは、検査した結果、プラーナ過多症になっていない。でも、この先はわからない。
三人が妊娠したのは、まだ神になって間もない頃だ。
リーゼは、【狼神】なって結構経っていたと思う。
この違いが、子供のプラーナ量に出てしまったのだろうか。縁が言うには、まだ症例が少ないから、はっきりしたことは言えない、とのこと。
まあ、僕としては、原因より治療できるかどうかが重要なので、治療さえできればその辺りはどうでもいいと思っている。胎児の状態で治せる病気でもないそうだし。
「アホみたいなプラーナでごめんね」
理解しているとは思えないけど、ラルスの顔が少しだけこちらに向いた気がする。その顔が苦しそうにも見えた。
無駄とわかっていてもガラス越しにパスを伸ばそうとし、手が止まる。
なにか、後ろで気配が動いた。ような気がする。
「兄さん、ダメですよ」
「縁が作った魔力を遮断するガラスがあるから、無駄だろ」
それでも、手助けしたい。
「最近は、ここに常駐してるんじゃなかった?」
結婚式も、途中で顔を出しただけだった。そのはずが、どこに行っていたんだろう。
「真弘姉さんに初夜の感想を聞きに」
「話は聞けた?」
「いえ。なにをしても起きませんでした」
「……それ、大丈夫なの?」
自分でやっといて心配になった。脳が焼き切れてないよね?
「脳の一部に損傷がありました。ちょっと治療に梃子摺りましたけど、大丈夫です」
僕の記憶を封印するのも完璧じゃなかったし、脳への干渉は神様でも難しいようだ。
「他の人は一度目を覚ましたので大丈夫だとは思いますが、夕方にでも、もう一度診察します」
目を覚ましても話は聞けなかったのか。
「強めに往復ビンタしても起きないくらいですから、疲れていたんでしょうね」
扱い。
真弘の扱いが雑。
「真弘より、あーちゃんの方が重症だと思うよ」
「朝霧姉さんは……まあ、大丈夫でしょう」
「待って、なにがあった?」
目を逸らすな。お兄ちゃんの目を見なさい。
やり過ぎた実感はある。けど、その結果は見ていないので、やり過ぎた者の義務として知っておかなければ。
「脳の損傷が少しだけ深刻だったので、一度眠らせて入院させてます」
縁は下を指差す。
一階に入院中? 口振りからすると大丈夫そうだけど、後で見舞うか。
それよりも。
「ラルスの容態は?」
「まだ時間はかかりますが、順調です」
「どういう治療なの?」
「ラルス君のプラーナを、肉体が耐えられる量になるように吸収させています」
「常にプラーナを消費している状態?」
「はい。プラーナ量が増えてしまいますが、獣人種の身体能力なら、プラーナが増える速度より、肉体の魔力耐久力が上がる方が速いです」
続けて、この病気の原因や他の治療法など、いろいろと説明された。けど、半分くらいしか理解できなかった。
「治るんだよね?」
「はい。念のため、来月末まで入院してもらいます」
頼もしい御言葉。
最近は、縁も子供の面倒を見ているらしい。
あまり人に興味を持たない縁も、子供の世話をして成長しているのだろう。
「そういえば、どうやってプラーナを吸収させてるの?」
「神聖樹の欠片を使いました」
へぇ……あれ?
「全部処分したんじゃ?」
使い道がないから、サンプルも含めて全て処分した、と聞いた。
「兄さんの性感強化対策に使えるかなぁ、と思って、一欠片だけ取っておきました」
「……イルムヒルデは知ってるの?」
縁の目が全力クロールで逸らされた。
「そっかぁ……。早めにごめんなさいしような」
「やっぱり、言わないとダメですか?」
「じゃあ、ラルスの治療になにを使ったって報告するの?」
そもそも、なんて報告したの?
「それは……上手いこと辻褄が合うような技術をでっち上げれば……」
なまじ頭が良すぎるから、こんなことを考えてしまう。
「その都合のいい技術はできたの?」
縁の目が全力バタフライで泳いでいく。
「イルムヒルデには俺から伝えておくよ」
「宜しくお願いします」
神様に深々と頭を下げられた。
「ところで、あーちゃんは、治るの?」
「善処します」
「え? そんなに重症なの?」
「まだ検査結果が出ていないので、なんとも……。でも、完治させます」
「お、おう」
身を乗り出すほど前向きなのか。
「来年は私たちの番ですからね。初夜の情報を引き出さないと」
ようし、今年の目標が決まったぞ。
来年に向けて、今年の情報が役に立たないくらい体と技術を鍛えよう。
……病床の息子の前で最低な誓いを立てるお父さんを許してね。ラルス。
下半身が軽いのに体が重い。
バルコニーから見上げると、人工太陽の眩しさに目が眩む。
人工太陽の明るさからすると、今は昼過ぎくらいかな。昨晩は、はしゃぎすぎた。
初夜への期待が強い真弘を焦らして焦らしてトロトロにして、脳が焼き切れるギリギリの性感強化を使って鳴かせて泣かせた。
真弘がダウンしたら、氷雨さんが自分の番とばかりにタックルしてきたので、身を任せてみた。
たまには攻められるのもいいけど、やっぱり攻める方が好きだ。
攻守交代してからは早かった。
前二人の醜態にビビって逃げようとした海歌をあーちゃんと一緒に捕まえて、ちょっと強引に攻めたら、男性経験豊富だからと余裕ぶってた割に、ちょっと可哀想なくらい雑魚だった。
たぶん、やりすぎた。ごめん。
トロ顔で迫るベナール村の五人は……いつもの緊縛エロフコースだ。割愛する。
お待ちかねのあーちゃんは、ここまでにヘロヘロになっていて、性感強化を使う前に優しく丁寧に攻めてあげたら、乙女がしてはいけないアへ顔になってしまった。
ここで性感強化を使ってしまうと後遺症が残ってしまうかもしれないので、使わずに抱こうとしたら、さっき捕まった腹いせなのか、ゾンビのような海歌が「やっちゃえ」と圧強めで言うので、やっちゃいました。
たぶん、今日一日はまともに動けないと思う。後遺症が残らないよう祈る。神様に? あーちゃんも神様だったような……うん、考えるのをやめよう。
とりあえず、ユリアーナに祈っておく。
遠くから子供たちのはしゃぐ声が聞こえる。
そういえば、リーゼが産んだ息子は、ラルスと名付けられたそうだ。
年末に産まれたのだけど、生まれつき体が弱いらしく、死産になりかけた所を神々の力でなんとか命を繋いでいる。
「後で様子を見に行くか」
主治医の縁が言うには、完治はするが、あと一月はかかるそうだ。
先天性の病気が数ヶ月という短期間で治るというのがよくわからないけれど、縁が言うのだから間違いはないのだろう。よくわからないけど。
*
朝昼を纏めた食事をして、病院にしている建物へ向かう。
うちでは〈治癒魔法〉を使える人が多いから、病院は必要ないんだけど、主に出産のために使われている建物だ。
と言っても、まだ御影さんとリーゼしか入院してないんだけどね。
その御影さんは母子ともに問題なく退院して、今はリーゼとその息子のラルスが入院中だ。
……の、はずなんだけど……人の気配が……あ、いた。二階の奥の方にいた。
物がなにもないエントランスを抜けて、一番近い階段で二階へ。
誰もいない病院はホラー感が強い。廊下の明かりは弱く薄暗いし、自分の足音がやけに響く。
気配を頼りに一番奥の扉をノックすると、か細い返事がする。
扉を開けて部屋に入ると、明るい部屋の中央に、ガラスの壁に囲まれた小さなベッドが一つ。
ガラスの壁のこちら側に置かれた椅子に座るリーゼが、軽い会釈をする。
顔色が悪い。ちゃんと食べて寝ているのだろうか。綺麗な黒髪も今は艶がないし、狼耳も悲し気に垂れている。頬も少し痩けていて、眠れていないのだろう、目に隈ができている。不健康そうなのに御影さん並みの大きな胸は目立つ。うっかりすると凝視してしまいそうだ。
「具合は?」
「治療は順調です」
「違う。リーゼの具合だ」
「私、ですか?」
「ラルスは、縁が大丈夫と言ったんだから大丈夫だ」
「そう、ですね」
普段のリーゼなら察してくれただろう。
「リーゼ。ラルスは俺が見ておくから、食事して少し休んできな」
「でも……」
弱々しく垂れた狼耳を撫でる。
「俺じゃ頼りないのはわかるけど……」
そう言って、滅多に使わない手鏡をポケットから出してリーゼを映す。
「今のリーゼよりは頼りになれそうだよ」
ラルスが心配で鏡を見る余裕もなかったのだろう。言われて初めて窶れた自分の姿を認識したリーゼは、少し恥ずかしそうに「少し休ませていただきます」と言って病室を出ていった。
リーゼが座っていた椅子に腰を下ろし、ガラス越しにラルスの寝顔を見る。
このガラスは魔力を遮断するらしい。僕の〈支援魔法〉を阻むためだ。
僕の無意識に垂れ流す成長チートが、病気の原因にまで影響を及ぼす可能性があるので、このガラスで防いでいる。
ベッドの上のラルスは、いろんな機械に繋がれている。そのモニター画面には、よくわからないが数値が流れていた。
「プラーナ過多症、だっけ」
縁が診断した結果、獣人種に時々見られる症状であることがわかった。
ちなみに、病名がなかったので縁が命名した。
「まさか、僕のアホみたいなプラーナが原因とはね」
僕のアホみたいなプラーナ量を受け継いでしまった狼人族のラルスは、肉体の魔力への適正の低さから、自分のプラーナが自分の体に負担となっている。らしい。
ユリアーナたちのプラーナ量が僕の成長チートで急激に増えても大丈夫だったのは、成人済みだからだとか。
肉体の成長が早い獣人種であれば、個人差はあれど、耐え得る肉体ができている。
まあ、例外はあったらしいけど。
その例外も情報不足で調査中だ。
というのも、このプラーナ過多症という病気は、今まで「体の弱い子が生まれたなぁ」くらいで済まされていたのだ。死に至るような重い病気ではない。ラルスのように、命に関わるほどのプラーナを持って生まれた獣人種は、過去に存在しないのではないだろうか。
「けど、僕の子供なら、なる可能性がある」
ラルスの呼吸は正常なようで、規則正しく胸が上下している。
ユリアーナ、マーヤ、ロジーネ姉さんの三人が産んだ子供たちは、検査した結果、プラーナ過多症になっていない。でも、この先はわからない。
三人が妊娠したのは、まだ神になって間もない頃だ。
リーゼは、【狼神】なって結構経っていたと思う。
この違いが、子供のプラーナ量に出てしまったのだろうか。縁が言うには、まだ症例が少ないから、はっきりしたことは言えない、とのこと。
まあ、僕としては、原因より治療できるかどうかが重要なので、治療さえできればその辺りはどうでもいいと思っている。胎児の状態で治せる病気でもないそうだし。
「アホみたいなプラーナでごめんね」
理解しているとは思えないけど、ラルスの顔が少しだけこちらに向いた気がする。その顔が苦しそうにも見えた。
無駄とわかっていてもガラス越しにパスを伸ばそうとし、手が止まる。
なにか、後ろで気配が動いた。ような気がする。
「兄さん、ダメですよ」
「縁が作った魔力を遮断するガラスがあるから、無駄だろ」
それでも、手助けしたい。
「最近は、ここに常駐してるんじゃなかった?」
結婚式も、途中で顔を出しただけだった。そのはずが、どこに行っていたんだろう。
「真弘姉さんに初夜の感想を聞きに」
「話は聞けた?」
「いえ。なにをしても起きませんでした」
「……それ、大丈夫なの?」
自分でやっといて心配になった。脳が焼き切れてないよね?
「脳の一部に損傷がありました。ちょっと治療に梃子摺りましたけど、大丈夫です」
僕の記憶を封印するのも完璧じゃなかったし、脳への干渉は神様でも難しいようだ。
「他の人は一度目を覚ましたので大丈夫だとは思いますが、夕方にでも、もう一度診察します」
目を覚ましても話は聞けなかったのか。
「強めに往復ビンタしても起きないくらいですから、疲れていたんでしょうね」
扱い。
真弘の扱いが雑。
「真弘より、あーちゃんの方が重症だと思うよ」
「朝霧姉さんは……まあ、大丈夫でしょう」
「待って、なにがあった?」
目を逸らすな。お兄ちゃんの目を見なさい。
やり過ぎた実感はある。けど、その結果は見ていないので、やり過ぎた者の義務として知っておかなければ。
「脳の損傷が少しだけ深刻だったので、一度眠らせて入院させてます」
縁は下を指差す。
一階に入院中? 口振りからすると大丈夫そうだけど、後で見舞うか。
それよりも。
「ラルスの容態は?」
「まだ時間はかかりますが、順調です」
「どういう治療なの?」
「ラルス君のプラーナを、肉体が耐えられる量になるように吸収させています」
「常にプラーナを消費している状態?」
「はい。プラーナ量が増えてしまいますが、獣人種の身体能力なら、プラーナが増える速度より、肉体の魔力耐久力が上がる方が速いです」
続けて、この病気の原因や他の治療法など、いろいろと説明された。けど、半分くらいしか理解できなかった。
「治るんだよね?」
「はい。念のため、来月末まで入院してもらいます」
頼もしい御言葉。
最近は、縁も子供の面倒を見ているらしい。
あまり人に興味を持たない縁も、子供の世話をして成長しているのだろう。
「そういえば、どうやってプラーナを吸収させてるの?」
「神聖樹の欠片を使いました」
へぇ……あれ?
「全部処分したんじゃ?」
使い道がないから、サンプルも含めて全て処分した、と聞いた。
「兄さんの性感強化対策に使えるかなぁ、と思って、一欠片だけ取っておきました」
「……イルムヒルデは知ってるの?」
縁の目が全力クロールで逸らされた。
「そっかぁ……。早めにごめんなさいしような」
「やっぱり、言わないとダメですか?」
「じゃあ、ラルスの治療になにを使ったって報告するの?」
そもそも、なんて報告したの?
「それは……上手いこと辻褄が合うような技術をでっち上げれば……」
なまじ頭が良すぎるから、こんなことを考えてしまう。
「その都合のいい技術はできたの?」
縁の目が全力バタフライで泳いでいく。
「イルムヒルデには俺から伝えておくよ」
「宜しくお願いします」
神様に深々と頭を下げられた。
「ところで、あーちゃんは、治るの?」
「善処します」
「え? そんなに重症なの?」
「まだ検査結果が出ていないので、なんとも……。でも、完治させます」
「お、おう」
身を乗り出すほど前向きなのか。
「来年は私たちの番ですからね。初夜の情報を引き出さないと」
ようし、今年の目標が決まったぞ。
来年に向けて、今年の情報が役に立たないくらい体と技術を鍛えよう。
……病床の息子の前で最低な誓いを立てるお父さんを許してね。ラルス。
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